健夫、玲子 部屋に入ってくる
玲子 あら、今日は誰がご飯作ったの?
健夫 俺と琴美で作ったんだ。
玲子 珍しいわね。
琴美 さ、食べよ!
健三 ああ、食べよう。腹減った。
健夫 さ、座って。
玲子 ええ。
全員 テーブルにつく
健夫 じゃあ、いただきます。
3人 いただきます!
全員 食事を始める が、全員手が止まる
健夫 うん・・・。
琴美 まあ・・・。
健三 いや・・・。
玲子 まずいわね。
健夫、琴美 うなだれる
健三 ま、まあ食えるさ、食える。
玲子 いえ、まずいわね。
健夫 ・・・そうだな、まずい。
玲子 私が、作りますよ。
琴美 大丈夫?お母さん。
玲子 何?大丈夫って?
琴美 あ・・それは・・・。
玲子 じゃあ、もうちょっと待っててくださいね。
玲子 立ち上がり台所へ向かう
琴美 それを見て
琴美 大丈夫なの?
健夫 まあ、大丈夫だろ。
琴美 本当?
健夫 昨日まで全く心配してなかったのに、今日になって急に心配し始めるってのもおかしいだろ?
琴美 まあ、それはそうなんだけど・・・。
心配そうに台所をみつめる3人
琴美 で、どうするか決めたの?
健夫 ・・・まあ、会社は辞める方向になるだろうな。
琴美 お父さんが、看れるの?
健夫 当たり前だろ?でもまあ急に辞めますって言って辞められるモンでもないから・・・。しばらくは大丈夫だと思うけど、とりあえず一人にならないように親父が看てくれれば・・・と思うんだけど。
健三 俺が?
健夫 そのくらい出来るだろ?
健三 まあ・・・。
琴美 私は?
健夫 お前は、学校があるじゃないか。
琴美 大丈夫だよ、毎日じゃないし。
健夫 じゃあ、家事でも分担するか・・・って言っても何が出来るんだ?
琴美 それは・・・。
健夫 それは、俺もか・・・。
琴美 とりあえず、二人で料理の勉強だね。
健夫 ああ。いい花嫁修業だな。
琴美 うるさい。
健夫 あ、結婚するなら婿とれよ。一人娘なんだから。
琴美 結婚なんてまだまだ先だよ。
健夫 ま、それならいいが。
健三 で、俺は・・・。
健夫 親父はいいよ。ちょっと今までより気を遣ってくれるくらいで。
健三 でも、それじゃあ・・・。
健夫 だったら・・・。
健三 ああ。
健夫 呆けるなよ。
健三 え?
健夫 絶対に。俺達は親父の世話までは出来ないからな。
琴美 そうだね、出来ない。
健三 そんな・・・。それは自分ではどうすることも・・・。
健夫 気合いだ。
琴美 気合いだ。
健三 二人して・・・。
玲子 冷蔵庫を開けてビンを取り出して見ている
玲子 ねえ!これって何?
健夫 ん?
健夫 台所へ向かいビンを手に取る
健夫 うわ、これ賞味期限過ぎてるじゃねえか!
琴美 あ、それ!
健夫 何だよ。
健三 そいつは!
健夫 だから何だって!
二人 へそくり!
玲子 あら、頭いいわね。こんなトコにへそくり隠しておくなんて。