森田理論学習のすすめ

2023/08/26(土)06:20

イメージ記憶について

行動のポイント(565)

林成之氏のお話です。 プロ野球のバッターは、時速150キロものスピードで向かってくる剛速球を打ち返しています。 ピッチャープレートとホームベースの18.44mです。 ピッチャーが時速150キロのボールを投げた時、ホームベースに到着する時間は0.45秒です。 一方、プロの打者がバットをスイングするのにかかる時間は0.2秒と言われています。 また脳が体に命令を下してから実際に体が動くまでの神経反応には、約0.3秒弱を要します。 ほんの少しだけボールが到着する時間が短いために、理論的には打者が150キロのボールを打てないことになります。 しかし実際にはプロの打者は150キロ以上のボールを打ち返しています。 これはいったいなぜでしょうか。 「イメージ記憶」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 これは、物事をありのままに記憶するのではなく、その物事についてのイメージを自分の頭の中で作り上げ、それを記憶することを言います。 打者は、ピッチャーが投球動作をしている段階から、ボールが手元にくるまでの軌道のイメージを記憶していて、バットを振るのです。 バッティングの達人とは、過去に成功したイメージ記憶を膨大に蓄え、それをあらゆるボールに対して当てはめることができる人です。 (勝負脳の鍛え方 林成之 講談社現代新書参照) この話は私たちにも参考になります。 過去に成功したイメージ記憶を積み重ねていると、一見実現不可能と思われるようなことでも、脳は目的達成のために強力にアシストしてくれるということです。 扁桃体が「快」に振り分けてくれて、ドーパミンという神経伝達物質によって報酬系神経回路を駆け巡ることになります。 積極的、生産的、建設的、創造的な行動につながります。 子どもの時から興味や関心のあることに積極的にチャレンジして、成功体験を積み重ねることが大切になります。 大人になってからは、凡事徹底の生活の中で、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切になります。 成功体験は自信をもたらします。 自己肯定感を育てるためにも大切なものとなります。 しかしイメージ記憶は万能ではありません。イメージ記憶は過去の成功体験です。 それが今度の挑戦に通用するかどうかは分かりません。 イメージ記憶に基づいて行動したとしても、ほとんど失敗に終わります。 プロ野球の打者の場合は、7割から8割は失敗に終わります。 打者が150キロのストレートのイメージ記憶を取りだして準備しても、鋭く落ちるフォークボールを投げられると当てが外れます。 イメージ記憶に基づいて行動してもよい結果が出るかどうかは分かりません。 人生は自分なりの成功体験を基にして、予測や仮説をたてて、仮に行動するしかないのです。 成功するも失敗するも神のみぞ知るという覚悟が必要になります。 バッターの予想は、ほとんど外れますが、たまに良い結果が出ることがあります。 それが2割5分から3割いけば、プロとして飯が食っていけます。 失敗を恐れず、イメージ通りの球は確実に打ち返す練習を重ねておくしかありません。 ほとんど失敗に終わるのなら、挑戦しない方がましだと考える人もいます。 成功間違いなしと確信を得た後でないと、挑戦することは無謀であるという考え方の人もいます。神経質性格者は慎重ですからその傾向が強い。 これは認識の誤りとなります。 100%の成功を望んでいる人は、失敗した時こんな現実は受け入れられないと考えます。 この場合は、今度再びチャレンジする時に、扁桃体が「不快」に振り分けて、ノルアドレナリンという神経伝達物質によって防衛系神経回路が作動します。 潜在意識が自動的に失敗を呼び込んでしまうようになります。 プロ野球で成功するためには、多くのみじめな失敗を許容できる精神力が必要になります。 完全主義の人は無理です。減点主義ではなく加点主義の人が成功します。 7回失敗しても3回成功すれば一流打者として脚光を浴びることができるとひたすら信じている人は、プロの世界で飯を食っていけます。 仮説、実行、失敗、検証、再チャレンジというサイクルを回すことが肝心です。

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