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テーマ:ジーンズを選ぶ(574)
カテゴリ:思考遊戯
それほどジーンズ好き、というほどでもないが長年愛用しているジーンズの一本や二本はある。
ジーンズは履けば履くほど自分独自の味というものがでる。 裾のほつれ、色落ち、膝の破れ。 その小汚さとの境目の判別が非常に難しい段階、それこそがジーンズが最も美しい瞬間であり、そのたたずまいはなんでも鑑定団で「いい仕事してますね~」と言われる古民具さながらである。 マグロ等の大型魚はしめてすぐではなく数日経った時が一番美味いという。腐敗する速度よりたんぱく質が分解されて旨み成分に変わる速度のほうが早いからだそうだ。 何が言いたいのかというとジーンズもマグロと同じで「ダメになりかけ」の状態が実は最高の状態なのである。 所有している中で一番のお気に入りジーンズも長らく熟成を重ねてきた。 そして最高の味を発揮した瞬間、まさにピークに達した時。 それは同時に小汚くなり始める瞬間でもあった。 控えめ破れはじめていた両膝の裂け目がある日一気に10cmにも達してしまったのだ。 この状態をまだ味とする人もいるだろうが、僕にとってはもはやそれはみっともない穴でしかない。 では、このジーンズは最早寿命を終えたのか。廃棄されるべき運命なのか。 否。 確かに一度死んだこのジーンズだが、さらに大きな命を得て復活する術がある。 リペアだ。 言ってしまえばなんてこともないのだが、要するに穴を補修するのである。 それではということで自宅近くにある服のリフォーム店に。 「さあ、リペアしてまた履き込んでやるぞ」 だが、待っていたのは死の宣告にも等しい言葉だった。 「一箇所2500円で、二箇所あるから5000円でしょ。それとこれダブルステッチね。一度ほどかないと補修できないのよ。その手間賃で1500円いただきます。」 6500円・・・・。 確かに長く履きこんでいきたいと思っていたジーンズではある。 しかし6500円である。 このジーンズの元値には及ばないが、普通のジーンズなら一本くらい買えそうだ。 かすかな眩暈を感じながら 「ちょっと考えます・・・。」 と言うのが精一杯だった。 「もう、このジーンズともお別れなのか・・・。」 失意のうちに帰宅し、ジーンズをじっと眺める。 色んな思い出があったなあ。 そう、あの、えーっと、えーっと、あれだよ、そのー やっぱないわ いや、まあないとしてもだ。ないとしても三年近く「育てて」きたんだ。 やっぱりこれからも履いていきたい。どうにかならないか。 いや、6500円払えよ俺。 とセルフツッコミをしつつもある妙案が浮かんだ。 「別の店がないだろうか」 この程度で妙案だと思うことが人生を楽しく生きる裏技だ。 脱兎の如くPCに駆け寄り検索する。 仙台のお店、一箇所2000円。あまり変わらない。 柏のお店、一箇所1000円。うーん。 郵送ではイマイチ心配だ。細かい打ち合わせを店側と出来ない。 手違いで機動戦士ガンダムのアップリケをつけられる、なんて可能性もゼロではない。 そこまでいかずとも、イメージと違った補修をされてはそれこそ完全にジーンズが死んでしまう。 どこかないものか・・・。 そこでさらに妙案が。 「検索ワードに『大阪』を加えてみてはどうだろうか。」 この程度で妙(以下略 すると、あるブログにたどり着いた。 そこで紹介されていたお店。その名も「正ちゃん堂」。 名前を見た瞬間、ついブラウザのバックボタンで検索画面に戻りそうになった。 正ちゃん堂て。 しかし紹介文を読んでみると、膝の破れの補修がなんと400円だそうだ。 しかも所在地がアメリカ村。多くの古着店がひしめく街である。 この場所に出店していることから、ジーンズの愛好者の支持を得ている店であること、つまり技術が確かであることが推測できる。 果たして発注してみると、客がひっきりなしに訪れているにもかかわらず仕上がりは40分という素早さ。料金は両膝三箇所で1000円。出来具合は最高。まさに大満足であった。 ちなみに正ちゃん堂の看板にはムツゴロウのようなおっさんが描かれており、店に入るとそれとすぐに分かる店主が居た。 あれが「正ちゃん」なのだろう。 正ちゃんに感謝しつつ店を後にする僕であった。 追記 正ちゃん堂は三角公園の甲賀流たこやきの左隣のビルの三階にあります。 あと、店内にハードゲイで最近ブレイクしつつあるレイザーラモン住谷のサイン色紙がありました。 大阪でジーンズをリペアするならぜひとも正ちゃん堂へ。間違ってもマジックミシンへは行かないように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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