本の森で呑んだくれ、活字の海で酔っ払い

2019/03/17(日)21:07

医学生におすすめの本(コミック編)

読書のまとめや本の紹介(8)

​​​​​​「ジャンルを問わず『医学生におすすめしたい本』を紹介してほしい」という仕事関係からの依頼あり。ということは、自分が読んで面白かっただけじゃダメで、医学生さんが読んで客観的に(でなくとも主観的にでもいいから)タメになる本であるべき、なわけとで言って大して悩んだわけでもないけど、それなりにあれこれ考えて10冊くらいをピックアップしてみました。で、イチオシの本がコミックだったので、とりあえずコミック編からスタートしてみます。 ​○「ヘルプマン!! 介護蘇生編 1 (朝日新聞出版): くさか里樹」​「どんなジジババも笑顔にします」純粋で真っすぐなというか単純すぎる性格なゆえに、制度の枠にはまらずに「スタンドプレイヤ―」という烙印をおされてはみ出してしまった介護士「百太郎」が主人公のコミックシリーズ。ちなみに「ももたろう」です、決して「うしろの百太郎(ひゃくたろう)」とは関係ありません(わかる人は年代が私と近いと推察されますが、分からない人はスルーしてください)。やっぱ百太郎は今回もいいね! 「肺炎を再発させたくなかったら口から食べさせるのは厳禁です。“胃ろう”でいいですね」 今回はこれまでのメインテーマであった認知症に加えて胃瘻がテーマ。そんなにうまくいかないだろうとも思える少し強引なストーリー展開のハッピーエンドだけど許そう!もっと嚥下に関わるリハスタッフSTや歯科医師たちの存在を書いてほしかったような気もする。​ *ちなみですが「胃瘻を作ることによって誤嚥性肺炎が予防できる」という迷信はいろいろな調査研究で証明されずむしろ否定されています。​ 「おじいちゃんはあの通り・・・何も分からないんだから・・・」というのはありがちな場面、実際に現場でも、家族ならまだしも医療介護関係者のそんな思い込みが本人はもちろん周囲まで不幸にしていると感じることがあります。何も分からないんじゃなくて、大事な部分を見失って対応を誤っていることもあるんだということがもっとご家族や医療・介護スタッフにももっと理解が広まればいいなと思っています。  コミックなのですぐ読めて分かりやすく、うちの診療所に実習に来た学生さんや地域医療研修に来た研修医に読んでもらってディスカッションの材料にしています。認知症の医療や介護についてだけでなく、胃瘻に関する医学的なエビデンスや臨床倫理的なこと、在宅NST活動などについて学んだりなどディスカッションの切り口もいろいろ考えられます。学生や研修医だからこそのいろんな意見があるだろうけど、それを聞くのも面白いし、臨床倫理的考え方や、それなりの文献なども準備すれば面白くなる題材のような気がします。(ところで自分的には何回読んでもってか読めば読むほど泣ける!んだけど研修医や学生さんたちにイマイチ感動してもらえないのは共感できる体験がないからなのだろうか?)  新たに始まった朝日新聞社シリーズ。前シリーズも含めてすべて名古屋市図書館で借りられます。シリーズの他の本も面白いので気に入ったらいろいろ読んでみてほしいと思います。新シリーズはは若干、理屈っぽいというか説教臭いような感じがしないでもないけど、前シリーズは絵が何となくグロいけど、粗削りで面白かったような気もします。 ちなみに著者の「くさかりき」をPCで変換すると「草刈り機」になるのは笑えますが、そりゃそうだろうなと納得。著者のネームバリューと草刈り機の戦いですね。しばらくは勝てそうもないけど。 医療や介護関係のコミックはいろいろあって読んでみてはいるけど案外つまらないのも多い印象あります。なかでもお勧めは・・・ ​○「健康で文化的な生活」柏木ハルコ​  「どんくさいことも一種の才能だな」と思わせる生活保護課の新米女性が主人公のコミック。TVドラマ化されたのを、ちらっとみたけどTVより断然原作のほうが面白いと思います。地域医療や訪問診療をしていると知らざるを得ないリアルな貧困の世界をコミックを通してでもいいから知ってほしいと思います。これがまた何度読んでも涙です(年取って涙腺が緩んでるんでしょうか?) 名古屋市図書館には蔵書ありませんが、個人的に1-7巻まで持ってます。読みたい人があれば貸し出しは可能です。 ​○「ペコロスの母の玉手箱」(岡野雄一)​認知症の母親にまつわる日常のエピソードを書いたとっても素晴らしいコミックの第2弾。息子のことも分からない日が多くなるほど認知症が進行母親みつえ、ハゲ頭になった息子ペコロスは、生前アル中だった父親もひっくるめて遠い過去のみつえまで丸ごと愛情満載で受け入れているのが感じられて癒されます。長崎弁でまた癒されます。 今回は、脳梗塞を併発、グループホーム入所、胃瘻造設・・・・そしていよいよ最期の時を迎えます。 グループホームから胃瘻をするかどうか相談を受けたあたりの葛藤がリアル!でした。 ○栄養士が主人公の​「ホスピめし」(野崎ふみこ)​シリーズもお勧めです。​

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