中国は日本を併合する
ショッキングなタイトルだが、読むとタイトル以上にショックを受ける。それは、1949年の中華人民共和国建国以来、一貫して国家目標を持ち、その実現のために国家戦略を持ち、そして大胆な選択集中をして進んできた中国と、経済大国化以外は何もせずに進んできた日本の違いに大きなショックを受ける。 その中国の国家目標とは、「中華帝国」の再興で、それは中国史上最大版図を有した清朝最盛期(康熙帝・雍正帝・乾隆帝)のころの再現だ。このことは、この前に読んだ「貝と羊の中国人」でも同じことが書かれていた。やはりそうなんだろう。しかし、この場合、大きな問題が発生する可能性がある。中国史上最大版図を有していたときというのは、現在のカザフスタン・キルギス・タジキスタンの一部、パミール高原、ネパール、ミャンマー(旧ビルマ)、ベトナム、ラオス、カンボジア、そして台湾、沖縄、朝鮮半島、ロシアのハバロフスク、沿海州一帯、樺太と非常に広い範囲で、すでに、その場所には独立国家の存在や、他の国家の領土の一部になっている。もし本当に清朝最盛期を目指すのなら、それらの国々との衝突が避けられないことになる。実際に中国は、建国50年以来、ある意味その目標に向かって十数回戦争を行っているという事実がある。やはり目指していると理解できるものである。 アメリカを軸に、アメリカの庇護の下(アメリカに安全保障を任せること)、”経済大国”を目指した日本と、アメリカの軍事力を見て、「侮られない国」の発想から、”核大国”を目指し、まい進した中国。その中国がどのようにして核を持ち、それが世界各国にいかにショックを与えたのかが、よく分かる。大きな影響が、核保有後、それまで台湾こと中華民国が国連に入っていたにもかかわらず、1971年に変わって中国が国連に加盟することになり、拒否権を持つ五大国に列するのだ。 1964年 ウラン235型の核実験成功 (世界では、技術力がより低いプルトニウム239型と予想していた) 1970年 人工衛星「東方紅一号」を打ち上げ、中距離弾道ミサイル完成 1971年 国連加盟 1980年 大陸間弾道ミサイル実験の実施 (アメリカ本土に届くミサイルの完成) 1981年 一基のロケットで三個の衛星打ち上げ(核弾頭の複数化を目指す) 1988年 原子力潜水艦からの弾道ミサイルの水中発射と突き進んできた。その過程で、先に核を持っていた東側の国のリーダーであったソ連から核開発についてやめるように説明を受けていたが、毛沢東は、それを跳ねのけ、旧ソ連から援助を打ち切られても、関係を絶ってでも核開発を進めたことは知らなかった。 そして、この核を持つことを進めていく中で、清朝最盛期を目指した活動も進められていく。 陸においても、海においても、中国が今でも根付く中華思想による中華帝国再興に向けての歩みが、詳細にまとめられている。読めば読むほどに、このままでは、日本は中国に海を押さえられてしまう。天然資源をはじめ様々な原料・食料を輸入に頼り、それらを加工して輸出する日本にとっては、まさにタイトルどおり併合されたに等しくなってしまう。アメリカに守ってもらうだけでなく、日本も言うべきことは言うべきであり、アメリカに守ってもらうだけではない国にならなければいけないのである。中国は日本を併合する著:平松茂雄 発行所:講談社インターナショナル2006年3月15日第1刷発行 2006年5月23日第4刷発行定価:1,600円+税