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2024/10/25(金)00:12

『遊牧民、はじめました。』4

図書館で『遊牧民、はじめました。』という新書を、手にしたのです。 モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・ 大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪ 【遊牧民、はじめました。】 相馬拓也著、光文社、2024年刊 <「BOOK」データベース>より 地平線の先までずっと続くモンゴルの大草原。そこに生きる“悠々自適”な遊牧民。大自然に囲まれた彼らの暮らしを想像して、一度は憧れたことがある人もいるだろう。しかし、彼らの暮らしは本当に“悠々自適”なものなのだろうか。一度で150㎞にも及ぶ遊牧、マイナス40℃を下回る極寒の冬、家畜という懐事情をご近所に曝け出した生活ー。本書では、そんな遊牧暮らしのリアルを、長年、彼の地でフィールドワークを続けてきた著者が赤裸々に綴る。ときに草原を馬で駆け、ときに大自然に牙を剥かれ、ときに遊牧民たちにどつかれる日々の中で気づいた、草原世界で生き抜くための「掟」とはー? <読む前の大使寸評> モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・ 大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪ rakuten遊牧民、はじめました。 「第2章 草原世界を生き抜く知恵」で、遊牧暮らしを、見てみましょう。 p119~122 <2-3  遊牧暮らしのイロハ> ■束の間の安らぎ  こうして移動してきたツンヘル・ノール夏牧場には、およそ40世帯が方々からやってきて、ひと夏を過ごす。この場所にはウリャンカイ、トルグート、カザフの3民族が混在する、西モンゴルでも珍しい民族複合の大夏牧場である。毎日、美しい霊峰ムンフハイルハンの南麓を眺めながら、家畜と遊牧民の行動調査に終始する生活が、それからおよそ4ヶ月続いた。  毎朝家畜とともに家を出て、その後ろをついてゆき、高原でカバンにしまっていた揚げパン(ボールツォグ)と乾燥チーズ(アーロール)、チョコレート、クッキーなどで昼食を済ませ、18時前後には宿営地へと戻ってくる。ウマが借りられればありがたいのだが、つねに借りられるわけではない。遊牧民とウマは切っても切り離せないイメージがあるが、乗用できるウマがつねに宿営地付近にいるとは限らない。  馬群は夏のあいだはたいてい、高原や遠方の草地に勝手に草を食べに行ってしまうからだ。また、単純に貧困層で乗用のウマを持っていないことも多い。  モンゴル西部の草原暮らしとは、本当に気の休まらないことばかりである。遊牧民にしても、心にも、体にも、堪えるものがある。しかし、夏牧場で過ごす日々は、遊牧民にとって特別の意味を持っている。  7月の全国各地で開催されるナーダムも、遊牧民たちが心待ちにしている祭りで、県や村レベルだけではなく、集落やコミュニティごとでも開催される。夏牧場で出会う牧童たちの顔はほころび、普段は人当たりが悪く険しい顔つきの人たちも、どことなくその険が顔から抜けてほころんでおり、言葉や態度にも軽やかさがある。  それでも、夏牧場での滞在は短く、調査地で調べてみたところ平均滞在日数は77.1日(21.1%)でしかなかった。つまり、この心穏やかになれる貴重な時期は、1年間のうちたった1/5しかない。かじかむ寒さや、家畜が行き倒れる不安や、せわしない労働や喧騒から解放される束の間の憩いとして、遊牧民の精神文化のなかでは、なくてはならない癒しと救いの安寧の地として理想化されている。  都市や集落に暮らす定住者たちも、夏になるとわざわざ軒先に天幕を建てて、アパートや家屋の部屋から暮らしを移すことがいまもよく行われている。これは、すがすがしい夏牧場の暮らしを再現した、ささやかな伝統への回帰を意味しているのである。 ■遊動の極意  草原での生は五感をフル活用する生き方が求められる。 「なぜほかの遊牧民がいた場所にわざわざ移動してきたのだろう?」「なぜ、定まった日に移動するのではないのだろう?」。かつて遊牧民の移動に「合理性」を見いだせずに疑問を抱いていた遊牧民研究者には、おそらくその五感を用いた知覚は伝わらなかったようだ。  遊牧には、日本でいうヤマザクラ、コブシ、タムシバのような農諺木があるわけではない。移動のタイミングや移動地は、それまでの天候や雨量、雲行きや家畜の行動など、さまざまな日々の森羅万象に耳目を研ぎ澄まして決められる。  他人が放牧していた牧草地にわざわざきて幕営するというのも、ある意味では合理的な戦略でもある。その地点の牧草でヒツジやヤギの腹をふくれさせるというよりも、風雪をしのげる、蚊がこない、オオカミが少ない、草中毒を起こす草が少ない、ほかの牧童たちがいたから安全なはずだ・・・など、たくさんの理由が遊牧民目線だと見えてくる。  家畜自身が、そこに移動したがったからというのも十分にあり得る。家畜の行動そのものが、季節移動の判断に大いに影響することがあるのだ。 「ウマの行った方角に移動する」 「シカやアイベックスが移動してきたら、その場所は暖かい冬になる」 「晩夏にヒツジが幕営地から斜面を降りていったら、上空は寒くなる」 「ニガヨモギが草原に増えて高く成長すると、その冬は大雪の予兆」 「木の葉が樹木の下方から紅葉すると、その冬は非常に寒くなる」  彼らの言葉からは、自然環境に加えて家畜や野生動物の行動をつぶさに観察し、自らの行動判断に落とし込んでいるのがよくわかる。 『遊牧民、はじめました。』3:遊牧民の心 『遊牧民、はじめました。』2:遊牧民の心模様 『遊牧民、はじめました。』1:第一章の冒頭

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