Synchronicity

2006/06/04(日)17:01

痛みのない治療

今日の報告!(49)

こだわって、大変申し訳ないのだけれど…。 抜歯時やう歯治療時に痛みがないということの驚きは大きかったです。 それなのに、骨髄検査や髄液検査、はたまた点滴や血液検査、予防接種、 更にはインフルエンザなどの迅速検査系、 小児科で行うほとんど全ての検査には痛みを伴います。 「無痛治療」で検索をかけると、ほとんど歯科関連でしかヒットしません。 理解不足ですが、歯科麻酔と医科麻酔の分野に大きな違いがあることから 歯科麻酔における無痛治療の進歩は、医科の分野には入ってきていないのかもしれません。 歯科麻酔の無痛治療の進歩として、注射針を最小限細くすることにはじまり、 最近では針を使用しない麻酔の方法(機械で圧力をかけて表面に麻酔するようです。)などにより、最初に針を刺す痛みを感じなくさせておいてから、 深部への麻酔へと進んでいくようです。 中には笑気麻酔を併用したり、静脈麻酔を併用したりするところもあるようですが、 私の体験からすると、よっぽど痛みに敏感でなければ、そこまでは必要ないのかもしれません。 なぜ、こんなにこだわるのか…というと、 小児がんの治療時に必ずしないといけない骨髄検査や髄液検査(及び髄腔内への薬剤投与)が 子どもたちの心へ及ぼす影響を考えていく必要があると、昨今の小児血液医は考えています。 そこで、ペンレステープという表面麻酔の方法や、以前には使用しなかった静脈麻酔の使用により、痛みの軽減をはかっています。 また、薬剤の投与とは別に、前もって子どもたちが理解できる言葉で、検査の必要性を説明したり、検査中に気を紛らわせるような方法を用いることなども、 一部ではありますが、取り入られるようになっています。 私自身も、以前に受け持った患者さんで、この心理面に働きかけることで、 痛みに対する恐怖心を軽減できたのでは…と感じたことがあります。 それは、診断時(はじめての骨髄検査)を行ったのが私だった小4の男の子の話。 そのときは予想に反して、とても賢く痛みをがまんし、おとなしく検査を受けることができました。 ところが、診断がつき大学病院へ送って、本格的な治療がはじまったのですが、 (詳細にはわかりませんが)とても検査時に暴れたりして、大変な子になってしまった、という報告がありました。 診断時の検査を受けたときが印象的でもあったので、ちょっとその変化に驚きました。 そうこうして退院し、外来治療へと切り替わったときに、その男の子と再会しました。 種々の理由により私はその患者さんの検査を行うことはできませんでしたが、 本人もお母さんも私にしてほしいという要望をだしました。(真意は不明です。) そこで、私が検査をすることはできないけれど、横についていることはできる…とお話しして納得していただきました。 検査の時には彼の背後にいましたが、私の後輩が検査を行い、私は言葉で彼を励ましたり、 気を紛らわせたりしていて、大きな声で泣きましたが、暴れることはありませんでした。 後で聞いた話ですが、彼はすっかり私に検査してもらったと思いこんでいたみたいです。 その後、もう一度彼の検査に立ち会うことがあり、そのときにも「私にしてほしい」という要望がありましたが、再度お話ししました。そのときには、私は彼を動かないように押さえる役でした。 ところが、今回は押さえる必要は全くありませんでした。 彼の中で、何がどう変わったのか、私にはきちんと説明することができませんが、 安心感というものを与えることができたこと、それに呼応して恐怖心が減少したこと、 そして泣かずに検査を受けられたことを誉めたことで、彼の中にも「自信」が芽生えたのではないか…と思います。 この体験から、痛みを軽減する努力を医療者は模索する必要があるのだと思っています。 歯科の技術が歯科でとどまっているのには、何かしら壁があるのだと思います。 例えば特別な機械を必要とするとか、医療保険に範囲外であるとか、そんなことでしょう。 骨髄検査の痛みの軽減に積極的になるには、いろんなハードルが高そうです。 けれど、痛みはがまんするものだ…という考え方からの脱却は必要なのだと思います。 医療は進歩して、病気は治るようになってきました。 以前はなおすことに重点がおかれましたが、今後は治療中も治療後も含めて、 負担の少ない医療を模索する必要があるのだと、考えるドクターが増えてきました。 ところが、痛みに関しては、他覚的な評価方法がまだまだ発展していません。 このため、医療経済面で考えるレベルにまで達していないように感じます。 骨髄検査って痛くないなあ…と思える時代が、早く来てほしいものです。 そしてまた、今の子どもたちにとって歯科治療って怖くないものなのか、 それを聞いてみたいものです。

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