2009/11/05(木)18:28
R.D.ウィングフィールド 『フロスト気質』
このミステリーがすごい 2008年版 海外編 第2位
【このミステリがすごい】より紹介文
相変らずのオヤジギャグも冴えるフロスト警部
さて、ファンのみなさん、お待たせしました。フロスト警部シリーズの最新作『フロスト気質(かたぎ)』である。最新作といっても、イギリス本国の刊行年は十年以上も前だし、前回の『夜のフロスト』が翻訳されたのも7年前のこと。その間に作者のR・Dウィングフィールドもこの世を去ってしまい(合掌)、寂しいことにこのシリーズも本作を含めて残すところあと三作になってしまった。
シリーズ4作目となる今回は、ハロウィーンの晩の出来事で幕が上がる。十五歳の少女が誘拐され、ガイフォークスの人形を抱えたまま少年が行方不明になったという捜索願も出されている。さらには、幼児ばかりを狙った刺傷事件も立て続けに起こっていた。そんな中、警邏勤務は始めてという新米警官が道端のゴミの中に少年の死体を見つけたから、大変。田舎町デントンの警察署はてんやわんやの事態となる。
そこにふらりと現われたのが、われらがジャック・フロスト警部。実は有給休暇のさなかなのだが、上司のタバコを失敬しようと署に立ち寄ったのが運の尽きで、たちまち殺人事件の陣頭指揮を押し付けられてしまう。しかし、いくつもの事件が並行し、応援として近隣署から呼ばれたかつての同僚キャシディ警部代行も、過去のことを根に持って、フロストにとげとげしい態度をとる始末。例によって、フロストは不眠不休の捜査に追い込まれていく。
齢を重ねたせいか、多少人柄に丸みが出てきたような気もしないではないが、トレードマークの下品なおやじギャグは健在。
しかし冴え渡るのはギャグばかりではない。微妙に接点のあるいくつもの事件を同時進行で解決に導くベテラン刑事の手腕を、ここぞと見せ付ける、上下巻の長さを全く感じさせないが、どりわけなかなか正体を見せぬ悪辣な犯人と息詰まる一騎打ちを繰り広げる緊張感たっぷりのクライマックスは圧巻の一言。
・さすがの名物警部もKO寸前!?続きを読む
【感想】
今年も、もう、あと二ヶ月。
またまた『このミステリがすごい』の刊行が近くなってきてます。
2008年度分では、がんばって上位5位まで海外編ランキング作品を読めました。
第1位に輝いた『チャイルド44』は、ロシアを舞台としたシリアルキラー VS KGBの青年将校、
という、使い古されたネタを見事に輝かせた話題作でした。
第2位の本書、こちらはいぶし銀の輝きで、根強いファンが多くいらっしゃるということでしょうね。
このたび初めてフロストシリーズをしった自分なども、とても面白く読めました。
著者が亡くなられて、フロストシリーズもあと翻訳待ちが2作ということですね。
待ち遠しくも、まだ楽しみを伸ばしたいという、複雑な心境で待つ人も多いことでしょう。
著者はひねくれたユーモアの持っていらしたとか。ほんとにフロストシリーズではそれが現われている。
キャシディの誤解が解ける?あたりなど、胸がすっとしますが、。
でも、フロストの良さを署内の大部分の人は認めているようで、それがうれしいです。
やがては天敵マレット署長も気付くのかな?
世の中そううまくは、ならないんでしょうケド。。
ここデントン署は、フロスト警部がいなかったら、成り立たないんじゃないですかねぇ。
相変らずいろんな事件が錯綜する中、注目せざるを得なかったのは、子供を亡くしたお父さんです。『シャッター・アイランド』と重なる部分がありました。どちらも読んだ方には、お分かりでしょう。
第一弾『フロスト日和』
第二弾『クリスマスのフロスト』
第三弾『夜のフロスト』
第四弾『フロスト気質』
短編集『夜明けのフロスト』(『ジャーロ』収録作品のなかから7編を厳選した傑作クリスマス・アンソロジー)