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あれこれ備忘録 ホスピス医のこころを支えるもの

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粗忽のたかびー

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2023.01.16
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カテゴリ:緩和ケア

在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった 痛くない、後悔しない最期【電子書籍】

昨夜8時頃、とある訪問看護ステーションから電話が鳴った。
直腸がんで直腸切除術+人工肛門が造設された80代男性の家族から、突如、強い痛みを訴えっている、と呼び出しがあった。訪問してみると息も絶え絶え、酸素飽和度も上がらない、頓服のロキソニンをすすめたが痛すぎて飲めなさそう、どうしたらいいですか?

すぐさま訪問した。妻と息子夫婦があちらこちらをさすっていた。
これまでにない強い痛みを訴えていて、頻呼吸になり、身の置き所のない感じで、手が宙を彷徨っている。

こういった場合は何らかの血栓症であることが多い。いのちの危険性が迫っていることは確かだ。
まず家族にそのように説明。この時のために処方しておいたオプソというレスキュー用の麻薬を少しずつ飲んで貰った。10の痛みは5に和らいだ。

腹部を診察してみると、がん性腹膜炎でキンキンに張っている。どこかに血栓があり壊死を来し始めているか、腫瘍から出血している可能性が高い。
そうなればこの夜のあいだにお別れになるだろう。また、強い痛みが来るはず。

入院するもよし、このまま家で過ごすもよし、モルヒネの持続注射を開始すれば、どちらででも過ごせますよ、と話したところ、
「親父は家で死にたいと言っていたが、ほんまにこの痛みはとれますか、家で過ごせますか?」

急いで病院に行き、モルヒネとセレネースのカクテル液を作り、PCAポンブのカセットに充填し、もう一度患者さん宅に戻り、持続皮下注射を開始した。
開始して30分、開始時と15分後にドーズ(1時間量の早送り)をして、痛みは2低度まで改善したと話し、のどが渇いたとお茶を少し口にして、うつらうつらし始めた。

息子「モルヒネは凄いですねえ。こんなに眠らせることが出きるんですね。」
私「モルヒネに眠らせる作用はありません。僕らでも痛みを抱えたままは寝られない。それと一緒で、痛みがなくなったから眠れているんです。」
息子「これはもう中毒状態ですか?」
私「覚醒剤とは違うし、適切な量を投与している限りは依存性は起きない。」

朝までにお別れになるかもしれないが、痛みを訴えれば何度でもドーズしてよいし、困ったことがあればまたいつでも往診する、と話して辞去した。

帰宅した時には日が変わっていた。

朝までにコールはなかったので、昼に家族に電話してみた。
息子はすでに仕事に行ったらしく、お嫁さんが
「ときどき痛がるがドーズするとまたスヤスヤと寝る。時折、お茶と叫びますけど。このまま家でみたいと思います。私は先生からモルヒネについて詳しく聞いていたので大丈夫でしたが、夫には伝えきれていなかったのでパニックになっていたみたいです。先生から貰った説明書を見せたら納得していました。」

あとは穏やかに人生を全うできるよう祈りつつ、サポートするだけである。





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Last updated  2023.01.16 13:19:10
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