029766 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

心の叫び~~モントレーの山奥から

心の叫び~~モントレーの山奥から

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2011.04.15
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
髭剃り後のクリーム」   2224字

少し暑いから車の窓を開けて外の涼しい風に当りたいけど、我慢している。日曜日の朝9時40分、嫁はんとフリムン徳さんが教会へ向かっている車の中。仏教徒である私と嫁はんはもう6年ほど、ほとんど毎日曜日、仏教徒なのに、カソリックの教会へ行っている。家から、教会までだいたい12、3分かかる。

 教会へ行く朝は必ずシャワーを取り、髭を剃って、髭剃り後のクリームを顔に塗らない、耳たぶに塗らない、袖口に塗らない。禿かけた頭に塗る。アホなことをすると思いまっしゃろう。嫁はんも笑うが私はかまわん。それには私だけの秘密の理由がおまんね。でも、クリームってたまに塗るとええ匂いがしまんなあ。昔、大阪で商売をしていた頃、よう、飲みに行った北新地の飲み屋の女の子を思い出して、恋心がよみがえりそうなええ匂いや。大工時代にいつも私の周りに匂っていた、材木の香りとはえらい違いや。2002年までロス、シアトルで26年間大工をしていた私には材木の香りが染み付いてまんのや。

? この髭剃り後のクリームは香水と違って、一時間もすると匂いがなくなる。それならば、香水をつけたらええと言うでしょうが、大工をしていた5年前までは、香水よりも肉体労働後の男の汗の匂いが、男の香水やと思っていた男なのだ。男性用の香水の名前なんか知るはずもない、ましてや買ったこともない。ねじり鉢巻で頭の禿を隠した大工が、化粧品売り場なんかに、恥ずかしくて、寄り付けるかいな。嫁はんも化粧にはこだわらん性質だから、香水とはお互い縁の遠い人生なのだ。

 でも、何かの本で体臭のことを読んだことがある。フランスのあるところでは
親しい人や家族に久しぶりに会う時は1週間ぐらい前から風呂に入らないで、体臭を残しておくそうだ。そのことを読んで、昔私の小さい頃、香水というもののなかった生まれ故郷の喜界島の人たちのいくつかの体臭が思い出せそうな気がした。親父が畑仕事から帰ってきた時の頭に巻いていた手ぬぐいのあの匂いや。脳だけやない、鼻にも記憶力がある。記憶と匂いは何十年経っても思い出せるモンやなあー。それにしても香水で有名なフランスが体臭を香水代わりにしているとは面白い。
? 私が向かっているのは、カリフォニア・モントレー・ラックウッドの山の中の、大きなオークの林に囲まれた小さなカソリックの教会だ。建物の外は、白く塗られているが、中は古い木肌のままで、古くなった木独特の強い匂いが教会の中に漂っている。椅子に座って周りを眺めていると古臭い質素な気持ちになる。友達のバブとアルビラがこの教会のメンバーだ。7年ほど前に知り合ったこのアメリカ人夫婦の家に、たまに行く時は、ほとんどが英会の勉強みたいなものだった。当時、嫁はんはほとんど、英語がしゃべれず理解できなかった。ある日、「私達は仏教徒ですが、英語の勉強のために教会へ行ってもいいですか。」と彼らに頼んでみると大歓迎してくれた。
? この教会にいつもくるメンバーは15、6名で、教会の建物のように年とった夫婦達だ。皆、親切な白人だ。東洋人のしかも仏教徒の私達でも、なんの抵抗もなく打ち解けることができた。午前10時ピッタリに始まるこの教会の礼拝に遅刻する人はほとんどいない。大工時代にアメリカの職人たちが約束時間を守らないのにあきれていた私には、不思議なくらいだ。  教会に行く時間は信号機の赤信号を守るように絶対に守る、キリスト様は信号機を持っているようである。
? この教会には専任の牧師がいない。メンバーが、交代で牧師役を勤める。少ないメンバーだが、その中の6名ぐらいがにわか牧師として、礼拝をし、説教をする。夫婦とも牧師役をできるメンバーもいる。ローマ法王が着る白いガウンみたいなのを着て、すました顔で聖書を読んで、立派に、たまにはニヤニヤしながら礼拝を勤める。足元を見ると、ジーパンとスポーツシューズが見える。ただの普段着の上に、牧師の白いガウンを引っ掛けただけなのだ。なんとも、ほほえましく、親しみがわく。
? 教会での自分の席は暗黙の了解で決まっている。私と嫁はんはバブとアルビラの隣で前から3番目の椅子だ。6人掛けの長い椅子が真中の通路をはさんで両側に10列ほど並んでいる。長椅子の背もたれの後には英語の聖書が入っている。礼拝が始まるとにわか仕立ての牧師が、聖書の何ページを開けてと言い、そして読み始める。また、皆で読むことある。英語の聖書は、易しい英語で書かれている。それにしても、仏教の本は、難しい言葉ばかりで書かれていて、分かりにくいと思う。
? 説教が終わると、木製のサラダ用の皿みたいなものを持って、お布施を集めに来る。私達は毎回キャッシュで5ドルを入れる。メンバーの人は、ほとんどが小切手を入れる。そのお布施の額は、自分の気持ちだけでいいということになっている。
? 礼拝の最後には、椅子から立って、通路で、全員、互に「ハグ」をする。男同士は握手、男と女、女同士はすべての人と「ピース、ウィッズ、ユー」と言って、抱き合って「ハグ」する。白人のおじいちゃんもおばあちゃんも、私よりは背が高い。白人のおばあちゃんとハグをすると、おばあちゃんの鼻の下に、私の頭が来るのだ。まさに、この瞬間のために、私は髭剃り後のクリームを禿げかけた頭に塗り、その匂いを風で吹き飛ばさないために、暑くても車の窓を開けないで辛抱したのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.04.15 20:26:19
コメント(0) | コメントを書く


PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

喜界島4413

喜界島4413

Freepage List

Calendar

Favorite Blog

国民は好きなだけ稼… New! Mrs. Lindaさん

madorigaru mado7895さん
おとこの楽天活用術… にぃさん★さん
エビケン読書録 茅ヶ崎えびさん
サヨコの土壇場日記 土壇場サヨコさん

Comments

うぬつっつ@ Re:「男の名前で生きていきます」(12/24) 久しぶりに徳さんが夢に出てきてブログ見…
フリムン徳さん@ Re:「男の名前で生きていきます」(12/24) 禿げ1723さん、おおきに、ありがとう…

Headline News


© Rakuten Group, Inc.
X