FANTA-G

2023/09/02(土)20:32

むしろ「なかったこと」にするのが恥ずべき行為である

追燈 / 追燈 - 岡田索雲 | webアクション 9/1に合わせて無料公開されておりますが、かなり残酷な漫画です。といってもその残酷さは「絵空事ではない、実際に100年前にこの国で起きたリアルである」という意味での残酷さですが。  この国は地震だけでなく昔から自然災害が多い国です。で、天災、とくに地震に関してはいつ、どこで発生するかわからない。その脅威は老若男女、あらゆる人々に無慈悲に襲い掛かる。しかし、地震後のこういう差別による大量虐殺はあくまで人間の行いであり。  この手の漫画や記録ドキュメント番組があると必ず「日本人を貶めるな」「昔のことをなぜ今更何度も蒸し返すのか」「元々殺されるような側にも問題があった」という人間。  違うんだ。不安な状況になったらまずこれを思い出す、自分の中にもそういう考えに陥る可能性が高いことを平時に知っておく、理解しておくからこそ、災害時にそれが野蛮な流言飛語に飲み込まれないために必要なんだと。だからこそ何度でも繰り返し思い出し、学び、過去のこの国の歴史を見つめなおす機会になる。  そしてこの行為は決して日本人を貶める自虐行為ではない。むしろ「なかったこと」にするのが恥ずべき行為である。  過去と今は地続きで100年前に起きたことが現代も、そして未来にも起きないという保証はない。現に近年の災害(熊本地震や鬼怒川洪水など)では発生後数時間、必ず匿名掲示板やツイッターに「現地に外国人と思われる窃盗集団が荒らしている」「女性をレイプする○○人がいるので注意!」みたいな流言飛語が現れる。そうでなくとも平時であっても差別的な言葉がネットにはあふれていて、それを大した罪の意識なく使う人間も多い。  これは日本だけに限らず、大規模災害で起きるこの手の虐殺行為は、必ず「社会的少数者に向けられる」ことを忘れないように。そしてこの被害者には外国人でも、ホームレスでも、オタクでも、身体障碍者でも、地方出身者でも、インテリでも、多数派でなければ何でもいいのだ。  そして、その虐殺に加担するのは、普段からの乱暴者、ヤクザのような人ではなく、ごく一般のサラリーマンであったり学生であったり。

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