NHK HV 「キャラバン」
原題は「Himalaia」。文字通り荘厳なヒマラヤを舞台に、ヤクを率いたキャラバン隊にて山脈を越えて通商を行い生計をたてるネパール高原民族の生き様が描かれる。大分前に録った作だが、その地味目な設定のためかなかなか観る心境に至れなかった。しかしこの寒い時期逃すとまたお蔵入りしそうだと引っ張り出すが、お~……なかなかに見応えのある一本だった。監督は「セブン・イヤーズ・チベット」ではユニットディレクターを務めたエリック・ヴァリだが、写真家で作家でもある彼は、その遥か以前からネパールの高原地帯に魅了されて20年以上もこの地に居着いている人で、それだけにこの地への思い入れと、その地に息づく人々の心情を、決して誇張することなく見事描ききっている。まぁ、お話自体はそうドラマチックに展開するわけでなく、占いや長老の意向により左右される古い体質に否定的な若い世代の後継者達と、それを守ろうとする旧世代がその確執を乗り越えてゆくありがちなドラマだが、その舞台となる、いや、主役となる標高5,000メートルを超えるネパールの高山で撮影して見せつける情景の描き方が見事。今やCGによって現実を超えた十分リアルに感じる背景描写も可能になった時代であるが、やはりこういうオールロケによる、これぞリアルのモノホンの映像で作り上げられた作品を見せつけられると驚嘆せずにはいられないし、それでこそドラマ自体に現実味や重みが加味され、例え単純な脚本だろうがグイグイ引き込まれていってしまう。これぞ映画の本道であるかもしれないな。画質はそう高画質と言うことはないが、そのリアルな情景損ねることなく迫ってきます。音の方もマルチではないが環境音は結構リアル。