制度の運用監視が重要-「即決裁判(軽い罪対象、その場で判決)」
貴方はご存知でしたか?「即決裁判」という新しい刑事裁判の仕組みが、先月10月から始まっていて、既に、判決が出ているケースがもあるそうです。(朝日新聞、16日付け37面から) 起訴から14日以内に審理を始め、その日のうちに判決を出すという、大幅にスピードアップした裁判制度で、比較的軽い罪が対象。例えば、万引きや外国人の不法残留、初犯の薬物犯罪などに適用されるそうです。死刑や無期懲役刑はもちろん、1年以上の懲役や禁固にあたる罪の重い事件などについては対象外ということです。では、軽い罪ならすべて即決裁判になるのでしょうか?そうとは限らないようです。捜査段階で容疑者が即決裁判に同意して、公判の冒頭で「有罪」を認めることが条件になっています。起訴事実を争うような場合は、通常の裁判手続きで進めることになるとのことです。 実は、先日、不法残留の中国人被告の即決裁判があったそうです。この被告の場合、身柄拘束後、約1カ月で判決が出て、本国(中国)に送還となったそうです(拘束期間がこれまでの半分程度になったとのこと)。なお、即決裁判の場合、必ず執行猶予が付いて、実刑にはならないということです。 審理にかける時間は(審理自体が極めて簡略化されて)30分程度で、その内容は、被告に有利な事情を調べるために被告人質問が行われる程度で、あとは「その場で判決が言い渡される」ことになります。被告が控訴できるのは刑の重さについてだけで、事実誤認を理由にはできない(罪を認め、一度「即決裁判」に入ると、量刑だけの問題として処理されることになる)そうで、裁判に関与する裁判所・検察・弁護人の法曹三者にとっても、従来に比べ大幅に負担が軽くなることは確かです。 一見、いいことばかりのようですが、弁護士の中には「目の前に執行猶予という『ニンジン』をぶら下げられて、真実解明がおろそかにならないか」と心配する人もいるとのことで、当然、想定される心配材料です。一方、この制度を悪用するケースも同時に想定されます。前者は、「冤罪」のケースで、裁判で争えば無罪を勝ち取れるかもしれない微妙なケースで「即決裁判」を選んでしまうと、軽い罪とはいえ冤罪を見過ごす恐れが出てきます。後者は、繰り返えし(軽)犯罪を犯す人を作り出すことにならないかという心配です。 裁判のスピードアップが求められている時代です。 「冤罪者を作り出す恐れ」と「軽犯罪を繰り返し行う人を作る恐れ」とが同居した即決裁判制度ですが、既に、スタートしていますので、今後は司法関係者の運用の仕方を、しっかり、監視していく必要がある制度だと思われます。