『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど”

寺島しのぶ『ヴァイブレータ』

CAT-O




◇偏愛?!新企画!◇あんましのあたんない邦画劇場◇
----◇第七夜◇「あたし、あなたにさわりたい。」廣木隆一『ヴァイブレータ』
⇔脚本:荒井晴彦⇔
神代辰巳『赫い髪の女』----




『ヴァイブレータ』
<2003年度第77回キネマ旬報ベスト・テン 第3位>

「あたし、あなたにさわりたい。」

監督: 廣木隆一 (『東京ゴミ女』『不貞の季節』『理髪店主のかなしみ』)
脚本: 荒井晴彦 /原作: 赤坂真理/撮影: 鈴木一博/挿入歌:浜田真理子

出演:寺島しのぶ/大森南朋/田口トモロヲ/戸田昌宏/高柳絵理子/牧瀬里穂/他

コンビニで出会った行きずりの男女がトラックの振動(ヴァイブレータ)に身を任せ、愛を育んでいく数日間の様子を追った異色ロードムービー。
現代女性の苦悩と心の再生を描いた赤坂真理による同名小説を映画化。ヒロイン役の演技派舞台女優、寺島しのぶが繊細かつ大胆な演技を披露、全裸のラブ・シーンも話題!




3月14日、雪の夜のコンビニ。女が酒を買いに来る。早川玲、31歳。フリーのルポライターをしている彼女は、いつからか頭のなかで聞こえるようになった“声”の存在に悩まされている。いつか聞いた誰かの言葉や雑誌の文章、言えなかった自分の気持ちが“声”として彼女のなかでざわめき、そのせいで不眠、過食、食べ吐きを繰り返す玲はアルコールに依存していた。
 白ワインとジンを探す彼女の目に、コンビニに入ってきた一人の男が飛びこむ。長靴をはいたその男に反応した彼女のなかで、声がいう。「いい感じ」「あれ、食べたい」。玲の視線に気付いた男はすれ違いざま、彼女の体に触れる。それを合図にするように、コンビニを出て行く男の後を追う玲。



コンビニの外、トラックの運転席に座る男が見える。トラックに乗り込む玲に男がいう。「ようこそ」。男は岡部希寿というフリーの長距離トラック運転手だった。ぎこちなく酒を飲みながら、やがてアイドリングの振動を感じながら二人は肌を重ねる。
 夜明けになり、一度はトラックを降りた玲だが、再びトラックに戻る。「道連れにして」という玲を乗せ、トラックは東京から新潟へ向けて走り出した。
 窓の外を風景が流れるなか、二人はお互いのことを話し出す。岡部には妻と子供がいること、長い間ストーカーの女につきまとわれていること、中学もろくに出ていないこと、工務店で働いた後、ホテトルのマネージャーをしていたこと、それからトラックの運転手を始めたこと、これが二台目のトラックだということ。玲も自分の職業や、取材で会った女性から聞いた食べ吐きを自分でもするようになったこと、アルコールに依存していることを話す。言葉を重ねながら、肌を重ねながら、男との時間に身をゆだねていく玲。気がつくと、頭のなかの“声”は聞こえなくなっていた。あるのは、もう体に馴染んだエンジンのアイドリングの音だけ……。



残雪の白い景色が続く。男が無線のスイッチを入れ、他のトラッカーたちと交信を始めた。複数の声がスピーカーから聞こえてくる。玲はボイスコンバータを使って無線の声と交信しようとするが、突然、それまで聞こえなかった“声”が一気に彼女を襲う。どうしていいかわからず、玲は泣きながら「気持ち悪い。吐く」と苦しそうに訴える。岡部はうろたえ、トラックをガソリンスタンドに停める。玲は駆け出し、口に指を突っこんで吐こうとするが、どうしても吐けない。前はあんなにうまく吐けていたのに。助けようと駆け寄る岡部を拒絶しながら、「気持ち悪い、気持ち悪い」と繰り返し岡部を叩く玲。やっとの思いで嘔吐し、その場に崩れ落ちる。
 岡部は玲をラブホテルに連れて行き、風呂を用意する。優しく玲の体にお湯をかけ、湯船に入れる。「この男が優しいのは感情じゃなくて本能だよ」。また“声”が聞こえる。玲は岡部に「殴って」と頼むが、岡部は「殴れねえよ。お前のこと好きだし」という。彼の気持ちも自分の気持ちもわからず、玲はただ戸惑い混乱する。
 翌日、定食屋で昼食を食べながら、二人は本心を打ち明けあう。岡部は玲に「ずっと乗っててもいいよ」というが、玲はただ「ありがとう」とだけ答える。ふいに、岡部が玲にトラックを運転させようとする。「できないよ」といいながら、促されるまま運転席に座り、ハンドルを握る玲。岡部のいうとおりにハンドルを切り、彼女の運転でトラックが走る。玲の顔に笑顔が戻ったが、旅の終わりが近づいていることを二人は知っていた。
 トラックが東京に戻った。同じコンビニの前。トラックを降り、外から運転席の岡部を見つめる玲を置いて、トラックはまた走り出す。「彼を食べて、彼に食べられた。ただ、それだけのことだった」と思いながら、玲は自分がいいものになった気がしていた。“声”たちも、今は消えていた。 (ストーリーHPより転載)



