追っかけ日記 NO.192-わが魂は輝く水なりー
昨日は、渋谷のシアターコクーンに、「わが魂は輝く水なり」を観にまいりま した。 客席に入っていくと、なぜかいつも煙い。ほんのりと、もやが立ち込めているよう。幕が上がると、そこに現れるのは、深い森。白いもやが立ち込め、微風が吹いている。客席は煙かったのはそのせいだと納得。そして、そこに、美しい五郎が現れ、独白が始まります。 尾上菊之助さんの演じる斉藤実盛の息子五郎。歴史上では、実盛討ち死に後、五郎、六郎兄弟は、平家の勢力下にある伊東へ逃れて、漁業に身をやつしたりしましたが、改名して、武家に戻って、亡くなっているいるようですが、この物語では、木曾義仲軍に身を投じ、そこで、不慮の死をとげ、今は、幽霊となって、父のそばについています。菊之助さんの演じる五郎は、とてもピュアな存在。物語の最初は、ナビゲーターの役も務めています。言葉の響きも美しく、そこに込められた感情がひしひしと伝わってきます。 この時代、武家でもあった実盛と五郎の親子関係は礼節の厳しい関係だったと思われますが、この物語では、とても、温かく、年齢を超えた親密な関係に思えます。それは、五郎が生きた人間ではなく、幽霊であるから、成りえた関係かもしれません。 集団の中における狂気が主題となっているようなこの物語の中で、実盛が正気でいられたのは、萬斎さんの解釈のとおり、五郎の存在、五郎の水のようなきれいな魂がそばにあったからでしょう。 ですが、実盛の「すべてが逆だ。普通は、親が先に死に、心配のあまり、子にとりつくものであろうに、この分別のある親に、死んだ息子がまとわりついている。」という言葉がやはり、悲しく響きます。 初日からちょうど1週間。役者さんたちも、役にのってこられた頃でしょうか、昨日で3回目の観劇でしたが、一番よかったように思いました。 昨日は、一番左端ではありましたけれど、2列目でしたので、より近く萬斎さんを拝見できました。