蚊帳の外
「蚊帳の外」という言葉が、気になる。だれもがそうした立場になった経験を、持っていることだろう。私にも、数え切れないほどの実体験がある。蚊帳の外って、当事者以外になること。近頃の若い者に「蚊帳」といっても、見たこともないだろう。私の幼いころは、蚊帳を吊ったなかで寝ていた。蚊の侵入を防ぐための空間は、私にとって居心地のよいところだった。蚊帳の外はどうなのか。人血に飢えた蚊が、獲物をねらって飛び交っている。蚊帳の外より蚊帳の内の方が、はるかに好ましい世界だった。それゆえ、寂しいところ、辛いところという意味を与えたのだろう? わからない。新聞のコラムを読んでいて、引っかかってしまった言葉だった。「新潮日本語漢字辞典」で調べてみたが、あまりピンとこない。だれか語源を教えて。「カッセット文藝講座全12巻・日本の近代文学」を入手。本日から聞きはじめる。第1回は「吉村昭が語る森鴎外ほか」である。しみじみとして、味がある。