足筋肉から培養の細胞シート、心臓に張り機能回復…阪大
重い心臓病で心臓移植を待っていた患者に、足の筋肉の細胞をもとにシートを作って心臓の周囲に張り付け、機能を回復させる治療に、大阪大病院(大阪府吹田市)などのチームが成功した。 治療を受けた50歳代の男性は自力で歩けるようになり、20日に退院する予定。自分の細胞を利用した治療で移植待機患者が助かったのは世界で初めて。担当している同病院未来医療センター長の澤芳樹教授(心臓血管外科)は「心臓移植に代わる有力な選択肢になりうる」と話している。 治療は、太ももの筋肉を10グラム程度を切り出し、筋肉の細胞のもとになる「筋芽細胞」を取り出す。これを直径4センチほどのシート状に培養したうえで、多数のシートを3層ほどに重ねて弱った心臓の表面に張り付ける。心臓が大きくなってポンプの力が弱る拡張型心筋症を対象にした臨床研究として昨年7月、院内の倫理審査機関で承認された。 男性患者は2004年ごろ拡張型心筋症になり、06年1月に悪化して入院。同年2月に補助人工心臓を付けたが、症状が重く、同年8月に日本臓器移植ネットワークに登録し、心臓移植を待っていた。 治療チームは、今年3月末に男性の筋芽細胞を採取し、2か月かけて25枚のシートを培養。5月末に全身の血液を送り出す左心室を中心に張り付けた。 その後、心臓の収縮率や血液を送り出す量が急速に回復。98日後の9月5日、補助人工心臓を外せた。現在は、ほぼ正常な状態まで機能が回復し、日常生活にはほとんど支障がないという。退院後は服薬治療を続け、経過を見る予定。 澤教授は「シートが心筋に変化したわけではないが、弱った心筋の動きを助ける物質がシートから出るようだ。他の心疾患や子どもにも使えるよう研究したい」と話している。 同病院はさらに、拡張型心筋症の20歳代の男性を治療する準備を進めている。(参考=12月14日 読売新聞)