<寺島しのぶ>

不眠と過食症の食べ吐き癖?に悩むフリー・ルポライターの三十路女を、「赤目四十八瀧心中未遂」では念願の綾を演じ2003年度キネマ旬報ベスト・テン日本映画主演女優賞・新人女優賞の2冠に輝いた。
初見の寺島しのぶの表情や身体ががあまりに普通ッぽくてちょっとビックリ。それゆえに映画のラストシーンで見せる、玲の微妙な表情の変化には思わず背筋がゾクリとしました。もう一度同じ場所に戻ってきても、もう一度一人になっても、自分は前と同じじゃない。その感覚と玲の表情は観る人まで「いいもの」にしてくれます。刺々しい心が柔らかな感情に変化していく道程には不思議な現実味があった。コンビニで始まりコンビニで終わる。すべてが振り出しに戻るラストシーンが、深い余韻を感じさせる映画でした。浜田真理子「あなたへ」の心に響くメロディが、エンドロールに流れ、とても気持ちのよい余韻を残してくれます。同日に最初と最後のシーンを撮影していたということですが、これこそ快心の演技をしたという時の女優の顔というものに見えました。

<エンディング挿入歌:作詞・作曲 浜田真理子の名曲・名唱!「あなたへ」>

何かに なりたいと あなたは言う
何かに なりたいと あなたは言う

だれでもない あなたが そのまま好きです
だれでもない あなたが そのまま好きです
だれでもない わたしから あなたへのことば

何かが 足りないと あなたは言う
何かが 足りないと あなたは言う

輝く光で そのからだを つつんでも
輝く光で そのからだを つつんでも
偽りの光は こころを照らさない

だれでもない あなたが そのまま好きです
だれでもない あなたが そのまま好きです
だれでもない わたしから あなたへのことば

♪ピアノ ひとつ.....うた ひとり.....浜田真理子へ沈む.....♪

.....そして、多分彼らはこの後会う事がないであろう。

――どのあたりに共感しましたか。
寺島「私は玲のようなキャラクターではないですが、恋愛でも仕事でも、30代は中間管理職のようなところがありますよね。若造でもないし、ベテランでもない。人間的にも仕事的にも中途半端で、いつもの倍のパワーを使わないとやっていけない。私自身がちょうどそれを感じていたところだったんです」



<大森南朋(NAO OOMORI)>

1972年、東京都生まれ。粗暴と純真をあわせもつトラック運転手をリアルに生かし抜いた大森南朋の演技力も賞賛に値するもの!この役のため髪を染め乳首にピアスを開けた。。『殺し屋1』の泣き虫な殺し屋、『OUT』の妻に殺される暴力夫、『赤目四十八瀧心中未遂』のエキセントリックな彫り師と多彩な演技を魅せます。2003年度キネマ旬報ベスト・テン日本映画助演男優賞に輝いた。

「この人が優しいのは感情じゃなくて本能だよ。感情が無くとも優しくする。柔らかい物には優しく触る。桃にそっと触るのとおなじこと。動物みたいなもんだ。本能、本能。でも桃傷んでてても気にしない奴とかさ...いい男じゃん、こいつ...」

...車を降りてラブホテルでの浴室でのシーン。泣きじゃくる玲の独白。
玲のように過去に負った傷を抱え込み、時折訳もなく感情のコントロールができなくなる壊れかけた人間と付き合うのは正直しんどいはずなのだけれど、自分一人で生きている31歳の女の内面と肉体をさらりと受け止められる”優しい男”大森を好演しました。ルポライターというある意味頭脳職業と対極する肉体を使うある意味タフな男の本能の色気を見事に体現してましたね。生身をさらすように吐く女から逃げない男の優しさは一瞬の愛?

