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酔眼教師の乱雑日記

流通政策の再検討

             流通政策の再検討〔Ⅰ〕

1.問題の所在
 わが国の流通構造は流通政策の転換によって大きく変化しようとしている。
 平成元年9月の第1回会合から翌年6月の最終報告の公表に至るまで、5回に渡って開かれた日米構造協議は、両国間の貿易収支の不均衡を生みだしている広範囲な障壁を除去するために、相互に制度、構造、慣行を見直し、改善することを目的としていた。アメリカ側が日本に改善を要求した主たる課題は、①貯蓄と投資、②土地政策、③流通制度、④系列取引、⑤排他的取引慣行、⑥価格メカニズム、の6つであった。
 流通制度および取引慣行に関するアメリカ側の主張は、日本における流通系列化、流通上の商習慣がアメリカ製品の日本市場への参入障壁になっており、それは競争政策が不十分であり、過度の政府規制に起因しているということであった。とくに、政府規制のなかで、「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律」(以下、「大規模小売店舗法」という)による大型店の参入規制は、小売業者間の競争を弱め、競争によって淘汰されるはずの多数の零細小売業者を温存させ、これらの零細小売業者に商品を供給するための多数の卸売業者が存在し、結果として、わが国の流通経路を複雑かつ非効率なものにしているとして、大規模小売店舗法の改廃を強く求めてきた。
 また、大規模製造業者による中小小売業者の系列化は、排他的な流通経路を構築し、そのなかで行われている建値制や返品制といった商習慣が価格を高くし、内外価格差を生み出しており、それはそのような競争排他的な取引慣行に対する「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下、「独占禁止法」という)の運用が不十分なためであるとアメリカ側は指摘している。このような主張を受け入れて、「大規模小売店舗法については、流通業の今後のダイナミックな変革が求められている現在、新たな消費者のニ-ズにこたえ、流通業の活性化を進めるとともに、新店舗の開店のための円滑な手続きを確保する観点から規制緩和を推進する。また、国による規制緩和と併せて、地方自治体による規制緩和を図る(1) 」として、「大規模小売店舗法」の改正および独占禁止法の運用面での改善・強化が行われた。
 従来、わが国の流通政策は流通近代化を目的とした競争促進政策と中小小売商業者の保護を目的とした調整政策の両方に重点をおき、経済成長期には近代化に向けての政策が、低成長期には中小商業者保護へと、その焦点を振幅させてきたある程度の伝統ともゆうべき傾向を内在していたといわれるが(2) 、今後は競争促進政策を中心として展開されることになったといえよう。そのような政策の振幅は、国内的商業問題調整の観点で行われてきたために生じたものであり、今回の政策転換は「横からの入力」による国際的問題の調整の観点から行なわれたものであるので、再び、調整政策に焦点を合わせるような政策転換は、国際的に認められないであろう。ここに、戦前から商業政策および流通政策の底流をなしてきた中小商業者保護政策は終焉をむかえたといえよう。
 今回の「大規模小売店舗法」の改正をうけて、大型店の新・増設計画が活発化している。
 東洋経済新報社が行った「大型小売店全国出店調査」によれば(3) 、全国にある第1種の既存大型店舗数は4595店であるのに対して、新設計画中の店舗数は1111店であり、24.2% 増加することになる。また、既存店の売場面積は3012万 m2 であり、全小売業の売場 1億0205万 m2の29.5% を占めている。これに新計画店舗面積1002万 m2 および既存店の増床分 220万 m2 を加えると売場面積は40.6% 増加することになり、全小売業の総面積に占める割合は41.5% となり、さらに、第2種大型店の既存店および計画中の店舗の面積を加えると、小売業の総売場面積に対する割合は48.7% となり、わが国の全小売面積のほぼ半分を、大規模小売店舗が占めることになる。
 このような大型店の活発な出店は、各地域の商業構造を大きく変貌させることになり、小零細小売商業者を市場から淘汰し、大規模小売商業者間の競争、既存市街地商業集積対郊外商業集積間の競争、さらには、地域対地域の競争といったさまざまな側面での競争の激化が予想される。しかし、「大規模小売店舗法」改正を中心とする規制緩和によって生じるこのような競争の変化と、小零細小売商業者の市場からの淘汰という方向への政策転換は、流通近代化を促進し、流通の効率性と有効性を高め、消費者の利益を確保する望ましい流通構造の構築につながるのであろうか。
そこで、分析手続きとして、本稿では流通政策の目的、流通有効性の基準、流通有効性の阻害要因を整理し、その次に、流通政策立案過程とその問題点を検討したうえで、流通政策体系をまとめ、そして、稿を改めて、戦後の流通政策の系譜を検討し、今後の流通政策のあり方を展望したい。

