森田理論学習のすすめ

2024/06/04(火)09:11

☆最新の脳科学を森田に活かす その1

最新の脳科学(55)

私は森田理論を学習するにあたり最新の脳科学も付け加えるべきであるという考えです。意欲的な行動をしている時、また反対に不安やストレスで苦しんでいる時、脳はどのような活動を行っているのか。 基本的なところを抑えておくと、森田理論学習に大いに役立ちます。 脳には様々な神経系がありますが、精神活動に大きな影響を与えているのは3つあります。 1、積極的、意欲的、活動的な気持ちにさせてくれる神経系があります。 2、不安やストレスが襲ってきたとき、心身のダメージを防止している神経系があります。 3、1と2が暴走したときに、中和してくれている神経系があります。 森田理論に当てはめてみると、 1は生の欲望に邁進している時に活動している神経系です。 2は不安にとらわれて、神経症として固着する過程で活動する神経系です。 3は潤滑油的な役割を果しています。バランスをとっている神経系があるのです。 ではもう少し詳しく見てゆきましょう。 辛抱してお付き合いいただければ幸いです。 1、扁桃核で快、好きと選別された情動は「腹側被蓋野」に送られます。 ここからドパミンという神経伝達物質を使ってA10神経系を駆け巡ります。 A10神経系というのは、ドパミンを分泌する神経系はA8からA16までありますが、その10番目ということです。ドパミンが最も広く多く分布しているところです。 ドパミンは心地よさや快楽をもたらすものです。 A10神経の中に「側坐核」がありますが、さらにやる気を高めています。 そして内側前頭前野(目の上の部分)に送られて、ますます活性化します。 この回路は「快楽神経系、報酬神経系」と言われています。 目標や課題もって一心不乱に努力している時はこの回路がフル回転しています。 神経症に陥ると不安の対応に追われて、この神経系が停滞しています。 2、扁桃核で不快、嫌いと選別された情動は「青斑核」に送られます。 ここからノルアドレナリンという神経伝達物質を使ってA6神経系を駆け巡ります。 A6神経系というのは、ノルアドレナリンを分泌する神経系はA1からA7までありますが、その6番目ということです。ノルアドレナリンが最も広く多く分布しているところです。 ここから脳の中を駆け巡り、最後に「左右外側前頭前野」に到達します。 専守防衛が基本ですから、「防衛神経系、回避神経系」と言われています。 ノルアドレナリンは不安やストレスに対して防衛態勢を敷くように呼びかけます。 ノルアドレナリンは危険やリスクを回避するように働くのです。 行動は消極的、抑制的、逃避的、内省的に働きます。 いくら自分を鼓舞しても、脳の機能が後ろ向きですから、意欲は湧いてきません。 しかし防衛神経系は私たちの生活にとても役に立っている側面があります。 不安やストレスに対しては神経を集中させて全力を挙げて問題解決に向かいます。神経症に陥った人は注意や意識を自分の気になる症状に一点集中しています。 つまりこの回路は「集中力」を高めるという側面があるのです。 仕事や車の運転などの時は注意力が散漫になると思わぬ事故を招きます。 肝心な時には一心不乱になって集中して取り組むことが欠かせません。 さて不安やストレスに対しては、これとは別の生体反応が起きています。 まず「自律神経の交感神経」が興奮します。 交感神経が活性化されると、主にアドレナリン放出され、身体を覚醒させます。 アドレナリンは腎臓の上にある副腎の髄質から血液中に放出されます。 たとえば、心臓に働きかけて血圧や心拍数を高めています。血糖値も高めます。 さらにサイトカインが免疫細胞に緊急警報を発しています。 これにより平時では休眠状態の免疫細胞が活性化するのです。 サイトカインは炎症反応を起こします。 それ以外に「CRH回路」と呼ばれている反応があります。 ストレスホルモンの「コルチゾール」を出しているのです。 視床下部は数秒以内にホルモン(CRH)を放出し、すぐ下にある下垂体を刺激します。刺激を受けた下垂体は別のホルモン(ACTH)を15秒以内に放出し、今度は副腎の皮質を刺激し、数分以内にコルチゾールを放出させます。 コルチゾールは一時的に、血糖値を高め、炎症を抑え、気力を高める効果があります。コルチゾールは血流にのって全身を駆け巡り、「闘争」か「逃走」のためのエネルギーを供給する一方、炎症性サイトカインの放出を抑え、活性化した免疫反応を速やかに平常時に戻します。 免疫反応が過剰になることによって、身体に悪影響が出ることを抑えるためです。 コルチゾールは、最後に記憶中枢の「海馬」に到達します。 海馬は視床下部に対してこれ以上のコルチゾールを出さないように指令を出します。この流れで、短期の不安やストレス反応を速やかに収束するように作用します。 不安やストレスに対する脳の反応は、もともと短時間のうちに発生して、短時間のうちに収束するような仕組みになっています。 不安を感じてストレス反応が起きる状態が、長時間に渡って続く場合は問題が起きます。現代人はさまざまな不安やストレスに長時間さらされています。 これが心身に大きな負担をかけています。 コルチゾールに長時間さらされると、海馬自体のニューロンがダメージを受けて機能不全に陥ってしまいます。 その結果、コルチゾールは24時間放出され続けるようになるのです。 海馬が萎縮してくるとうつ病を発症するリスクが高まります。 コルチゾールが過剰に出続けると、炎症性サイトカインの抑制も効かなくなります。その結果、炎症性サイトカインが暴れまくり、全身の血管や臓器に慢性的な炎症が起こります。 心臓病、脳卒中、糖尿病、胃潰瘍、ガンなどにかかりやすくなります。 不安やストレスが短期間で収束する場合は大きな問題にはなりません。 それが長期になると心身に大きな負担をかけることになります。 3はセロトニン神経系の話になります。 これは明日の投稿課題とさせていただきます。

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