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2004年12月10日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
それは一瞬の出来事であった。


その時の福は、アパートの駐車場で
楽しそうに遊んでいた。


今日は天気も良く、気候もさほど寒くなく、
絶好のお外遊び日和であった。


しかし!


そんな静かな住宅街の静寂は
福の泣き声によって、かき消された。


私から押さえつけられ、
口の中に指をこじ入れられ、
異物をかきだされているからだ。


私が福の口から、かきだしているものとは・・・・




この、数分前・・・・



アパートに住む何人かの友達と、
楽しそうに遊ぶ福。


その姿が車の陰に隠れ、
一瞬、私の死角となった。


ほんの20秒から30秒の間だったと思う。


車の後ろに回った福の姿が、
車の下からのぞく、足で確認できる。


しゃがんだ。


そして、止まった。


石でも拾ったのであろうかと、
慌てて車の後ろへ歩み寄る。


今時期の福は、何でも口に入れたがる。


それが石であろうと、草であろうと・・・。



もし、石を拾ったのであれば、
間違いなく、口へ運ぶことであろう。




しかし、この時、
福の手にしっかり握られていたものは・・・。



タバコの吸殻。



そして、次の瞬間。


その白い棒は、福の口の中へと
入っていく。



私が来たことに気づいて、逃げようとする福。



そして、事もあろうか、タバコを歯でむしり、
更に尚、口に入れようとしているではないか!



急いで福の側まで近寄った私は、
福の手を払い、タバコを落とす。



有無を言わさず、口の中に入った、
葉っぱと紙をかきだす。


一粒だって口の中に残すことは許されない。



私の指を、福の口に押し込み、
かきだす。



驚きの余り、私の手を噛む福。



血が出る。



それでも、私はやめない。



すると、今度は福の口の中が切れ、
血がにじむ。



泣き叫ぶ福。



事の異変に気づき、周りのお母さんたちが
走り寄る。



福の口の中に手を入れ、
懸命にタバコの葉っぱを取り出す私。



大泣きして、悲鳴を上げ、私の呪縛から
逃れようと、もがく福。



とりあえず、口の中の物は全て
かき出した。


しかし、福がむしったタバコの破片は、
2~3cmはあったであろうか。


もし、これが体内に吸収されていれば、
間違いなく、致死量に相当する。


その足で、泣き叫ぶ福を抱きかかえ車に乗る。


すぐ裏の病院まで行くために。


チャイルドシートに座らせても、
大泣きしている福。


歩いても3分くらいしかかからない病院。


車で行ったのだから、1~2分の出来事であろうか。


しかし、私は、
どのように病院に行ったのか、
ハッキリと思い出せないほどに、
取り乱していた。


この季節柄、風邪を引いた子どもや、
インフルエンザの予防注射に来たであろう子どもなどで、
院内は混雑していた。


まだ泣き叫んでいる福を抱え、
受付にたどり着き、タバコの誤飲を
伝える私。


尋常でない様子の私たち親子は、
一刻も早いほうが良いとの判断で、
すぐに診察室へ。


「5分くらい前にこのタバコを・・・・」


ろれつが回らないほど、動揺しながら、
手に握り締めていた、福が食べたタバコのかすを
先生に見せる。


「胃洗浄をしましょう」


と先生。


看護婦さんが3人ががりで、
タオルにくるんだ福を押さえる。


泣き叫ぶ福。


先生は福の鼻から細いチューブを入れ、
生理的食塩水を流し込む。


何度なく、この作業は繰り返された。


私は、処置室のベンチで、震えながら、
泣き叫ぶ我が子を見守り、
祈ることしかできなかった。


「神さま、どうか、どうか、福の命を助けてください!!!!」


そして、自分を責める。


「どうして、福の後ろについて、安全を確認しなかったのだろう」



作業はまだ続いている。


小さな体を看護婦さんに押さえつけられながら、横たえ、
泣き叫びながら、私の方を見つめる福を
見たとき、


私は涙を流さずにはいられなかった。


福、本当にごめんね、本当にごめんね


こんなに苦しい思いをさせてしまって!!!



やっと、作業は終わる。

私は福のところへ走り寄り、
この手に抱きかかえることを許される。


苦しかったのであろう。

しばらく嗚咽は止まらない。


診察室へと呼ばれる。


「胃洗浄の結果、1度目は少し気になる色がでましたが、
2度目、3度目はきれいでした。
恐らく、タバコは飲んでいなかったと思われます。」


この結果に、私は思わず涙ぐむ。


緊張がほぐれたのと、安堵した気持ちが
一気に押し寄せたのであろう。


先生からの厳しいお灸を据えられて、
泣きながら頷く私。


その後、用心のため40分ほど、待合室で様子を見て、
再度、診察してもらい、
異常がないことこを確認して、やっと家に帰ることができた。


心配してくれた、同じアパートのママさんたちに
無事を報告する。


本当に良かった・・・・。


その後、福はというと、
食欲もあるようで、夕ご飯をタップリ食べ、
お風呂でゆっくり温まり、
おっぱいをしっかり飲み、
今はグッスリ眠っている。


心配なので、ちょこちょこ様子を見に行く。


顔色は変わっていない。


ちゃんと息もしている、呼吸も乱れていない。



本当に良く眠っている。



良かった・・・・
本当に良かった・・・・・。


ダンナさんも今日は早く帰ってきてくれた。


全てが終わって脱力状態の時に
電話してので、気にしていてくれたようだった。


「今回のことは福☆母が悪いところもあったけど、
福☆母が早く気づいて、対応したことは良かった。
一歩間違えれば取り返しの付かない事になっていたけど、
不幸中の幸いだったね。」


と、憔悴しきった私を慰めてくれた。


本当にその通りだと思う。


決して他人事ではない、今回の誤飲に
私は本当に反省している。


反省することができたのだから、良かったのだ。


我が家での誤飲は、一度体験し、
二度と起きないように、管理体制を
整えていたが、まさか外でこんなことになるなんて、
油断していたとしか、言いようがない。


本当に福、ごめんね・・・


こうして、また福を抱くことができて、
本当に嬉しいよ。



福を、二度とこんな目にあわせないことを、


私はここに誓いたいと思う。



福を助けてくれた病院の先生方、
心配してくれたアパートのお母さん達、
福の父親であるダンナさん、
そして、私の祈りを聞いてくださった神様、


本当にありがとう。





そして、最後に。



これを読んでくださった、愛煙家の皆さま。


どうか、タバコのポイ捨てだけはしないでください。


こんなに、小さく儚い命を、
奪ってしまうかもしれません。


どうか、お願いします。


私も、今後は、最新の注意を払って、
タバコの吸殻を拾います。






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最終更新日  2004年12月11日 01時53分44秒
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