江戸こぼれ話 笑左衛門残日録

2024/04/18(木)10:30

往生際

笑左衛門 残日録(85)

  ​笑左衛門残日録  83​   ​​往生際​​  ~鬼平も 銭形平次も 金さんも    みんな散ったよ ああ江戸桜~ ~盥(たらい)から 盥へうつる ちんぷんかん~   盥で産湯に浸かり、死ぬときも盥で体を洗い清められる。   その間の人生、ちんぷんかんぷんだったとさ、 小林一茶  まるで、廃屋が風に揺られてがたがたと、 屋根が飛ばされ、壁板が朽ちていくように、 足音を立てて、己の体が病み痛んでいく、  老いることなどにいいことはなにもなく、 ただ淋しく、悲しく空しい気持ちになるだけなのだ。 励ましなどというのは、まだ蘇ることが期待できる、 若い身に言えることであって、老いたるもの身には老いたことにただ 疲れてしまってゆくのだ。  ~もういいのではないか~と、ふとそう思わされるこの日頃だ。   昨夜など、三途の河原の鬼婆がおいでおいでと手を振っている夢を見た。 死ぬ時が迫ってくるのを感じているのである。 日を追うごとに体のあちこちが不都合になってきて、 いやでも”いよいよだな”と感じるのである。 犬や猫でも死期を悟るという、 人間だとて、自分の死期ぐらいは解せなくてどうする。 産まれる時は他人任せだが、死ぬ時期、死に方は 己で選ぶのが武士としての生き様であろう、 野暮で、卑陋(ひろう)で無様な死に様を晒しては武士としての矜持にかける。 某、とっくに武士を捨てたはずなのにこのていたらくである。  死に様にもいろいろあろう、  自害 切腹、病死、急逝、焼死、飢え死、衰弱死、衰死、殪死、  暴死、垂死、惨死、殉死、徒死、浪死、 犬死、 無駄死、悶死、変死、怪死、獄死、狂死、餓死、頓死、  斬死、野垂れ死、嬉死、笑い死、恨み死、満足死、苦死(くし) 怨死、思死、慚死、縊死相対死、腹上死なんてのもある。さて、どれを選ぶべきか、自然死か安楽死か、尊厳死にするか、 糖尿など気にしている場合ではない、毒饅頭でも食らって往生するか、 最早決断の時が迫っているのである。さもなくば、己の意思もままならぬ間に死を迎え、  寺の土に埋められてしまいかねないのである。 ~ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ~  百人一首、紀友則笑左衛門​

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