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どらちゃんのしっぽ

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March 13, 2007
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テーマ:お勧めの本(7400)
カテゴリ:
の続きである。

3.決定論的宇宙


ここからが、順列都市の話である。
人間の精神活動を、コンピュータ内部で再現できるようになった時代。
精神活動は、ひとつの数値化されたパターンで表現できるといえる。(コンピュータで処理できるのだから)
その数値化された脳状態(ニューロン反応等)は、その内部の刺激反応により、自らがパターンを変えていくことで、精神活動が行われている。

しかし、その精神活動は、本当に未来予測不可能な自由意志なのだろうか。

コンピュータ内でシミュレートされている脳の活動は、やはりニューロン伝達物質のシミュレーションの結果である。
現実の脳は、外界からの刺激に応じて、さまざまに反応パターンが変化する。
しかし、仮想現実の中では<コピー>に与える刺激も、同一のコンピュータ内で処理されるシミュレーションの一部なのである。
すると、ある初期状態の脳を含む仮想世界のパターンから、次のパターンは、すべて計算で求められる。
コンピュータは、数学で言う「ラプラスの魔」になるのである。

唯一の外部刺激は、通信によって外界からの情報を<コピー>が得ることである。実在する人間が、<コピー>に話しかける、外界のニュースを読む、といったことだ。
外界の人間の行動・セリフは、シミュレーションの範囲外であり、コンピュータの予想外である。
この要素さえなければ、仮想世界は<コピー>の自由意志を含めて、決定的な未来なのである。


4.永遠に向けて

では、ある瞬間の精神活動パターンから、10ステップ先を一気に計算することはできないだろうか。
コンピュータ内部の計算において、nステップ目を計算するには、(n-1)ステップの結果がないとできない。(n+10)ステップ目を計算するには、(n+9)ステップの結果が必要なのである。
マウスカーソルを、右端に行き着かせるためには、右端の1画素左にマウスカーソルを表示した画像を出さなければならない。
これらは、順序性から解き放たれていない考え方だ。

画像パターンは、円周率(作中では膨大な乱数の海)の中に全てあるのである。左端にマウスカーソルのある画像の次に、右端にある画像があってもよいのだ。
決定論的宇宙であれば、精神パターンがnステップ目にあり、次に(n+10)ステップを計算することは可能である。
問題は、順序がなく存在する離散的データを、どのように選択して認識していくかである。
選ぶのは、外から見ている観察者ではない。内部にいる観察者なのだから。

パターンの計算に順序はない。したがって、次の瞬間までに次のステップの計算を終わらせなければならない、という制限もない。それはすなわち、演算能力の優劣は問わないということになり、計算方法についても自由である。地理的に離れたコンピュータで計算してもよいし、そろばんを使って何十万年かけて計算してもよい。

ただ、内部にいる観察者の意識は、乱数の海から自然発生はしない。
初期値を作り、そこから次を選ぶ、という動作をはじめさせなければ、次の自らのデータパターンを選択することができない。
この最初の一押しを、作中では「発進」と表現している。
この発進動作は、通所のコンピュータシミュレーション上で行われている。
一度、発進してしまった内部の意識は、その後、乱数の海からパターンを拾い上げていく。
そこに、時間的順序性も計算も必要ない。

これが、論理のアクロバットである。




【エデンの園配置(コンフィグレーション)】

もともとは、ライフゲームなどのセルオートマトンで使われている言葉である。

wikipedia ライフゲーム
wikipedia セル・オートマトン
モデリングシミュレイション入門(2006年度秋学期)

規定されたルールでセルの状態がステップごとに変化していくセル・オートマトンにおいて、初期状態でしかとりえないパターン配置のことを、エデンの園配置と呼ぶ。
wikipediaのライフゲームの項に説明されているが、セル・オートマトンのパターン変化は、以下のような種類に分類される。

(wikipediaより引用)
* 固定型は世代が進んでも同じ場所で形が変わらないものを指す。
* 振動型はある周期で同じ図形に戻るものを指す。
* 移動型は一定のパターンを繰り返しながら移動していくものを指す。グライダーと呼ばれるものが有名である。
* 繁殖型はマス目が無限であれば無限に増え続けるパターンである。


仮想世界そのものの数値パターンが変化していくことで、仮想世界内の精神活動がされていくことを考えると、上記のパターンのうち繁殖型以外は、永遠の不死は得られないことがわかる。
つまり初期条件を注意深く決め、少なくとも初期パターンに戻ってしまってはいけない。
したがって、エデンの園配置からはじめないとならないのである。


【TVC宇宙】

チューリングマシンと呼ばれる、一次元のテープ上の自動機械がある。
それを二次元の方眼紙のように格子状に拡張したものが、セル・オートマトンである。
本作品の中では、この無限に続く二次元を、さらに六次元に拡張したオートマトンが2010年に定義されたとしている。
六次元とは、二次元の格子状世界を三次元の立方体にし、その立法体内に無限に続く三次元世界を置くことで、六次元にすると考えている。
この二重化された無限に続く六次元空間を、TVC宇宙、と呼び、宇宙空間が永遠に膨張し続ける論理的な基礎としている。

このTVC宇宙内で、エデンの園配置でもって<コピー>と仮想都市空間の数値パターンを置き、塵理論をもって<発進させる>というのが、順列都市のつくり方である。

さて、これで、読みたくなった人はいるかな!?


--------------
2007-05-15追記

こんな「現実」のニュースがありました。





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Last updated  May 15, 2007 01:25:02 PM
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