カテゴリ:石垣島
2021/6/14(月) 9:32配信 八重山日報
沖縄独特の食文化である「あちこーこー豆腐」(温かいままの島豆腐)の管理が、食品製造過程の国際的な衛生管理基準HACCP(ハサップ)が1日から完全義務化されたことで難しくなっている。HACCPにより、豆腐は55度以上での納品が求められ、納品後は2時間以上経過すると撤去しなければならない。豆腐業者からは「温かい豆腐の販売をやめた業者もいる。沖縄の伝統的な食文化の存続が危うい」と懸念の声が上がる。 石垣市大浜にある(有)豊見山食品(豊見山修司代表取締役)は、豆腐や油揚類の製造・販売を行う。HACCPが義務化された1日は温度管理に慣れず、あるスーパーには1丁も納品できなかったという。2時間しか店舗に置けないことから現在は製造量を半分に減らし、配達時は豆腐を発砲スチロールに入れて温度維持を図っている。 豊見山社長の妻・麗子さん(62)は「保温を徹底するような高額な設備は買えない。あちこーこー豆腐がなくなる日は近いのではないか。せめて3時間は店舗に置けるようにしてくれたら」と肩を落とした。 100度で炊かれるあちこーこー豆腐だが、にがりを打ったり重りを乗せて汁を抜く工程を経て、カットする時点では70度あるかないか。乾燥させないように水をかけて袋に詰め、値段を貼って配達の準備を終えるころには60度を下回ることがほとんどだ。納品時に55度を保つのはギリギリだという。 1日3回の配達に加え、2時間以内に売れなかった豆腐は回収しなければいけない。作業スタッフの負担も大きい。 市内のスーパー3店舗によると、HACCP導入以前はどの店舗も入荷後3~4時間は購入できる状態にしていた。現在は入荷時刻をあらかじめ設定し、販売終了時刻をポップで告知するなどして対応している。 ある店舗の衛生管理担当者は「豆腐業者も工夫をこらして配達している。お客さまにもHACCPを理解してもらい、早めに購入して食べていただけたら」と話した。 HACCPは2018年の「食品衛生法」改正法案可決に伴い義務化が決定した。県豆腐油揚商工組合(久高将勝代表理事)によると、当初は温度基準の規定はなかったが、最も危惧される食中毒要因のセレウス菌繁殖を避けるため、手引書には55度という温度が記載された。 導入以降、各業者は保温板や蓄熱剤を使って温度管理を図っているが、移動販売やパック売り豆腐のみの販売に切り替えた業者も出ているという。 同組合の担当者は「県内の豆腐業者に電話して状況を確認している段階。どのような保温方法が一番効果的か、組合としても模索している」と話した。 同組合は早くて今月末に、消費者と小売流通に対する新しい基準の周知や島豆腐製造事業者への保温用設備配布の支援を目的としたクラウドファンディング「あちこーこー豆腐保存プロジェクト」を開始する。 豊見山食品のスタッフ・一村暁子さん(40)は消費者に向けて「石垣で作られる豆腐を購入して、窮地に追い込まれている製造業者を応援してほしい。温かい豆腐の販売は全国で沖縄だけ。HACCP導入をきっかけに、その価値を再認識してもらえたら」と訴えた。 石垣島(日本の島へ行こう) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/06/14 10:01:20 AM
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