「観ながら、あ、わたしって皮膚でできてたんだ、と久々に思い出す。ふれたい、ふれられたい、なでたい、なでられたい、という気持ち。
じゃあその皮膚のしたには何があるの?」

<<<<<⇔荒井晴彦⇔>>>>>



<<2003年度第77回キネマ旬報ベスト・テン受賞 脚本賞:荒井晴彦>>

  荒井 「『赫い髪の女』のあのアパートがトラックの運転台になった。雨のなかのアパートの一室が、雪のなかを走るトラックになったと思ったんです。ちょっと病んだ女の子がコンビニで“あれ、食べたい”と思って、男のトラックに乗って東京、新潟を往復して、“彼を食べて、彼に食べられた。それだけのことだった。たヾ、あたしは自分がいいものになった気がした”というところに惹かれました」

<RESPECT!荒井晴彦>

脚本は日本映画のキー・パーソン荒井晴彦!神代辰巳、藤田敏八、根岸吉太郎、澤井信一郎などの監督と組んで、多くの傑作を生み出してきた脚本家。原作者赤坂真理に映画化の了解をとったのも荒井晴彦。最初から自分で動かした企画。次回監督作と考えていた車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』の映画化権を直接車谷のところへ直接貰いに行った荒戸源次郎が獲得し、それを教訓として直接自分で動いたという。本作『ヴァイブレータ』で三度目の脚本賞受賞!(「Wの悲劇(’84)」「リボルバー(’88)」)
『ヴァイブレータ』は、70年代を疾走した性と官能のプログラム・ピクチュア!幾多の才能を輩出した栄光のロマンポルノへのオマージュです!
神代=荒井コンビの日活ロマンポルノの名作『赫い髪の女』をもう一度観たくなりました。



神代辰巳『赫い髪の女』(1979年)
原作:中上健次 「赫髪」/脚本:荒井晴彦/撮影:前田米造/音楽:憂歌団
出演:宮下順子、石橋蓮司、亜潮、阿藤海、三谷晃、山口美也子、江沢萌子、山谷初男他



原作は中上健次の小説『赫髪』。
雨のそぼ降る国道でダンプの運転手がひとりの女を拾う。
束の間のセックスを楽しむだけのつもりが、いつか彼女は男のアパートに居着いてしまい、奇妙な同衾が始まっていく。すえたよ~な四畳半で、朝も昼も夜も身体を交わすことでしかお互いを確認し得ない生活。明日の保証もなく、ただ漫然と過ぎて行く日々・・・ ふたりは来る日も来る日もセックスに明け暮れて、飽くことがない。
遣らずの雨の中打ち続く愛欲の無間地獄。そんなふたりの隠微な生活の描写が延々と繰り返されるだけというこの映画で神代監督は男女の性愛のある種、理想の形を描こうとしたのかもしれない。役者の息づかいさえ聞こえてきそうな濃密な映像で、愛に溺れることの喜びと悲しみを、神代辰巳監督が描いた官能ドラマ。ポルノということで中々見ることも難しいかと思いますが、未見の方がいらした是非、一度ご覧下さい。思い出したようにまた観たくなってしまう作品で、ロマンポルノの域を超える不朽の名作だと思います。



中上健次(1946.8.2 ~ 1992.8.12)

中上健次の作品は、「青春の殺人者」(1976監督:長谷川和彦)、「十八歳、海へ」(1978監督:藤田敏八)、「十九歳の地図」 (1978監督:柳町光男)、「火まつり」 (1985監督:柳町光男)など、社会の片隅で生きる男と女の小さくも奥深いドラマを得意とする監督たちによって映画化されてきた。脚本の多くは中上自身の手によるもので、彼自身映像への興味が強かったことを物語っています。

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名サイト! ■日のあたらない邦画劇場■
管理人様(一部上場企業女性管理職さん!)に敬意を表して
◇あんましのあたんない邦画劇場◇
として今晩からシリーズ化していこうかなと思います。

◇第一夜◇「人間って、大きいんかい、小さいんかい・・・」小栗康平『眠る男』

◇第二夜◇♪愛のくらしに少し疲れた あなたとわたし SEXY♪..... 荒井晴彦『身も心も』

◇第三夜◇ジンセイは傷ついたもん勝ち!富樫森の名作『非・バランス』

◇第四夜◇中島丈博『おこげ(OKOGE)』

◇第五夜◇金子修介『1999年の夏休み』

◇第六夜◇矢崎仁司『三月のライオン』


ekato
YOKO MY LOVE


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寺島しのぶは、緋牡丹博徒の娘です!(´-`).。oO

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