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テーマ:本のある暮らし(3315)
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LAのダウンタウンにあるケーブルカー、“エンジェルズ・フライト”の頂上駅で惨殺死体が発見された。被害者の一人は、辣腕で知られる黒人の人権派弁護士ハワード・エライアス。市警察の長年の宿敵ともいえる弁護士の死に、マスコミは警官の犯行を疑う。殺人課のボッシュは、部下を率いて事件の捜査にあたるが…。緻密なプロットと圧倒的な筆力で現代アメリカの闇を描き出す、警察小説の最高峰“ハリー・ボッシュ”シリーズ第6弾、ついに待望の文庫化。単行本『堕天使は地獄へ飛ぶ』改題。 ハリー・ボッシュシリーズ第6弾 猛烈な緊迫感の中期代表作 このミステリーがすごい 海外編 2002年版 第30位 ハリー・ボッシュが、これまでの作品で敵対してきた組織や、因縁深い人物がいろいろ登場し、勢ぞろいの感があり、豪華です。それぞれの思惑が錯綜する中、ボッシュが真相に辿りつく様子が、冴え渡ってます。 まず、あのロス市警察内務監査課(IAD)のジョン・チャステインが因縁深く登場してます。IADとは警察を取り締まる警察。ボッシュはこれまで二度監査の取り調べを受け免れてきました。チャスティンとは『トランク・ミュージック』で絡んでます。同作品登場のFBI捜査官のロイ・リンデルは、最初は敵対しましたが、ラストの方でお互い認め合い犯人逮捕で協力し合った仲。 IADやFBIと合同捜査をしていかなくてはならなくなり、めんどくさ~い展開に、ボッシュじゃなくてもイライラしそう。特に、IAD、それもあのチャステイン。それでも、ボッシュは協力しようぜ、的な態度で臨みますが、、。途中で何度もチャステインに疑わしい目を向けざるを得ません。 やっぱり仲良くなんて出来そうもないわね。 その他にも、ボッシュがハリウッド署に左遷される以前、エリート部門ロス市警本部強盗殺人課(RHD)時代のパートナー、フランシス・シーアンが登場してます。 更に、せっかく前作『トランク・ミュージック』で幸せムードだったボッシュですが、妻のエレノアは不安定で、ボッシュを苦しめてます。エレノアを妻としてゲットした時の喜びはどこへやら。エレノアは、知っているのです。自分もボッシュも中毒を求めるタイプだと。ボッシュには捜査がそれであり、自分もかつてそれを持っていたけど失った。ボッシュが差し出すものでは幸せになれないのです。世の中うまくいかないものです。せっかくピッタリな二人のようなのに。 殺害されたハワード・エライアスは、 「ステーシー・キンケイド殺害事件」という近々始まる注目の裁判を控えていました。依頼人のマイクル・ハリスは、この裁判でロス市警本部強盗殺人課(RHD)の15人の課員を訴えていました。ハリスは、住居侵入と暴行の罪で有罪判決を受けた前歴のある洗車場の従業員。著名な資産家一家の12歳の少女を誘拐し死に至らしめたという証拠をRHDのメンバーが捏造したとして、1千万ドルの損害賠償金を求めていました。ハリスの主張は、刑事たちが失踪した少女の行方と自白の強要のためにハリスを拉致拘束し3日間拷問したというもの。訴訟では、刑事たちはハリスが犯罪の関与を認めないことにいらだち、ハリスの頭にビニール袋をかぶせ、窒息させようとし、ひとりの刑事に鉛筆を耳に突っ込まれ鼓膜を破られたとも主張していました。事件は、少女が誘拐された寝室で見つかったハリスの指紋と、死体遺棄現場がハリスの住居に近かったという証拠のみに基づいて、裁判にかけられるというもの。指紋は少女の教科書の一冊についているものだけでこれは刑事の捏造であり、死体遺棄現場は偶然であるというのがハリス側の弁護士の弁論でした。 しかも、ハリスの暴行に加わった警察官に、ボッシュのかつてのパートナー、シーアンが関わっている。 殺害された少女は、代々ロサンジェルスという町を作り貢献してきた、市民に人気のキンケイド一家の子供であることで注目を集めた事件でしたが、ロドニー・キング殴打事件以来警察の信頼は揺らいでおり、ハリスは黒人、キンケイド家も警察も白人であるという図式により、刑事裁判では陪審員はハリスを無罪放免としていました。 ハワード・エライアスは、続く民事裁判での弁護士として依頼を受け、準備中でした。 ハワード・エライアス殺害事件の捜査は、本来ならロス市警本部殺人課が担当するべき事件でしたが、上記のような事情で、訴えられている当の組織が事件の捜査をするには利害の相違がありすぎるため、ハリウッド署のボッシュのチームが捜査を担当する事になり、アーヴィン・アーヴィングに直々呼び出しを受けたのでした。 捜査は、エライアスの身辺調査から始まりますが、エライアスの手帳や留守番電話が消えたり、免許証や腕時計が奪われていたり、という状況には、すべて警察関係者の思惑がからんでおり、それらをひとつひとつボッシュの勘が冴え渡り、解きほぐしていくのが、必見です。 また、ボッシュは結局、エライアスの殺人犯人を捜査しながら、 「ステーシー・キンケイド殺害事件」にもどっぷりはまり、捜査していくようになります。いつものようにあれよあれよと、どれもこれも事件は解決。 警察の隠蔽体質や、シーアンとの件はボッシュの苦しい立場や悲哀こもごも。刑事としての正義も感銘をうけつつ、驚愕のラストを向かえます。 愛情関係の崩壊、市警上層部や内務察監査課IADとの確執が増し、暴動で炎上するロサンジェルスの街中で、あらたな原罪をまたしてもボッシュは背負ってしまいます。 <刑事 ハリー・ボッシュ> シリーズ 『ナイトホークス』 『ブラック・アイス』 『ブラック・ハート 』 『ラスト・コヨーテ 』 『トランク・ミュージック 』 『エンジェルズ・フライト』 『夜より暗き闇』 『シティ・オブ・ボーンズ 』 『暗く聖なる夜 』 『天使と罪の街 』 『終決者たち 』 『エコー・パーク』 『死角 オーバールック 』 “Nine Dragons” “The Reversal” ノンシリーズ 『ザ・ポエット』 『わが心臓の痛み』 『バッドラック・ムーン』 『チェイシング・リリー 』 『リンカーン弁護士』 マイクル・コナリーのランクイン履歴 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年05月25日 00時23分29秒
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