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2017年06月03日
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テーマ:日本史(96)
カテゴリ:Hiekka aikaa
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Photo by Ken
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「__ふたたび惣次の前に現れた、お蝶という名の素体。
いわく、佛氏の説も孔子のおしえも異なる事にあらずと。
またいわく、天地の中に土というものより外になし、と。
“皆土〔みなつち〕”
私には永遠〔とわ〕の月、あなたには時の砂(※1)」
 
 
※1 作詞:大黒摩季、作曲:織田哲郎(※2) 『咲き誇れ愛しさよ』の一節。
咲き誇れ愛しさよ 歌詞
http://www.kget.jp/lyric/6432/
 
※2 「炎のさだめ」「いつもあなたが」を歌った TETSU さんである。
炎のさだめ 歌詞
http://www.kget.jp/lyric/23409/
 

 
 

“皆土〔みなつち〕”
『世間学者気質』巻之四第二「犬骨折てたからの頭巾かぶり付た石の枕」後編

 
イザヤ・ベンダサン氏が「気質物」と呼ばれる江戸時代の小話集の中から、
著書『にっぽんの商人』にて取り上げたものを見ていくと、
江戸時代の庶民と呼ばれる人々の中に__たとえそれがごく少数であれ、
きわめて冷静な現実主義者がいたことを思い知らされます。
 
もしも、現代の教育課程において、
「この世界にあるものは全部土(物質)です。
 大人たちがこぞって欲しがる大豪邸も!
 高級外車も! 立派な家具も! 舶来時計も!
 これも、それも、あれも、どいつもこいつも、全部土塊〔つちくれ〕ですワ!
 なにゆえ、土塊を羨ましがる必要がありましょうや?」
などと教えることができるならば、
もう少し簡単に、余計なものを欲しがらずに生きていけるかもしれません。
 
 
 
 
 世間学者気質 巻之四 第二
 犬骨折てたからの頭巾かぶり付た石のまくら (※後半部)

 
  偖こそと思いて。かの頭巾引かぶりて。となり近所へ行きて見れば。
 家も蔵も親仁も内儀もみな一〔ひと〕かたまりの土とみゆるに。
 おもしろき事に覺えて何の心もつかず。
 不断たもとに入れてさまよい歩き行くに。一日東河原を通りけるが。
 しきりにねむけさして思わず石をまくらにかりねの床に。
 かのいぜん夢中に見えし女郎又枕上に立て。
 やあ汝いつぞや夢中にあたえし頭巾を何と心得てうかうかかぶり歩き行くぞや。
 其の節申せし如く一躰汝が學問老荘の皮をねぶり米商賣しても升をうちわり。
 木綿屋〔もめんや〕すれば物さしをへし折り。
 両替屋すれば針口秤をくだいて仕廻うというは。
 まだ老荘〔ろうそう〕の實所をしらず。
 此のような類〔たぐ〕いなるもの世間に多し。
 なす事のうして能〔よく〕なすというは。
 天地自然の理〔ことわり〕にして本〔もと〕を報ずるなり。
 佛氏の説も孔子のおしへも異〔こと〕なる事にあらず。
 聖人の教えは只其の上に禮(礼)というものをくわえて外面をつくる事あり。
 是は今日人中に交わってゐればせねばならぬ事なり。
 老佛も其の所をしり賜わぬにはあらず。
 すでにもって孔子も禮を老子に問うとあれば。
 禮もよく知ってゐ賜う事あきらかなり。
 されども世間には又あまり禮義だてしてぎくぎくするものもあれど。
 そこを一段ひょうしをぬいて虚無を本としておしえし物なり。
 米のめしをくうて人の中に交わってゐようと思えば。
 中々禮義をわすれてゆかぬことなり。
 しかし其の中に佛老のおしえと云うものもうごきのとれぬ物にて。
 とかくわが心をない物にして。
 邪正一如〔じゃしょういちにょ〕善惡不二〔ぜんあくふじ〕と取りてゐれば。
 物ごとおそるゝ事も悦ぶ事もかなしい事も何もない物ぞかし。
 汝がいつぞや女房が死んだ時。
 丸盆をたゝいてはやり歌のどんどんふしをうとうてゐたは。
 どうやらさとったように見えたけれども。
 墓参りした時目がはれてあったを見れば。まだまだ誠の道を知らぬと見えたり。
 丁〔ちょう〕どわれらがおちょう(蝶)どの西向いて御禮申しやと。
 太鼓たゝいておだてるお禮申すのじゃと思えば。
 腹も立つゆえにむまいものくわして飼うておき。
 おるかわりに此のようにやしきの上にあがって
 あちらむいたりこちら向いたりせにゃならぬことじゃと思うて
 よいかげんに居直るのじゃ。
 人はそれを知らずに狗〔いぬ〕でも西東を聞きわけて知ってゐると。
 丁稚〔でっち〕をしかる引きことにしおるがおかしい。
 只々さとりというも外にはないものじゃ。
 天地の中に土というものより外はない。
 かたちのある物は皆土じゃ。
 それじゃによって人であろうが道具であろうが皆土になる。
 元が土から生まれたものじゃによって其のはづの事なり。
 くどい事なれども本〔もと〕に報ずると云うことが此所〔ここ〕じゃ。
 天の氣をかつて地より萬物生ずる人も。
 天に表〔ひょう〕したる男の氣を地に比したる女がうけて生ずる。
 それゆえ死すれば皆土になる天地自然の理。
 そうのうてはならぬものぞや。
 今かりに金銀珠玉のけっこうなる物に見ゆるものも。
 皆土じゃとおもうてゐればほしゅうも思わず。
 楊貴妃や小町の美人も土じゃとおもえば。
 人形を見るも同前にて慾心もおこらぬ物なれば。
 日外〔いつぞや〕汝にあたえしふんだら頭巾。夜も晝〔ひる〕もかぶり返せば。
 五塵六欲をはなるゝ。
 人この塵俗〔じんぞく〕をはなれてつゝむに
 禮義をもって外をかざれば聖人に異なる事なし。
 つつしめやわんわんとなく聲に夢さめて大きにさとり。
 有がたや有がたや唐土の荘子は胡蝶の夢を見てさとり。
 吾朝〔ごちょう〕のこのこの惣次は一段上を行きしお蝶どのにおしえられて。
 萬物皆土という大道を明らめたりと。家に歸りて俄かにそうじをするやら。
 身の廻りも奇麗に禮義をわすれず。
 欲心起こればふんだらすきん夜も晝もかぶり通した
 
 
 
 

__結局、最後は駄洒落とどんでん返しで終わってしまうこの物語、
しかしながら当方は学ぶことが多くとても面白く読みました。
 
引き続き上掲書『にっぽんの商人』にて紹介されている
江戸時代の町医者の話を取り上げる予定でしたが、
泥人形よろしく「“皆土”を盛って作る生活環境」について
次回、少し考えてみたい所存です。


 
 (つづく)
 
 





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Last updated  2017年07月23日 09時31分29秒



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