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テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 心友問う。漆器〔シッキ〕は美なる物〔もの〕也。 舜〔しゅん〕、何ぞ此〔かく〕の如き美器を始め給うや。 云う。是〔こ〕れ凡人〔ぼんにん〕の知るところに非〔あら〕ず。 数千歳の後をはかり給えば也。 上古飲食の器物は多くはやき(焼き)物也。 朝夕〔あさゆう〕用うる物なれば、くだけやすく損じ易し。 人も次第に多くなりて、天下に是れを用うる事かぎりなし。 帝舜の時より五百数千歳の間には目に見えぬ事なれ共〔ども〕、 数千歳へて(経て)後〔のち〕は山林あれて(荒れて)、 人民の難儀天下の凶乱の根となるべき勢いあり。 天下のひろきといえ共、つくるに至りては俄〔にわ〕かにすべき様〔さま〕なし。 故に、山林ふかき時において、うるしをとり木地〔きぢ〕をぬり、 飲食の器を始め給えり。 問う。世人、貴賤となく、我一代をはかるのみ。 子の代をおもう事だにふかからず。 他人の代・万歳の後を憂え給う事、何ぞ此〔かく〕の如くいたれるや。 云う。父母の子を愛するは愛の至り也。 しかれ共〔ども〕、子不孝なれば、其の愛心うすくなる事あり。 聖人の民を見給うこと、凶人悪人といえ共〔ども〕にくみ給わず。 刑罰に落ち入るときは、政教のいたらざる事をなげきて、其の罪人をいかり給わず。 悪をにくむべきは当然の理〔ことわり〕也。 一人を捨て万人を助くべきが為〔ため〕也。 天下のひろきも一家のごとく、万古の遠きも一日のごとし。仁愛の誠やむ時なし。 是れ則ち天地生々の心なり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023年01月06日 20時26分31秒
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