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テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 来書略。陽気(※上調子)に我意〔ガイ〕なる者は、 軍陣にてよからぬと申す説候。 又利害かしこき者は、武篇〔ぶへん〕鈍きと申し候。 強弱の見様〔みよう〕ある事にて候や。 返書略。加藤左馬助のの給える由にて承り候。 「諸士の武篇に目利〔めきき〕あり。 ただ理直〔りちぎ〕なる者大かた武篇よきと心得るべし」と。 又越後の景虎のの給いしは、 「武篇のはたらきは武士の常なり。百姓の耕作に同じ。 武士はただ平生の作法よく義理正しきを以って上とす。 武篇のはたらきばかりを以って、知行をおおくあたえ、 人の頭〔かしら〕とすべからず」と。 名将の下には弱兵なき事なれば、 大形〔おおかた〕、士は武篇よき者とおぼしめさるべく候。 陽気に我意なるものとても、臆病なる生まれ付きにてはなし。 ただ習いにて、何心なく其の身にはそれをよしとおぼえての事にて候。 理直なる者にうわ気(※移り気)をしかけぬれば、 常ならぬ事故〔ことゆえ〕、堪忍仕らず候。 其の時におもいかけぬ事にて行きあたり、体〔てい〕見苦しく候。 又分別〔ふんべつ〕だてにて利害おおき者は、常に義理を心がけざる故に、 自然の時、義理をかき候えば、臆病と申し候。 陰極まりて陽を生じ、陽極まりて陰を生ずるなれば、 平生陽気なる者は、陣中にて腹立てなすべき所にもあらず。 弓矢鉄砲の音にて、うかびたる陽気は皆けとられ、 常々臍〔ほぞ〕の本〔もと〕にたくわえたる勇気のたしなみもなければ、 おもいの外〔ほか〕常に我意出〔い〕でざる故、なみなみにても目に立ち申し候。 竜というものは、羽〔はね〕なくて天にのぼるほどの陽気の至極を得たるものにて候えども、 平生は至陰〔しいん〕の水中にわだかまり居〔お〕り候。 是を以って、真実の武勇に心がけある人は、常々の養いをよく仕〔つかまつ〕る事に候。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年11月11日 08時14分19秒
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