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「英霊とゆられまぶしき鱶の海」。1941年12月8日に太平洋戦争が始まって,中国からフィリピンへ転戦した,俳人の句です。作者は鈴木六林男(スズキムリオ)が戦場で詠んだ句,といいます。
すでに「英霊」に変わり果ててしまった兵士と,サメの泳ぐ海をともに漂うありさまでしょうか。あるいは,作者は「英霊」を乗せた船の上にいるのでしょうか。 太平洋戦争中に船の沈没で溺れ死んだ日本の兵士や船員は,40万人以上ともいわれます。無謀な作戦にかりだされた兵士や,兵員を運ぶ商船の乗組員が,連合軍の攻撃にさらされました。 「鱶の海」の鱶は米軍の潜水艦だろうか。そんな想像もできます。 戦場で兵士が飢え死にし溺れ死んでいる一方,本国の軍幹部は次第に国民の不信をかっていきました。「世の中は星といかりと闇と顔。ばか者のみが行列に」。庶民の間ではやった歌だそうです。 星は陸軍,いかり(碇)は海軍,闇は闇取引,顔は顔役です。 空襲も激しくなって生活が苦しさを増すばかりなのに,軍人や高級官僚,大資産家はコネや顔を利かせ,米にも酒にも不自由しない。 乏しい物資を求めて配給の行列に並ぶ,庶民の恨み節です。 時代も社会も変わりましたが,似たような事情を今もみます。自衛隊をイラクやインド洋に送り,戦争と軍拡を機会にコネや顔で甘い汁を吸う防衛省幹部。政治家もあやしい。 鈴木六林男が戦後,夜桜見物のときともす花篝を詠んだ句も,心に残ります。 「花篝戦争の闇よみがえり」 ↑ いつの時代も,戦争で庶民や庶民の生活が犠牲になるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008年01月08日 16時51分20秒
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