英国民謡好きの戯言

2011/10/18(火)13:53

10/10にNHK-FMで放送した「今日は一日プログレ三昧・再び」 文字に起こしてみた。(その24)

音楽/その他(297)

続き。 山田五郎→山 森田美由紀→森 岩本晃市郎→岩 森 さて、著名人の方にプログレッシブロックへの想いを語っていただく「私とプログレのコーナー」。3番目にご登場いただきますのは作家の貴志祐介さんです。 その想像力を駆使した世界観に魅かれた熱狂的なファンの多い貴志さんなんですが、「悪の経典」という私たちにはなじみ深いタイトルですよね。 山 英語で言うと「Karn Evil」ですか。 森 その大作も発表されていらっしゃいます。その想像の原点に何があるのかお話いただきました。 「今日は一日プログレ三昧・再び」をお聴きの皆さん、作家の貴志祐介です。 元々はハード・ロックを聴いてたんですが、ピンク・フロイドとかイエスを聴くようになりまして。やっぱり決定的なのはジェネシスですね。ジェネシスの「眩惑のブロードウェイ」というアルバムに出会ってからすっかりはまってしまいました。 ジェントル・ジャイアントとかヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターとか、キャメルとかキャラヴァンとかトレースとかそういうバンドを順番に聴いていきまして。 すっかりそれでもうプログレ体質になってしまった気がします。 ジェネシスは本当にファンタジーであったりとかですね、おとぎ話のような世界っていうのがロックと本当、対極にあるような気がしてたんですね。そういうものが1つになるっていうのがもの凄く新鮮に感じられたんですね。 小説は非常にたくさん読んでたんですね。それとその聴いてる音楽っていうのがシンクロするという体験を初めて、そのプログレによって…特にジェネシスですね、味わったものですから。 そもそも音楽をかけながら書いていることも多いですし、1つの例えば歌詞であるとかですね、1つのフレーズにインスパイアされるってことは非常によくありますね。 「悪の経典」という小説なんですが、書き始めてすぐにですね、このタイトルで行こうと。エマーソン・レイク&パーマーの名盤の邦題でもあるわけなんですけれども。曲そのものっていうのもありますし、「悪の経典」という言葉の持つインパクトですね。 それからもう1つはアルバムのジャケットのですね、エイリアンで有名なギーガーのデザインした。あれが非常になんというか、小説のイメージにぴったりだったんですよ。こういう青春時代の…高校が舞台なんですけれども、非常に鬱屈したエネルギーとかそういうものを一番よく表現してくれるのがロックだと思いました。 そうですね…やはり、メタル系に近いようなかなりハードなものをたくさん聴きながら書いてまして、特にドリーム・シアターですね。非常に精緻でかつ容赦のない展開というのがこのストーリーにぴったり来まして。 特に後半、下巻のですね、終わりの方で。殺戮シーンですね。サイコパスから逃げ回ってですね、それを猟銃で追うという非常にハードな展開が延々と続くんですけども。 ここはやはりもう、BGMがクラシックってありえないですよね。これはもうメタルでしか。特にドリーム・シアターがぴったりだったですね。 「悪の教典」(上・下) 長編では一番新しい「ダークゾーン」という小説がありまして。実はその影のテーマ曲というのがですね、ハットフィールド&ザ・ノースの“ハーフウェイ・ビトウィーン・ヘヴン・アンド・アース”という曲がありまして。 これが曲だけじゃなくて歌詞が非常にこの内容とシンクロしてきたんですね、奇妙なことに。 そもそもその“ハーフウェイ・ビトウィーン・ヘヴン・アンド・アース”っていうのはまあ、煉獄のようなこの地上と天国の中間地点ですよね。これがまさに「ダークゾーン」における戦闘の…その舞台を表しているような気がしましたし。 月光に導かれるっていうような歌詞がありまして、「ダークゾーン」の中で月が出たり消えたりするんですけども、それによって戦闘が始まる。まさにそのシーンを書いている時にそういうフレーズが耳に入ってきたんですよ。 ですからこれは何かの啓示なのかなという気もしました。 「ダークゾーン」 作家によってはですね、聴きながら書けないという人も多いんですが、その時々でやはり正しい音楽をチョイスすればそれを後押ししてくれます。 違う曲をかけちゃうとやっぱり違うなということでいったん執筆を中断してCDかけ替えたりしますけど。 昔のバンドの再結成という話を聴くと、自分よりはるかに年上の人がいまだにステージの上でロックのような激しい音楽をやれるっていうことにまず勇気をもらいますね。 私も50を越えてですね、人生半分以上過ぎて。ましてその、小説を書けるのがあと何年かということを考えるとやっぱりちょっと焦りのような気持ちが湧いてくるんですね。 若い頃ってのは時間が無限にあるような気がするんですが、やはりある程度年を取ってくると「あとどれだけしか時間がない」。で、今までのペースを考えるとまあだいたい何冊ぐらい書けるだろうってのが見えてくるんですよね。 そうなって初めて、ある意味本当の自分の人生、才能に向きあうことができるんじゃないかと。 往年のバンドがですね、当時と変わらぬ演奏をしてくれてるのを観たり聴いたりするとですね、それによって人間ってのは凄いんだなっていうことを改めて思わせてくれるんですね。 加齢によって衰えてくる部分ってあるんですが、努力とかですね、あるいは気力によってそれを100パーセント以上に補いうる。当時よりむしろ進化してるんじゃないかと思わせるような再結成バンドがありますので。そういった点で本当に勇気をもらってますね。 森 「私とプログレ」、作家の貴志祐介さんでした。プログレ聴きながら仕事ができないとずーっと話していたんですが。 山 根底から揺るがされましたね。しかも物書きの方から。最もプログレを聴きながらやりにくい作業と思われる。 宮 できるんですね。 山 小説を書くという作業。可能だということがね。 森 可能でさらに創作に生かされていくという。 宮 素晴らしい。 山 ということでしたね。“Karn Evil”がそのまま生かされたということですからね。 続く。

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