佐遊李葉 -さゆりば-

2015/08/01(土)15:25

羅刹 -135-

羅刹(193)

 頼通はふっと目を閉じると、深い溜め息をついた。  そして、再び能季の方を見据えると、低い声で呟いた。 「だが、その姿の美しかったこと。地獄の悪鬼が姿を変え、人を誘惑して堕落させようと考えるなら、おそらくあのような姿をとるのではないか。女だったら、きっと誰でも心惹かれ、つい心を開いてしまうだろう。鬢(びん)の髪がほつれて青ざめた頬にかかっている様など、男の私ですらふと心をそそられるほどだった」 「頼通様は道雅殿を見張っておられたのですか」 「父に命じられてな。何度か道雅の後をつけた。だが、幸いなことに、当子様は屋敷のうちに厳重に監禁されていて、一度も道雅にお会いになることはなかった。もし、あの頃の道雅に会っていたら、いかに高貴な当子様とて、つい惑わされてふらふらと誘い出されてしまっていたかも知れぬ。そのようなことにならずに済んで、当子様はお幸せだったな」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m

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