土曜・日曜と家族で伊豆の松崎町へ旅行した。民芸茶房という美味しい魚を食べさせてくれる食事処があり、そこが経営するホテルに泊まって「美味しい魚と温泉」を満喫した。
松崎町といえば、最近では映画「世界の真ん中で愛を叫ぶ(セカチュー)のロケ地として人気が高いそうであるが、古くは独特のなまこ壁の家並びや、桜葉の塩漬けの生産が国内トップであることでも知られている。その松崎町のもう一つの名物に伊豆の長八がいる。
漆喰を使って、鏝で絵を描く鏝絵の名人として知られる長八の作品を集めた「長八美術館」が、松崎町にあり、母と一緒に観覧した。入り口で虫眼鏡を渡される。展示してある作品の細かい部分をよく見ていただきたいとのことで、作品にあててみて、納得する。筆の線と思われたものが、実は鏝で盛り上げているので、虫眼鏡でみると、その盛り上がりが見えるのである。地模様で、いまでいうスクリーントーンを貼ったように見えていたものが、実は鏝で切り込みを入れた細工であるのだ。
鏝絵は、壊れやすい漆喰で作られ、また天井絵や戸袋、腰壁や生活雑器といったものに描かれ生活の中に埋もれていってしまうものなので、芸術品としての評価は低いかもしれないが、その細部にいたるま手を抜かない作者の情熱が感じられ、fine-artとしては喧伝されないかもしれないが、一種の無名性を楽しむ人生が窺われ、感じいってしまうのだった。