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カテゴリ:絵画.・アート
確定申告の仕事に一区切りがついたので、ご褒美にお出かけ 横浜美術館で開催中の「松井冬子」展へ 私的には「異形の画家」と思っていたかたを megumegu001さんが紹介していたので、実際に見てみよう、と 副題の「世界中の子と友達になれる」と言うのも この画家さんの傾向からいうと、ちょっとふしぎな感じがした。 ところが、この副題が、彼女の画業に大きな影響をおよぼした 百聞は一見にしかず、というが、まさにそのようなコトバ 松井冬子氏は、東京で出生したが、すぐ静岡県周智郡森町に移り そこで子供時代を送る 積極的な子供だったそうで、すぐにお友達がたくさんでき 「この分では、自分は世界中の子供と友達になることができるのでは」 と思うにいたったのだという。 しかし、長じるにつれ、その概念は幻想にしか過ぎず 「世界中の子とともだちになれる」ということは不可能だと知るに至る 普通の子供にとっては、これはよくあるイニシエーション 自分の思うとおりに世の中は動いていかないものだという 挫折を味わい、世の中のおきてに目覚める第一歩であろう しかし、松井嬢はちがっていた この不条理と自分の理想・可能性がせめぎあい変容していくのを 身をもって味わい、その変容に取り付かれてしまったのである。 表題の「世界の子供と友達になれる」は 東京藝大の卒業制作として描かれたもの これに取り組んだために、制作後一年間はまったく絵を描くことができなかったという 全身全霊を込めた力作である 静岡県磐田市の「熊野(ゆや)の長藤」に想を得て 一面に咲き枝垂れる藤の花のシャワーの中 一人の少女が横向きに藤の花を手に受けている が よく見ると、その足ははだしで、血を流しており 画面右端には、空っぽの乳母車が置かれている そして、何より不気味なのは 垂れ下がる藤の花が、下に行くと真っ黒に変容している よく見ると、それは、ただの黒ではなく スズメバチがさかさに群がっているのである。 彼女の原体験ともいうべき、変容の姿が最初にあったのである
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