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藤の屋文具店

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妖星ゴラス

             妖星ゴラス
                          昭和37年作品

 惑星探検に出発した日本の宇宙ロケット「はやぶさ号」は、予定を変更
して、発見された巨大質量星の調査に向かうが、その強大な引力に負けて、
呑み込まれてしまう。刻一刻と最後の時が近づく船内で、冷静に調査任務
を遂行する隊員たち、送られたデータは、この巨大質量星が、地球の軌道
と交差し、壊滅的な打撃を地球に与えるということだった。

 当時の宇宙ロケットの航行シーンというのは、たいていエンジン音がご
うごうとうなっているものであったが、この映画ではきちんと慣性航行に
なっているところがエラい。しかし、超巨大質量星「ゴラス」の引力に捕
まったとき、ロケットの進路を180度転換して後進をかけたのは、あま
りにもマヌケである。ここは、さらに加速して重力加速度も併用して軌道
をコントロールしてUターンする、いわゆる「フライ・バイ」航法をとる
べきであることは、少なくとも宇宙飛行士にとっては常識である。はやぶ
さ号の遭難は、艇長の判断ミスによる人為的事故だ。

 宇宙ロケットの設計についても、現代の常識ではいろいろと奇妙な点が
見受けられる。まず、異様に内部が広い。これ、富士山嶺宇宙港から地球
の重力を振り切って出発した打ち上げ型のロケットなので、かなりの比率
の燃料を消費することによって宇宙に出るため、化学燃料ではこんな贅沢
は許されるはずがない。次に、船内に重力がある。重力波を独立して作り
出す技術があるなら、当然、ゴラスの引力圏から容易に離脱できるわけな
ので、これはおかしい。

 さらにユニークなのは「宇宙潜望鏡」。潜水艦のアレが、宇宙ロケット
についてるの。潜水艦の場合は、耐圧船殻の中から水面を見るために、あ
あいう筒を水面に出すわけだけど、宇宙船なら、コクピットに窓をつけと
けばいいわけだ。まあ、あえて理由をつければ、何かに衝突すると危険な
のでコクピットは船体の中央に置いて、衝突して破損しても交換の効く潜
望鏡を使用する、という設計なのかも。

 さて、ゴラスの脅威から逃れるために、人類は南極大陸に巨大なロケッ
トを多数取り付けて、地球の軌道を変えるわけだが、これも怪しい。海水
中の三重水素による核融合、は良いとして、何を噴出するのか。ロケット
の原理は、質量を高速で噴射して、その反動で加速度を得る、というもの
だから、核融合による熱エネルギーで、何かを宇宙空間に噴出しなきゃい
けない。海水? さらに、核融合ロケットエンジンからの噴出物は、宇宙
空間にダイレクトに放出されないと、地球は推進力を得られない。現実の
地球には大気があるので、地表でロケットに点火したって、大気が対流を
起こしてそれでおしまいである。

 意地悪なチェックはこれくらいにして、ロケット工事現場に出現する怪
獣マグマは、ウルトラQの「東京上空SOS」に出演したトドラ、国連の
調査機は、初代ウルトラマンの科学特捜隊のジェットビートルだったりし
て、懐かしい。また、このころの東宝SFは、劇中できちんと物理的な計
算を提示していて、この中でも、地球の質量やロケットの加速度と力積な
どをさらりと方程式を書いて説明しているところが、素晴らしい。宇宙パ
イロットの訓練所が、まるで予科練なのは笑っちゃうけど。。。。




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