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先日誕生日プレゼントにアントン君から文庫本を頂いた。
『ボッコちゃん』星新一著 これがむちゃくちゃおもしろい。 一気に読んでしまった。 あなたは星新一をご存じだろうか。 ショートショートという分野を開拓したSF作家である。 ショートショートの名の通り、50におよぶ短編作品がおさめられていて非常に読み易い。 SFというと宇宙やら未来やらを安易に思い浮かべてしまいそうになるが、その実は寓話的な超現代性の物語である。 作者の本能的ともいえる人間への底知れぬ愛情と憧憬である。 彼の複雑な技巧を持って表現されるそれは我々日本人が持つジェラシー社会やなま臭さ、攻撃性、のぞき趣味を多次元から多面的に表現したノスタルジアである。 こうして書評を書いていてもすべてが蛇足である。 この本のおもしろさを表現できず非常にもどかしいので、邪道ではあるが作品のひとつをかいつまんで紹介したい。 何割りかでもおもしろさが伝われば幸いである。 『殺し屋ですのよ』というショートショート。 男の前に「殺し屋」と名乗る女が現れる。 身構える男に対し、 「あなたを殺しに来たのではありません。依頼を受けに来たのですわ。 どうでしょう。 ライバル社の社長エヌ氏を殺してみせましょうか」 見るからにきゃしゃな目の前にいる女に殺しなどできそうもなく、不信がる男に対し、 「報酬は後でけっこうですわ。 殺し屋といっても小説や映画のような派手なことはしませんわ。 誰にも疑われることなく病死させましょう。 決してヘマはいたしませんわ」 男は怪しみながらも、手付金もいらず報酬が後払いであれば万が一ヘマをしたとしても自分に火の粉は降りかからないだろうと、依頼をする。 数日後、エヌ氏が心臓疾患で死んだというニュースをテレビで目にする。 再び、男の前に現れた女。 「見事な腕前だ。 おかげで我が社の売り上げは倍増だ。 支払いを渋ってあなたに狙われてはたまらない。 約束通り報酬を払いましょう」 報酬を受け取った女は、家へ帰ると身支度をして出かける。 着いたのは、とある病院。 信頼の厚い看護婦である彼女は医師に尋ねる。 「先生、いま帰られた方ですけど、病状はどうなんですの」 「良くない。正直なところ五ヶ月かな。 しかし、こんなことは決して本人や家族の者に言うなよ。ショックを与えることになる」 「もちろん、わかっておりますわ・・・」 彼女だって、本人や家族に告げるつもりはない。 もっとも、カルテで住所を調べ、職業を調べ、その人にうらみを持っている人や、商売がたきには・・・・。(終) おもしれー!! とにかくむっちゃおもろいから読んでみて!! アントン君ありがとー! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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