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テーマ:Jazz(1968)
カテゴリ:おすすめCD
こんにちは、楽器人間です。
本日ご紹介するのは、ジャコ・パストリアスの肖像です。 70年代中盤に現れた、所謂天才ベーシストの誉高い方です。 この、人を形容する時に使う天才という言葉の持つ強度は、21世紀に入ってからはかなり弱体化しているかのように思えますが、いるところにはいるものです。無論この方、ジャコ・パストリアスもその範疇に入ると思います(20世紀の人でありますが)。そして、本作は、彼の初リーダー作でもあり、当時人気爆発?のウェザー・リポート在籍中の 1976年に録音されています。 余りにも有名な一曲としては、初っ端の『ドナ・リー』でしょう。この曲は、もともとチャーリー・パーカーが好んで演奏していましたが、実際の作曲はマイルスだったという逸話?もあります。このジャズ史におけるバップの難曲をジャコは自身の題材として採用したのでした。一般の評価としては、この曲をベースとパーカッションのみで奏でようとした着眼力と演奏の斬新さが共にぶっ飛んでいたということでした。 結局、21世紀現在、マジメにフレットレス・ベースを習得しようとする者にとって、いい意味で踏絵だったり、意地の悪い言い方をすれば、否が応にもどこからともなく聴こえてくる断末魔の呻き声のような作品となってしまっているかもしれません。 また、彼を引き立てるサイドメンも豪華絢爛、ハービー師匠を筆頭にブレッカー兄弟!!、サンボーン、ショーター、サム&デイブ等々、涙涙の米国第一級ジャズ&ソウルミュージシャンの面々です。 奏法的には、約30年掛かっていろんな人がいろんなアプローチで彼の奏法を解析してきました。この辺は本当にたくさんの教則本、DVD、雑誌特集、自伝などが証左と言えるでしょう。その結果、ある一定数のエピゴーネンを輩出することになったのは当然の帰結でもあります。実際、パッセージにおける速度そのものについては、ジャコより優れている輩も存在しおります。 しかし、音楽的にはどうなのだろう?という、本質論というか基本的な快感原則に遡って考えてみますと、これだけ、音楽ソフトウェアが充実した時代にパッセージの早さやハーモニクス奏法の理論云々を彼自身の残した演奏から単に抽出しても、高度な演奏能力の獲得が第一義になるばかりかもしれません。 つまり、この手の奏法や理論は、既に約30年掛かってベース奏者を中心に人口に膾炙し、コンポーネント化されてしまって、適切に整理されて、ばら売り可能となった(コモディティ化した)時点である一定の役割は終えたとも言えるでしょう。 となると、サウンドクリエーターとしてのジャコの特殊性というか希少性に論点は移らざるを得なくなりますね。基本的なリズムに対するアプローチや独自のタイム感(グルーブ)は、そう簡単にコピーできるものではありません。この基層をベースに空間芸術としての音楽を拡張しようとしたジャコの才能が最強であったということが改めて浮かび上がってきます。 本作においてそれを象徴するのは、まず一曲目のドナ・リーで衆目の度肝を抜き、最後の曲(九曲目:忘れ去られた愛)ではベース自体も弾いていない(ストリングスアレンジメントのみ、ピアノはハービー・ハンコック)というか、敢えて弾かないところはしてやったりという確信犯的な意思を感じさせてくれます。 [CD] ジャコ・パストリアス(b)/ジャコ・パストリアスの肖像 +2(Blu-specCD2) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.01.30 17:36:14
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