2007/01/18(木)18:06
百鬼夜行-陰(京極夏彦)/百鬼解読(多田克己)-その1-
何回かに分けて,京極夏彦の「百鬼夜行-陰」と多田克己の「百鬼解読」に出てくる妖怪を扱ってみたいと思う。
京極夏彦の「百鬼夜行(陰)」は「姑獲鳥の夏」を始めとする彼の長編のサイドストーリー(番外編なのか長編の一部なのか手元に長編がないのが不明-誰かがコメントで教えてください-)。
全10夜(話)の各掌編の前に「画図百鬼夜行シリーズ」をかいた江戸時代の「妖怪博物絵師」鳥山石燕の絵と文がある。
また,小さい方形の扉絵は京極夏彦自身によるものである。
多田克巳の「百鬼解読」は,日々のあぶく(kiyu25さん)の日記を見て読みたくなった本。
妖怪の誕生,鳥山石燕についての記述から始まり,42の妖怪についての解説文があり,各解説の後ろに京極夏彦描く妖怪のイラストがある。毛筆と思われる妖怪名の横にある印を「御祓済」と読むことは,kiyu25さんの日記を読んで気づいた。
京極・多田(多々良先生のモデルといわれる)が友人で,講談社ノベルス(なんでズじゃない?!)からの発行も2か月しか違わないとあって,両者は密接にリンクしている。
ということで,今回は,両方の本をからめながら書いてみることにする。
「百鬼夜行」は「妖怪小説」ということで,謎解きの要素はあまりないが,今回は結論の部分を含めて書いてしまうつもりなので,ネタバレが嫌な場合は,読むのをここで中止してください。
「妖怪尽くし」というサイトでたくさんのイラストを見つけました。リンクフリーなので,それぞれの妖怪のイラストへのリンクを貼っておきましたのでそちらもお楽しみください。
小袖(こそで)の手石燕の画はきれいな着物から,細い手がにょっと伸びている様が不気味。碁盤といい鶴亀の燭台といい,ぜいたくな品がそばに置いてあることがわびしさ,むなしさを誘う。
「解読」によると,死んだ遊女の無念が小袖から手を出させたという。
「夜行」扉絵は箪笥から2つの手が出ている。左手が人を招くようにしているのに対し,右手が引きだしをそっとつかんでいるのが,妖怪の内気さを表しているようにも思える。
昭和27年8月31日夕暮れ,杉浦隆夫が大声を上げて家を飛び出すまでの話である。
子どもの手におびえた元教師の杉浦は,妻に去られ,隣家を覗くようになる。首をしめられるところを見られた隣家の娘柚木加奈子は,杉浦失踪の半月前駅のホームから突き落とされて死んだらしい。
立ち直りかけたと思っていた所に,加奈子の死を知らされ,決定的な打撃を受けてしまうところに怖さがあった。
京極イラストの小袖の手は,華やかな着物を着て両手を伸ばし,まるで踊っているかのようである。
⇒妖怪尽くしの「小袖の手」(イラスト)
⇒06/09/01の日記(「魍魎の匣」のサイドストーリーとして),06/09/01の日記(「絡新婦の理」のサイドストーリーとして)
文車妖妃(ふぐるまようび)石燕の絵には長い手紙をつかむ妖妃と,手紙そのものが化けた小妖怪がかかれている。
「解読」によると,妖妃は情熱で胸をいっぱいに膨らませ,胸部が玉手箱となってついにはちきれたとのこと。
しかし,この妖妃は実に強そうである。したたかなおばさんというイメージをもつのは自分だけだろうか?
「夜行」扉絵は髪を振り乱しかけてはいるが,きりっとした妖。手紙に速達印を押してあるのが笑えるが,京極本人の怯えを表しているのだろうか?
昭和25年の晩秋,10センチ程の小さな女(実在しない)から一通の恋文をもらった私(久遠寺涼子,25)が弾けて消えるまでの話である。
小さい時から病弱で外に出ることのなかった私は,双子のようによく似た妹(梗子)を好きで,かつ恨み,憧れるが妹の結婚そして医師見習内藤の言動を機に(あるいはもっと前,少女が女性になったときに)バランスが崩れる。
「私」によってかかれた形で,事実関係が読めない部分がもどかしくも不気味である。
京極イラストの妖妃は口元を開け,横目使いでどこか愛嬌がある。手紙を読むよりも,とっとと男のもとに行きたいという雰囲気さえ感じられる。石燕画が中国の妃を思わせるとすれば,こちらはちょっと下品な日本の姫を思わせる。
⇒妖怪尽くしの「文車妖妃」(イラスト)
⇒06/08/29の日記(「姑獲鳥の夏」サイドストーリーとして)
なお,全体のもととなる鳥山石燕の「画図百鬼夜行全画集」について,のぽねこミステリ館(のぽねこさん)が記事を書いていらっしゃるので,ぜひ,そちらもごらんください。
その2,その3,その4に続きます。
時代,場所,登場人物などをフリーページの京極夏彦メモ(百鬼夜行-陰)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。
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京極夏彦 多田克己
画図百鬼夜行(やこう)全画集
次の日記も読ませていただきました。
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