景気拡大・不況は操作される
景気拡大・不況は操作される経済・国際問題評論家 吉永俊朗2002年2月に始まった現在の景気拡大が「いざなぎ景気」を抜いたとしても、それは企業のリストラによって国民生活に犠牲を強いた、およそ景気拡大とは言えないような底這い景気である。しかも、この底這い景気の前はバブル崩壊後の長いデフレ不況であった。日本経済がこのような長期不況、そしてデフレに陥ったのは、どこに原因があるのか、誰のせいなのか。バブル崩壊後17年にもなるのに、この極めて大事な問いに、学者やエコノミスト、さらにはジャーナリズムも意図的に避けて通っているようである。このことについて、公の場で明確に発言しているのは、ごく少数の方々である。森永卓郎氏は、日下公人氏との共著『日本人を幸せにする経済学』の中で、「デフレを止めることは簡単なのにやらないのは、よほど頭が悪いのか、それともわざとやっているか、どちらかしか考えられません。今の政府の御用経済学者たちは、いくら何でもそれほど頭は悪くないはずなので、心のどこかに「悪意」があって、貧富の差を生み出そうとわざとやっているのだと思います」と述べている。この発言に対して、日下氏は「森永さんは「悪意」と言いますが、儲かっている側の人間は「善意」と感じるはずです。(中略)おそらく、分かっているけど実行しないのでしょう。分からない人、言ってもやらない人に何度も言い続けるほど私は親切ではありません」と応じている。 渡部昇一氏は、著書『何が日本をおかしくしたのか』の中で「日本銀行総裁に就任した三重野康氏がやったのは、高騰していた株価と地価を下げるという金融政策であった。一度上がった価格を無理やりにでも引き下げるという政策をとったのである。三重野総裁が金融引き締め政策を行い、さらに大蔵省銀行局長土田正顕氏が総量規制を通達して「バブル潰し」をし、現在の平成不況を引き起こした。この人たちの頭にあったのは、「国民の資産を減らすのが正義である」という思想だったのである。国民の資産を減らすと公言して憚らない中央銀行総裁が現れるのが日本であり、そうした人を褒め上げるマスコミがいるのも日本ならではのことである」と述べている。日銀、そして大蔵省(財務省)の政策が意図的に長期不況をもたらし、今も積極的に景気を押し上げようとはしないのである。なぜなら、公務員にとってはインフレよりもデフレの方が都合が良いからである。東京商工リサーチ「TSR情報」(2006年12月7日号)