661920 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山口小夜の不思議遊戯

山口小夜の不思議遊戯

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

お気に入りブログ

yuuの一人芝居 yuu yuuさん
健康食品愛好会!! ゆうじろう15さん
Nostalgie solyaさん
ケーキ屋ブログ tom(o゜∀゜)さん
Ring's Fantasia -別… 高瀬RINGさん

日記/記事の投稿

バックナンバー

2024年10月
2024年09月
2024年08月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2006年06月30日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類

 豊は静にT家の主人が死んでいた現場の写真はないかと尋ねた。

 この弟はその昔、ある地方で発生した未解決の母子殺人事件で、一枚の写真と現場状況の説明を聞いて、殺人ではなく心中事件と見抜いたことがあった。静は後日医者に聞いてみると答えた。
 「殺しは現場が大事なんだ。現場の状況がかもし出す雰囲気が、事件の真相を語りかけてくるんだよ。T家の主人が倒れていたという応接間の細かい状況が知りたいとこだな」

 (なあおい。扇風機をかけっ放しにした死亡例って聞いたことがあるか?)
 静がふと思いついて聞くと、豊は黙った。そして一呼吸おいて意外なことを問いかけてきた。
 「ところでさしずさん、扇風機に吹かれてれば人って死ぬものなの?」
 静は一瞬絶句した。
 扇風機に吹かれるうちに人は全身機能障害から低体温に陥り、心臓麻痺で死に至る。死への順序はわかっている。だがよく考えると、静は“扇風機で死にかけた患者”および“扇風機遺体”の経験はない。長い医者生活の間、噂を耳にしたこともなかった。

 「おれも扇風機が好きで、うっかりかけっ放しで眠ることもある。でもこの通り」
 生きてるよ、と豊は続けたいのだろう。つけっ放しの扇風機は家族などが止めたはずだ。
 こういうふうに、豊は素朴な疑問から推理に入る。疑問に解答を得て、次に進む。
 今回も、扇風機を原因とする死に医療行為の専門家であるこの兄が出会っていない以上、扇風機に吹かれていて人が死ぬかどうかは豊には判断できなかった。ゆえに、扇風機のつけっ放しによる人体への影響に関心を持つというのが、彼なりの推理の順序になるのだろう。

 あらためて訊かれると、静も扇風機と人の死の関係に自信を持って答えられない。法医学の教授に細部にわたり、質問を詰めなければならないと考えた。
 「扇風機はたしかに動いていたんだね?」
 豊は自分のおやつを食べてしまったのがいずれの兄かを突き止めようとするかのような尋問口調で尋ねてきた。
 動いていた。医師は押されている「強」のボタンを確かめて「停止」ボタンを押した。
 「首は振っていなかった」
 (そう聞いている)
 「扇風機と死体は距離にしてどのくらい離れていたの」
 (それは・・・・)
 静は老医師からそこまでは聞いていない。だが、非常に重要な質問だと感じた。会って、確かめなければならない。
 「応接間の電気はついていたのかな」
 (どうだろう・・・・)
 「その事件、いや事故かもしれないけど・・・・いつの話?」
 (それは追及しない約束になっている)

 この“冷たいカルテ”を打ち明けられる時点で、静は老医師に何年前の症例かと聞いている。だが、医師はそれには一切答えないことを条件に話の穂を継いでいた。静の予想では、7,8年、長くても10年以内の事件だと思った。このカルテが殺人事件なら時効は十五年以内であり、T家の夫人の罪は成立し、同時に医師も処罰の対象になる可能性があった。発生の年月日を言わないのも当然である。医師は事実だけを知りたいのだ。

 豊もすぐ事情を呑み込み、深く追求せずに話題を変えてきた。兄に扇風機をかけっ放しで寝たことはないかと訊いた。
 (ないな。ぼくは扇風機が嫌いなんだ)
 「おれはよくかけっ放しで寝るけど、目は覚めるよ。くしゃみが出たりしてさ・・・・寝込んじゃったT家の旦那さんがよくわからない」
 (酒を飲んで帰ってきて、風呂のあとまたビールだ。かなり酩酊してたんじゃないのか)
 「考えられるな。缶ビールの中身は検査してないよね」
 (検査してないと思うがな)
 「しずさん。なんで目を覚まさなかったかというのが、この件の鍵じゃないかと思うよ」
 (そうか・・・・)

 生返事になったのは、弟の視点とズレを感じたからだ。
 T家の主人が覚醒しなかったのは過労に加えて、飲酒、それに睡眠薬を盛られたかのいずれか、またはその複合的な理由によるものに違いなかった。鍵は夫人に殺意があったかどうかに思えたのだが、豊はそう見ていないようだった。
 いずれにしても、静は再度、老医師に会わなければならない。弟から宿題を課せられたのである。

 (さて、そっちの尾行の話に戻るが・・・・ともかく、おまえはいちいち危なっかしくていけない。差し当たって必要と思われる書類を留学生楼宛てにEMSで送っといたからな。友人の法医学者から特別にコピーさせてもらった、警視庁の尾行要員教習マニュアルだ。ちゃんと目を通しておけよ)
 「警視庁じゃざっと読んだくらいで素人が尾行要員になれるもんなのかよ。いいかげんだな」
 (文句は読んでからにしろ!)
 「わかったってば!」
 (おい。ひとつだけ注意しておく)
 「んん?」

 面倒臭げに相づちを打つ豊を恫喝する勢いで、静は一気にまくしたてた。
 (虫も殺さない顔だからって油断するなよ。こういう女にかぎって偏執狂なものだ。そうじゃなくても人に付きまとって悪事を為す性悪なのだ。兄へのこまめな連絡を欠かさないようにな!)←しずさん、単にゆんゆんに電話してもらいたいだけなんじゃ・・・・。




                      次回交信更新は7月2日(日)。
                      ●秒殺●です。何にコロされた!?


 
 オットによる本日の日記-----------------------------------

 
 DVDのリモコン、見つかったーーーーー!!!!!

 平和よありがとう 鳩よ飛べ


                          参考文献はインドなんて二度と行くか!ボケ!!
                          じゃなかった→こちら


 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ
  1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!

 ◆最近暑過ぎ。ぼくの友人が訪ねたインドな気分にちょっとならないか。
            





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年06月30日 11時47分12秒
コメント(7) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X