地球環境問題とベーシックインカム
●高校時代からなんとなく、戦争、テロ、独裁と弾圧、排他的な愛国主義や宗教、飢餓と貧困、環境破壊、権威主義や驕り、利害と打算、人間性を無視した競争、失業、嘘や詐欺、憎悪、虚飾や虚礼といった世界のあらゆる問題から自由であるような社会の姿はどうあるべきかということに関心があった。一言でいえば現代版ユートピアを求めていた。●大学時代の前半だったと思うが、近所で読書会のようなことをやっいて社会問題などを議論していた。そんな中に、国会議員になってしまった女の子がいるのでびっくりなのだが。名前は中川智子。たけしのTVタックルにも何度か出演していたようだ。現在は宝塚市の市長をしている。自身の半生を描いた赤裸々な自伝『びっくり』の中に私も登場している。●大学時代は理工学部にはいたが、前半は小説・哲学・社会学などの本を読んだりして、民主政治研究会なんてサークルにも入っていた。そんなことで学業の方はおろそかにしていた。大学・大学院時代の後半は、今から思えば見当違いの学生運動にのめりこんだりした。●サラリーマンをやめてから、未来企画という会社をつくった。仕事の中身はサラリーマン時代の延長線であるが、未来社会のことを考えて本を出版しようという意図があった。そのほか進化論や宇宙のことにも興味があって、運動不足の書斎派であった。●この頃、NPOネットワーク『地球村』の代表をしている高木義之さんの本を何冊か読み、『地球村』の講演会にも参加したことがある。この『地球村』にもシンパシーは感じたが、私の問題意識の部分でしかなかったので、のめり込むようなことはなかった。●減価貨幣やバーシックインカムのことは知らないで本を出版したが、未来社会のキーワードである基本配当とネーミングしたものがベーシックインカムであり、貨幣の回収率が減価貨幣の減価率に相当していること、この通貨が公共通貨と呼ばれるものであることを後になって知って驚いた。ベーシックインカム、減価貨幣、公共通貨の3つを発明していたことになる。投資配当とネーミングしたものは誰も提案していないので、これはオリジナルな発明になるかもしれない。●テニスとの出会いは6年前に、友人から中里介山の『大菩薩峠』にユートピアの話がでてくるというので、20巻もある長編小説をなんと2か月で読んでしまったのだが、その直後にパニック障害になりかけた。その対策と一環としてはじめたのがテニスで(軟式から始めて今は硬式)、今ではすっかり打楽人生になってしまった。●今月、大学のクラスメートの一人が共同著者になっている本が出版されたということで、久しぶりに地球環境問題に関する本を読んだ。『人類はこの危機をいかに克服するか』というけっこう大上段なタイトルの本である。人類はこの危機をいかに克服するか 地球環境・資源、人類社会への提言価格:1,944円(税込、送料別)●主要な地球環境問題について本の半分ほどを費やして解説したあとで、問題解決にむけて世界連邦政府構築の提案、GDPに代わる新しい評価基準としてグローバル最大幸福(GGH)という指標を提案し、代表的な国々を例に指標の計算をしている。それなりに得心のいく指標になっている。●『地球村』の方も飢餓、貧困、戦争、環境破壊などのない、持続可能な世界を目指している点は変わりがないが、こちらは世界政府の構築とGGHの提案まで踏み込んでいる。『地球村』も問題の根っこには経済がGDP至上主義であるとの認識や人間の生活スタイルはLOHASであるべきだという点も当然共通している。●但し、GDP至上主義を問題にしてはいるが、資本主義そのものが問題であるとか、マネーシステムや所得配分システムが問題であるという主張はしていない。所謂エコロジストの主張には全面的に賛成ではあるが、今一つのめり込めないのはこの点にある。あまり突っ込み過ぎると運動の幅が狭まるという考えがあるのかもしれない。高木義之さんは、『地球村』の基本理念は「非対立」にあると言っているが、このことが関連しているかもしれない。●私は資源・環境問題を含めて世界の諸問題の大半は「資本主義経済システムと国民国家という枠組み」の結果であると捉えている。従って結果だけでなく仕組みそのものを変える必要があると考える。ベーシックインカムの唱える人の中にはマネーシステムまで問題にする人もいればそうでない人もいるが、ベーシックインカムの運動は、貧困や経済的格差の解消だけでなく、結果的に人間の活動動機を変えることになるので、経済システムの組み替えを目指す運動であるとも言える。国家の枠組みを無くすには経済システムの変革が先行する必要があると思っている。●地球の資源・環境問題の原因が「自然を外部経済として扱い、利潤追求動機で動く経済システムがもたらした必然」であるならば、解決方策の要点は次ようになる。(1)外部経済を内部化するために、地球税(地価税、資源利用税、環境負荷税など)を税の基本とする。逆に人間の有用な活動及びその結果に課税するような所得税を含めた全ての税金を撤廃する。(2)地球の自然資源や環境は空間的に世界に跨るので、その問題解決には国民国家という枠組みでは対応不可能である。その意味で世界政府の構築、更に言えば国境のない世界にする必要がある。(3)利潤追求動機で動く経済システムは地球資源・環境問題だけでなく、犯罪、戦争、貧困、差別などあらゆる問題の元凶でもあるが、この経済システムは利子貨幣がその根幹にある。経済という土台があくことなき利潤追求、利害打算、弱肉強食なので、自由・平等・博愛などの理念がお題目だけのものになるのは避けられない。このためには、マネーシステムを公共通貨とベーシックインカムなどをベースとする経済システムに転換する必要がある。●このへんの事情を詳しく知るには「21世紀の経済システム展望」(ジェイムズ・ロバートソン)などを読まれるとよいかもしれない。21世紀の経済システム展望 [ ジェ-ムズ・ロバ-トソン ]●日々生活のために忙殺されている多くの人にとって、未来の人類のことを心配するよりも明日のパンや老後の生活がどうなるかといった問題の方に関心があるのは無理からぬことである。そういう意味ではベーシックインカムのような日々の生活に関わる所得保障制度の方が地球環境問題よりも身近な問題の筈である。C.H.ダグラスが国民配当を提唱して以来、再びベーシックインカムが世界的に認知され運動の広がりをみせてきている。●残念なことにベーシックインカムの運動の方は、原発の被災者に対してベーシックインカムの支給を訴える運動などはあるものの、地球環境問題についてのコミットはあまりない。●いずれにしてももどかしい話で、未来の世界はこうなってほしいという姿を思い描いてあの世まで持ち込むしかないだろうと思っている。そんなわけで、現世でたかがしれたことしかできないのであれば、今は余生を楽しくということで、テニス三昧の日々を過ごしています。