2006/06/07(水)19:10
探偵ガリレオ(東野圭吾)
ガリレオシリーズの1作目である東野圭吾の「探偵ガリレオ」を読んだ。
「容疑者xの献身」を読んで,
湯川助教授がどんなキャラクターであるのか?
理系ミステリといわれているらしいがどのような内容なのか?
の2点に興味がわいたのだが,湯川学助教授は,「30代半ば,学内ではそこそこの評価をされていて,バドミントンが得意で,子供がニガテ」といったところか。
「学者」のイメージよりは腰が軽く,草薙俊平刑事の思惑を超えてあちこちと動き回ってしまうことは,すでにこの頃から始まっていたようだ。
5作からなる短編集なのだが,「理系ミステリ」というより,「工学ミステリ」という感じがした。
乱暴ないい方をすると,高田崇史のQEDシリーズや北森鴻の蓮丈那智シリーズのように,ミステリに「民俗学」の知識をかぶせるかわりに,「工業技術」の知識をかぶせた感じといえる。
「米村でんじろうのパーフォーマンスつきミステリ」とでもいったところか(笑)
犯行やその他の謎に使われる「道具」になじみがないので,その部分は「考えてもわからん!!」ということになるのだが,「どうせ何かで解決されるだろう!」という感じでその部分を「パス」してしまうと,「残る意外性はどこにあるか?」を探す読み方ができ,その意味では読みやすいミステリでもあった。
以下はミステリの「理系的」部分のメモ。
燃える
ガソリンが入ったポリタンクを離れた場所からどのようにして燃やすか。→パソコンを介した電話のプッシュ音による遠隔操作で高出力炭酸ガスレーザー光線で発火させるが,その前にヘリウム・ネオン・レーザーで位置調整。
おまけは,電子レンジと電球によるプラズマ発光。
転写(うつ)る
アルミニウム製の亡霊マスク→アルミの金属片がカミナリによる電流の衝撃波で死体の顔に押しつけられた。
おまけは,段ボール箱の仕掛けによる蚊取り線香の煙のドーナツ。
壊死(くさ)る
浴槽での心臓麻痺の死体の胸に壊死部分→超音波加工機により,心臓の神経を麻痺させた。
おまけは,超伝導体のピン止め効果(磁力で空間に固定)。
爆(は)ぜる
黄色い火柱が立って,ビーチマット上の女性が爆死,黄色い火の玉が海面を滑りながら広がる→ナトリウムと水の反応による爆発。
離脱(ぬけ)る
見えないはずの位置にある自動車を病気の子供が「幽体離脱」で目撃→熱い空気と冷たい窒素の層による光の曲線的屈折。蜃気楼と同じ原理。
おまけは,ネオジウム磁石によるシャボン玉のひきつけ。
「容疑者xの献身」(日記は→こちらから)は,シリーズの番外編といったところか?
キャラクターを借りてはいるが,本作と直接つながっている感じはしなかった。
少なくとも,「工学ミステリ」ではなかったしなあ!
というのは,知識として「ガリレオ探偵」に頼る部分がほとんどなかったからである。「天才ガリレオ」の知恵は借りていたが,それは,ほかの「名探偵」でもよかった。
とまあ,こんなことを書くのは,「X」がたまたま直木賞受賞作になって脚光を浴びてしまったからかもしれない。
何もなければ,素直に「ガリレオシリーズに新境地を開いた」などと絶賛していた可能性もあり,なかなか複雑な心境ではある(笑)
シリーズ次作の「予知夢」も読んでみよう。
東野圭吾の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (東野圭吾)からごらんください。
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