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PENTAX MZ-S

 
 
 
             PENTAX MZ-S

  
  (MZ-S+FA20mmF2.8+サードパーティー製フード)  
 
 
勝手にインプレッション

ペンタックスのカメラの中でも、これほど賛否両論分かれたボディは珍しい。Z-1P以降、長くフラッグシップ不在の状況が続いていたペンタックスの銀塩一眼レフシステムに、鳴り物入りで登場したのがMZ-Sである。

ペンタックスファンを失望させたのは、なんとも中途半端なそのスペックであった。シャッターの最高速1/6000秒、巻き上げ速度2.5コマ/秒、配置の意図が良く分らない6点のAF測距エリア、低いファインダー視野率、動体を追ってくれない貧弱なコンティニュアスAF…。はっきり言って、シャッタースピード以外どこをとってもEOS Kiss7と同等かそれ以下である。30度傾いた個性的な軍幹部のデザインも、好みが分かれた。
他社入門機にも劣る部分を持った中級機を「不当に高価だ」と感じ、フラッグシップを待ち望んでいたペンタユーザーが落胆したのは想像に難くない。

では、MZ-Sを好意的に受け止めたのはどういうユーザーなのか。これは、新型機を他社ではなくMZ-3や5、あるいはZ-1と比べた人たちである。切れの良くなったシャッター、復活したハイパーオペレーティングシステム、よく出来た縦位置グリップなど、MZ系とZ系の良いところを上手く融合させた、細部に渡りかなり練られたボディだったので、使い勝手は思ったほど悪くないのであった。

 
 指掛かりが深くえぐれた縦位置グリップ。MZ-Sはこれを付けて完成すると言っても過言ではない。

Z-1で玄人に受けた「ハイパーマニュアル」は、残念なことにユニークすぎて万人受けしなかった。が、慣れると直感的に操作できる事から、その復活を希望する声は根強く、晴れてMZ-Sで先祖返りを果たした。実際、プログラムモード・Avモード・Tvモード・マニュアルモードを縦横無尽に切り替えられるハイパーオペレーティングシステムは、他に類を見ないほど良くできている。
評判の悪いAF性能に関しては、クロスセンサーになっている中央部一点だけを選択して使用すれば、特に問題はない。MZ-3あたりの「ほのぼの系カメラ」に馴染んでいるユーザーなら、むしろ数段速く正確になったと感じるくらいだ。

  
  怒り肩の独特なデザイン。ペンタックスファンは、親しみを込めて「ジャミラ」と呼んだ(笑)。

またMZ-Sは、別途データバック等を購入する必要もなく、デフォルトでパーフォレーション間に撮影データを印字できる。コマ間に印字する機能はよくあるが、パーフォレーション間というところに価値がある。フィルムを裁断してもデータが見えなくなることがない。真面目に露出を極めたいユーザーには、ありがたい機能だ。

エンゾーにとって嬉しかったのは、ボディがマグネシウム製だというところ。スペック的にいうとMZ-Sは中級機になるが、すべての中級機の中で、金属製のダイキャストボディを採用しているのはMZ-Sだけである(EOS7などは単なるアルミ外装)。グリップしたときに「カチッ」とした剛性感が指先に伝わり、それだけで安心感がある。このあたり、高性能だったにもかかわらずボディに剛性感がなくて損をしたEOS5とは対照的だ。
 
もともとフルサイズデジタル一眼レフのベースボディとして開発されたものの、肝心のデジタル一眼の方があまりにも高コストになるために頓挫したという、不幸な生い立ちを背負ったカメラだ。開発に金が掛かりすぎて高価になってしまった「ペンタックス最後の銀塩中級機」に、デジタルへと雪崩を打ち始めた世間の関心は高まらなかった。
それどころか、期待されていた銀塩フラッグシップが出なかったこと、デジタル化すら実現しなかったことで、MZ-Sというカメラは「不当に高価で中途半端なカメラ」という烙印を押され、販売店で投売りされるほどセールスに苦しんだ。
 
この悔しさがバネになったのか、その後の*ist Dに始まるペンタックスの逆襲は周知の通りである。*ist D発売当時、ペンタックスの株価はうなぎのぼりに上がった。(…買っときゃ良かった(T-T))

しかし、慣れるほどにペンタックス開発陣のこだわりと意気込みを感じるMZ-Sは、長く使い込む価値のある、優れたカメラなのである。


【2006.3.31加筆】
日本カメラ博物館で、ペンタックス展「独創技術の玉手箱」が開催され、ついに陽の目を見なかった「幻の名機」たちが一堂に会した。本来ならMZ-3の兄貴分になるはずだった、そしてペンタックスファンが切望してやまなかったフラッグシップ機「MZ-1」や、MZ-Sベースのフルサイズデジタル一眼レフ「K-1」のモックアップも展示された。

   

   
   

こうして見ると、今でもK-1のサイズはフルサイズ機としてはそれほど大きくなく、比較的コンパクトにまとまったボディだったと言える。今ではすっかりAPS-Cサイズが板についてしまった感のあるペンタックスデジタル一眼レフだが、いつの日か、フルサイズに回帰して欲しいと切に願うものである。




長所

○マグネシウムボディがもたらす、高い剛性。なにはなくとも、これだけはフラッグシップ並み!
○パーフォレーション間のデータ印字は、非常に優れた機能である。
○使いやすい縦位置グリップ。多少大柄になっても、ぜひ装着して使いたい。
○使うほどに手に馴染むハイパーオペレーティングシステム。

短所

●どうせなら、最高速を1/8000秒にして欲しかった…。
●視野率92%は、価格から考えると大いに不満が残る。せめて95%は欲しかった。
●巻上げが2.5コマ/秒というのは遅すぎる。せめて3.5コマくらいないと…
●MZ-3よりはマシとは言え、他社と比較するとやはりAF性能が弱い。

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超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆

Yahooオークション出現率(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆

*見た目こそ好みが分かれるが、使って分るその真価。ペンタックスのレンズ資産を持っているユーザーなら、文句なくオススメの一台である。 
 

  



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