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2017.09.20
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カテゴリ:極私的映画史


 1976年夏、母方の祖母が亡くなった。母の実家は鳥取市内ではなく、郡部で山の方。兼業農家だった。農家のばあさんでありながら髪を染めたりする人だったので、結構おしゃれな人だったのかもしれない。葬儀は夏休みに入ってすぐの日曜の午後だった。

 ところが、その日はアートシネマ鳥取の上映会のある日。僕はすでに前売り券を購入していた。開映は午前10時。こんな日にいいものかと思いつつ、母に断って葬儀に出かける前に映画を見に行った。罰当たりな孫である。

 上映作品はどういうわけか3本もあり、おそらく一番見たかったのは今村昌平の「赤い殺意」だったのだが、実際に見られたのは藤田敏八の「八月の濡れた砂」だけだった。最近は忘れられた存在になっているが、藤田敏八は1970~80年代の日本の青春映画を代表する監督で、「八月の濡れた砂」は日活がロマンポルノに移行する直前の作品だ。その後の藤田作品に漂う「虚無と怒りが渦巻くような青春像」の原点ともいえる代表作でもある。

 この映画で忘れられないのは、石川セリの歌う同名主題歌だ。彼女自身は演歌っぽい曲調が嫌いだったらしいが、暑い夏のうだるような倦怠を感じさせる歌唱は、映画で描かれた青春のやり場のない感情を見事に表現していた。あの歌がなかったら「八月の濡れた砂」は、日活青春映画の単なるあだ花だったかもしれない。

 「八月の濡れた砂」を見て感じた虚しさを胸に残したまま、祖母の葬儀に向かった。母の実家で行われた葬儀は、田舎の伝統にのっとったものだったのだろうか。葬儀の最後には、孫4人が白い装束に身を包み、棺を担いで庭を一周した。僕はその4人の孫の1人だった。

 「八月の濡れた砂」のラストシーンは、照り付ける太陽の下、海を漂うヨットだった。祖母の棺を担ぎながら、農家の庭先に照り付ける夏の日差しに、「八月の濡れた砂」で見た暑苦しさを感じていた。


GREAT 20 NIKKATSU 100TH ANNIVERSARY 20::八月の濡れた砂 HDリマスター版 [ 村野武範 ]





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Last updated  2017.09.20 20:04:35
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