雑虫記(5) こーび! こーび! こーび!
朝方は梅雨らしい霧雨が舞っていたが、日中は日射しもあり一日保つ。当然湿度は高く気温も高め。しかしまだ夏の酷暑にまでは及ばず、昆虫達も暑さ避けることなく一日活発に動ける時期。道を歩けば交尾、交尾、交尾……。まったく……そういや童貞で悶々としていた若い頃は、寄り散ってゆく鬱陶しい蠅共の何腹ただしかったか言ったなら、こんな俺の前で顔色一つ変えずににチョコチョコチョコチョコ見せつけるように平気でセックスしやがって……って、そんなやっかみもあったかも。 けど、昆虫に限らずこの堂々とした雄雌達は、はたして我々のような性感を感じているんだろうか? なんでもかんでも突っ込みたくなるよな股間がうずく性衝動(若い頃はね)、粘液纏わせ粘膜擦れ合う触快感に似た感覚を感じて求めているのだろうか? そして異性を奪われる哀しみや憎しみ、想い受け入れられない焦燥や悲愴な想いに身を焦がされることはないのだろうか?発情の抑制効かずあちこちで交じり合うその姿、野蛮で節操がないとも言われる。しかし人ならではのそれら想いの抑制も効かず、虚言を弄して利己的な衝動発散にネチネチと走り、それに群がり売り物にして綺麗に着飾る我らの輩とコイツらの、どちらが野蛮で節操ないと言えるのだろう。 いや、むしろ、この野山で人目(?)憚らず交じり合うその姿こそ、魅力的な者だけに与えられるその権利の堂々たる主張といったものなのか。よって己に自信のない我々の性主張など、暗闇でコソココパンパンしてるのが、一番合っているのかもしれない。