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山口小夜の不思議遊戯

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2006年04月13日
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 フォォ──ン・・・・・・。
 落ちていきながら──豊は遠い咆哮を聞いた。

 なんだか小夜も、それに反応したようだった。全身を豊に預けてくる。
 なにか巨大なものが、すぐ目の前をよぎっていった。
 ゆったりと波をかきわけるひれ、何億年の時間をのったりのったり泳ぎ続けてきたような、その動きだけが透明な光の輪郭だけになり、怒涛の流れに身を翻弄されているふたりをかすめ過ぎていった。
 (また会ったね)
 金色の石のくじら。その背にのんびりと寝そべる少年の黒々としたやさしい目も、一瞬だけれど見えたような気がした。

 「・・・・・・。」
 小夜はなにも訊かなかった。
 魅せられた、子供に還ってしまった瞳で、豊が見つめているものを。
 やわらかく満ちてゆく月。
 きらきらと光の粒子だけをふりこぼし、西の沖へと幻が消えていったあと。
 少年も消えていた。

 気がつくと、ふたりは外に放り出されていた。
 真横には大きくえぐれた崖があり、開いた穴から濁流が眼下の楠川に向かって、どうどうと流れ落ちていた。

 土砂崩れを起こし、ちょうどもろくなっていたところから吐き出された形だ。ガードレールに引っかかり、ふたりが落ちずに済んだのは奇跡に近い。
 「すっご。相生の滝洞みたいだっちゃ・・・・・」
 唖然とする豊のかたわら、下を見て小夜が叫んだ。
 「うわっ、ゆたさん! 金が・・・・粒金が・・・・全部流されてる!」
 「なにて!?」
 発見した、と思ったばかりのおびただしい黄金のぶどうは泥水に混じり合い、ごろごろと川へ排出される。
 やがてピークを過ぎると、一粒も流れなくなった。

 「・・・・・・」
 「・・・・・・」

 脱力したふたりが、再びわれにかえったとき──。
 ふと身のうちに違和感を感じて、どちらともなく手のひらを差し出す。

 豊と小夜の手の中には、金環蝕のごとくに繊細な、小さな指環がひとつづつ、残されていた。






 本日の日記------------------------------------------------------

 小夜子はしあわせ者だ!

 もらっちゃった! もらっちゃった!
 このたび、@礼さまからイラスト頂戴いたしました☆
 実は小夜子、イラスト頂けたのは初めての経験です。舞夜じょんぬさまのサイトで「いただきもの」のコーナーを拝見するにつけ、素敵だなぁと思っていました。
 だから、うれしーい!

 「小夜子姉さんなら当ててくださると思ってました!そのとおりです、楓です」
 「すでにこの楓は、小夜子姉さまのものです」

 じーん。@礼さん、ありがとう!ありがとう!
 実は誰の肖像なのか伏せていただいたのですが、そりゃわかるって!
 あたしゃ『青木学院物語』を書いたモンですから(笑)。

 @礼さんがイメージ画を描くにいたった経緯を皆さまにもご説明しますと、

 ・テリーに似ている。
  たしか不遜でエラそうなキャラクターだった。
  →よってポケットに手を突っ込み、ふんぞりかえってポーズ。
 ・心臓が弱く病弱
  ならば体つきの華奢さを隠したいんじゃないのか。
  →だぼだぼのトレーナーにだぼだぼのGパン
 ・目鼻を描かなかったのは、描かないほうが楓らしいと思ったのです。

 今日、このタイミングで彼のイラストをいただけるとは・・・・何者かの意志がはたらいたとしか考えられん。
 鳥肌立ちました。

 イメージが合うかどうかご心配されていらっしゃいましたが、ストリート系の格好はどちらかというと英がしていました。楓はあれでいてわりと英国風トラッド系でしたが、あの性格から考えて、英のジャンルもトライしてみたかったんだけど、マネっこになるから絶対にプライドが許さなかったのだと思います。
 なので、この度@礼さんにこの衣装を着せていただいて、とっても嬉しいんじゃないかな。
 私からしても、キャップをかぶり、ジーンズをはいた楓の姿は新鮮です☆

 物語が次の物語を呼んだり、さらに新しい人の絆を引き寄せる──ことは『鳥取物語』を連載中に度々ありました。
 今、またこの感覚を目の当たりにして、この外伝を書くことは必然だったんだ、と確信しています。
 @礼さん、ありがとうございました!!!
 (ちなみに私としましては、往年の柳楽優弥くんのルックスに爆笑問題の太田光の魂が宿ったのが楓のイメージにもっとも近いと考えています:笑)。


 明日は、この外伝のエピローグ●祝言●です。
 事実上、『鳥取物語』のエピローグとも言えるのでしょうか。
 それにしちゃ、ずいぶんとドンチャン騒ぎな・・・・・(笑)。
 皆さま、長きにわたってこの物語をご理解くださり、深く感謝申し上げます。
 今後の予定につきましては、また明日にお伝えしたいと思います。
 これからもどうかよろしくお願い申し上げます。

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最終更新日  2006年04月13日 09時44分29秒
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