木曜日に、宝生能楽堂に、「第64回 野村狂言座」を観に参りました。
この日の番組は、狂言「苞山伏」・「胸突」・「鎌腹」・「樽聟」。
狂言「苞山伏(つとやまぶし)」。
一人の山賤(やまがつ・きこりのような山中に住む人・奥津健太郎)が、仕事に出かける途中で眠くなり、弁当の包んである苞を傍らに置いて横になります。
次に修行帰りの山伏(野村又三郎)が現れ、これもやはり道端で横になってしまいます
そこへやって来たのが土地の男(野口隆行)。腹がへっていた男は山賤の弁当を盗み食いして、使った箸をなんと山伏の枕元に置いて寝たふりをします。
目を覚ました山賤は、苞がなくなっていることに気付き、傍らで寝ている男を起こして尋ねますが、男は山伏に罪をなすりつけます。
そこで山伏を起こして詰問しますが、身に覚えのない山伏は、真犯人を祈りだすことにします。
名古屋の野村一門による狂言でした。
狂言「胸突(むねつき)」。
借金をなかなか返さず、その上、取り立てに行った使いの者に悪口をあびせるは、暴力をふるうはと、勝手放題の男(野村萬斎)の態度に業をにやした何某(内藤連)は、自ら金の取り立てにおもむきます。
力づくで男を自宅に連れ帰ろうとしてもみ合ううちに、何某は男を突き飛ばしてしまいます。
男が胸の痛みを訴えて大声で叫びたてるので、何某は、利息をまけてやることにするのですが、男はなおも叫び続け、とうとつ借金をチャラにさせてしまいます。
萬斎さんのわめきがすごかったです。
狂言「鎌腹(かまばら)」。
太郎(野村万作)が山に薪をとりに行こうとしないので、怒った妻(高野和憲)は、鎌を縛り付けた棒を振りかざして太郎を追い回します。
やっと仲裁人(竹山)悠樹)が押止めますが、妻に侮辱されたと悔しがる太郎は、渡された鎌で腹を切ろうとします。
しかし妻は少しも動じず、切りたければ切れと冷たく言い放ち、さっさと引き上げてしまいます。
一人残された太郎は、腹を切ろうとしますが、いざとなるとなかなか死に切れません。
結局死ぬことをあきらめちゃいます。
高野さんの妻は、ものすごくわわしくて、適役ですね。
万作さんの太郎は、やはりさすがです。
狂言「樽聟」。
今日は最上吉日なので、舅宅では聟が挨拶にやってくるのを待っています。聟(石田幸雄)は、聟入りの時に伴も連れずに行くのは嫌だからと、伴を借りに何某(野村萬斎)の家に行きます。
ですが、あいにく皆使いに出ているのでと、何某自身が酒樽を持ち、太郎冠者のふりをしてついていきます。
聟と舅(深田博冶)が対面していると、舅宅の太郎冠者(月崎晴夫)が、聟は表にいると言い出して、何某を中に連れてきてしまいす。
舅も、立派な身なりの何某を聟だと思い込み、本物の聟を追い出してしまいます。
初見の狂言でした。
石田さんの聟さんは、聟入りの正装もしていないし、だいぶ当のたった聟さんだし、萬斎さんと配役が反対じゃないの?と思って観ていたのですが、聟取り違えという設定で納得がいきました。(笑)