インドゴムノキと言えば、昔から観葉植物の定番中の定番である。近年は斑入り品種も多く流通するようになったが、どうも類似した複数の品種がごちゃ混ぜになっている感が否めない。というわけで、ここに現在流通している品種をまとめてみることにした。
まずは、白い斑が美しい「デコラ・トリカラー」。インドゴムノキの代表品種「デコラ」の枝変わりで、オランダから導入されたという(『朝日園芸百科27』より)。しかし、ネットで検索しても、外国のサイトでこの品種がほとんどヒットしないのが謎だ。斑の面積が大きく観賞価値が非常に高いが、葉緑素が少ないために生育はやや遅く、そのためか流通量は少ない。
こちらは国内で昔から知られている品種の「アサヒ」である。デコラ・トリカラーの枝変わりで、斑の面積は狭くなり、覆輪状になる。デコラ・トリカラーよりは葉緑素が多いだけに、斑入り品種としては性質は強く、夏の高温時の生育は速い。なお、ネット上では、「アサヒ」として紹介されていても「デコラ・トリカラー」に酷似した画像も見られる。栽培環境によってそこまで斑が変化するのかどうかは未確認。
そして、こちらが斑入り品種では現在もっとも流通量が多いと思われる「ティネケ」(Tineke)である。来歴不祥。ネットで'Tineke'のキーワードで検索したところ、どうもオランダあたりによくある女性の名前らしい。ということは、やはりデコラ・トリカラーの枝変わりとしてオランダから入ったのだろうか? いつごろから流通し出したのかは知らないが、私の記憶では初めてこの品種名を園芸店で見かけたのが平成7年である。アサヒと同様、斑入り品種としては性質が強い。また、ネット上では「ティネケ」として紹介されているものでも、「デコラ・トリカラー」に酷似した画像も見受けられる。
こちらはたまに園芸店で見かける「ブラジル」という名の品種である。来歴不祥であるが、やはりデコラ・トリカラー系と思われる。画像を見比べてみてお分かりの通り、アサヒ、ティネケ、ブラジルの三者は、同一品種かと思うほど酷似しており、判別が非常に難しい。
ブルーミングスケイプのサイトによれば、アサヒに比べて節間が詰まっているとのことで、そう言われてみればそうも見えなくもないが、これが品種の性質によるものなのか栽培環境によるものなのか、今後も観察して確かめてみたい。
さて、これまでは良く似た品種が登場したが、今度ははっきりと別品種だと分かるものを紹介したい。まずこちらは最近出回るようになった「ベリーズ」(Belize)である。来歴不祥だが、やはりデコラ・トリカラー系か? 画像でお分かりの通り、葉に赤い色素が乗って大変美しい。特に、葉が若いほど赤い色素が濃く、古くなるにつれて色素が抜ける性質がある。
こちらも赤い色素が乗った葉が非常に美しい、その名も「ルビー」(Ruby)という品種。アメリカのサイトで見つけた品種だが、何とか日本でも入手できないかと考えていたところ、昨年入手することができた。ベリーズと同様、若い葉は色素が濃く、葉が古くなるにつれて色素が抜ける。来歴不祥だが、ベリーズに酷似しており、同条件で栽培するとまったく見分けが付かないほどよく似ている。まさか同一品種だろうか?
その他、同系統と思われる斑入り品種に「シルヴィー」(Sylvie)がある。ネット上の画像を見る限りは、斑の面積が広く、デコラ・トリカラーに似る。
というわけで、少なくともこれだけの類似品種が世に出回っているわけだが、お互いに酷似していて判別が難しいために、果たしてすべて正しい品種名で出回っているのかどうかが気がかりでもある。特定の品種名を表示せずただ単に「斑入りゴムの木」として売られることも多い。私がが所有するものはすべて品種名を確認した上で入手したのだが、その品種名がすべて正しいという前提でここに紹介した。なお、「その2」では、また別系統の斑入り品種を紹介予定である。