ふつうの生活 ふつうのパラダイス

2009/12/05(土)08:22

『スラムドックSミリオネア』

外国映画 さ行(20)

人生に正解はない。 今年の映画の中でもかなりの話題作。見たいと思いつつ、いままでかかった。 インドのスラムで育った無学のはずの青年ジャマールがクイズミリオネアに出場し、全ての問題を正解し、巨額の賞金を手に入れる。 スラムで育った彼はなぜ勝利できのか。 クイズミリオネアは、日本でも、放送されていて、司会はミノモンタですね。 日本では、全ての人が義務教育なので、ここまで、「教育のない人」と差別的な言われ方をすることはないし、出場者の学歴や出自を取りざたされることはないのに、この映画では、随分司会者があてこすりつづけるものだと、関心しちゃってましたが。それを誰も、批難しないのも、インドというお国柄なのでしょうか。 ふだんめったにみることのないスム街やインドの暮らしぶりがわかって、興味深かったです。 正解すれば、大金2000万ルピー。でも、一問でも、まちがえれば、せっかく獲得したはずの賞金を失う。クイズの進行と平行して、主人公ジャマールの人生が描かれていく。人生もまた、クイズのようにそのつど、いくつかの選択肢があり、正解を選び取っていかなければならない。だけれど、人生には絶対の正解はないし、どれを選らんでも、それが必ず正解とも限らないし、どれも正解であることもある。 私たちもまた、ジャマールのように、人生の中で、選択肢に迷う。受験校はどこにするか。何の職業を選択するか。自分にあった仕事や、学校や学部はどれか。結婚する相手は誰がいいのか。どれが正解か、クイズのように絶対のものはないし、ずっとあとまでいっても、正解はわからないまま。クイズのように、すぐに正解を教えてはもらえない。 ジャマールにとっての正解はラティカだった。ラティカと出会い、一緒に過ごす。悪徳集団に拉致され、逃げ出した時、ラティカと、はぐれてしまう。もう一度ラティカを探し出し、救い出し、けれどまた、別れる。ラティカとの人生がジャマールにとっての正解だけれど、なかなかラティカを選び出せない。 親を失ったジャマールと兄サリームは、人をだましながら生きていくけれど、やがてジャマールは、きちんと働いて生きていく道を選ぶ。けれど、兄サリームは、割のあわない安い労働より、悪いことをして金もうけをする人生を選んでしまう。 ラスト直前でラティカを逃がすという選択肢を選んだサリームは、仲間に殺されてしまう。では、彼の最後に選んだ選択肢は間違えていたのだろうか。ラティカを逃がさなければ、死ぬことはなかったのか。でもたぶん、この時、ラティカを逃がさなくても、いずれ彼は殺されてしまったのではないかと思う。彼は、もっとずっと人生の手前の段階で、選択肢をまちがってしまったのだと、思う。 クイズを正解し続けていくジャマールを、番組を観るインドの人たちは、応援していく。(日本だとやっかみがひがみのほうが多いんじゃないかと思いますけどね。)がんばれと、彼にいう老婆。全てのクイズに正解したジャマールは、大金の賞金を獲得し、ラティカと再会し、ラティカという彼の人生の正解も、選び取ることができる。 どれが正解なのか。でも、人生の中にいる私たちはなかなかどれが正解なのか、分かりにくい。正解を選び取る秘訣はなんなんだろう。正解をみあやまらないためには、どうすればいいんだろう。 常に自分の本音を忘れないこと。人に助けてもらうこと。周りを味方にできること。目先の欲に惑わされないこと。ずるをしないこと。正しく生きていくこと。 映画の中のエピソードを見ていくと、こんなところかな。 でも、やっぱり、正解を選ぶ出すのは、むずかしい。 はあ。子どもの人生の選択肢にまで悩まなきゃならないなんて、親って大変。 本人がささっと選んでくれればいいのになぁ。 ラスト、登場人物全員でのインド映画らしいダンスが楽しかった。  ・スラムドッグ$ミリオネア@ぴあ映画生活 

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