2.流通政策の目的と評価基準
2-1 流通政策の位置づけと目的
経済システムは生産、流通、消費の三つのサブ・システムにわけられる。流通の機能は生産と消費の間に生じる主体的・時間的・場所的・数量的・価値的および情報的懸隔(ズレ)を架橋することによって、生産から消費までの財貨の流れを効率的かつ円滑にすることである。その機能を遂行するための活動が流通活動であり、流通活動を担当するのが流通機関である。また、流通活動が展開される場が流通機構であり、それは国民経済的立場からみれば商品流通のための社会的しくみである。
 自由経済社会は、企業および消費者が自らの意思決定にもとづいて経済活動を行なうことにより、自由競争の市場メカニズムを通して資源の最適配分が行われ、経済の発展を実現し、国民経済の向上を図ることを経済運営の基調とする社会体制である。流通活動も流通機関の自由なマ-ケティング行動によって、その役割が果たされるべきであり、政府の関与は最小限にとどめられるべきである。しかし、現実にはさまざまな阻害要因があり、経済運営の基調がみだされる事態が起こってくる。それらを是正し、より理想な経済システムを構築していくために、政府は経済政策を行なうのである。
 経済政策の目的は自由・正義・公正を守りながら、国民の経済的厚生水準の向上を図ることであり、具体的目標としては(4) 、①完全雇用、②物価安定、③国際収支の均衡、④所得の公平な配分、⑤経済成長、⑥資源配分の改善、⑦社会的必要の充足、⑧特定産業の保護・振興、⑨地域の開発振興などがあげられる。経済政策の下位政策としての流通政策は、流通を近代化し、流通機能の効率性と有効性を高めることによって、経済政策の目的・目標の達成に貢献するものでなくてはならない。
 流通政策の目的は、流通システムの経済的機能をより充分に発揮させ、消費者の物的要求を充足するために、流通の効率性と流通の社会的有効性を高めることにある。そのための、具体的・操作的目標をあげれば(5) 、
(1) 商品の円滑な供給
(2) 公正な流通秩序の確保
(3) 流通段階における競争の促進
(4) 自由な参入と退出の確保
(5) 流通活動の効率化による流通費用の削減と価格安定
(6) 中小商業の安定と近代化
(7) 流通過程における資源配分の公平化
(8) 商業施設の最適配置と都市環境の整備
(9) 流通過程における各種の基盤整備
などになるであろう。
 すなわち、流通政策は上述の具体的目標が実現され、流通活動が有効に効率的に行われるように、流通機能、流通担当機関、流通機構に関して、政府もしくは地方公共団体によって行われる規制・助成・調整などの「たらきかけ」である。その中心となる機関は、通商産業省、農林水産省、公正取引委員会、および地方公共団体である。

2-2 流通有効性の評価基準(価値基準)
一国の流通が効率的に有効に機能しているか否かを判断するための基準が必要である。流通有効性とは、流通活動の結果生み出された産出が望ましいか、必要をどの程度満たしているかということである。
 その基準としては(6) 、流通固有の基準としての流通生産性、取引便宜性、配分平等性、上位システムとしての経済システムの評価基準としての競争公正性、社会システムの評価基準としての環境保全性、都市機能性などがある。これらの評価基準を整理しておこう。
(1)流通生産性
 流通は1つのシステムであるので、その生産性は一定期間の投入(費用)と産出(成果)の関係(差もしくは比)で評価される。しかし、流通生産性を評価するための投入と産出を如何に捉えるかは、はなはだ難しい問題である。産出は、流通機能が消費者の欲求の充足を役割としているかぎり、消費者の欲求充足度合いを指標とすべきであるが、人間の欲求充足度は主観的・心理的要因を含んでおり数量化を図ることは至難の技である。
 また一方、投入は成果を生み出すのに用いられた費用、すなわちこの場合は社会的流通費用として把握されるべきであるが、その算出にも多くの問題点がある。たとえば、よく行われる方法として、社会的流通費用を消費者価格と生産者価格の差として把握するが、生産者が行なう流通機能にともなう流通費を考慮した場合、社会的流通費が過少に捉えられることになるし、また、生産者の負担する流通費を削除しようとしても、生産者の費用のどの部分が流通費に相当するかという問題が残る。
 そこで、一般的には、便宜的にではあるが、流通生産性を測るために、産出として売上高・付加価値(売上高マイナス売上商品原価マイナスその他の支出費用)・流通量などを用い、投入としては労働力・資本・流通費・売場面積などを用いる。計算方法としては、産出を一定と考え、流通費によって生産性を計算したり、産出として売上高を、投入としての労働力、流通費、資本、売場面積などで除したりする。小売段階の生産性を知る方法として、従業員一人あたりの販売額を用いて、小売労働生産性を求めたりするのは、上記の一例である。
 一般的に用いられる商品、企業、産業、国民経済の集計レベル別での投入、産出、投入・産出の差、投入・産出比を示しておくと表1のようになる。(表1省略)
(2)取引便宜性
 取引とは商品の主体的な移転であるから、取引便宜性とは、その主体的移転(所有権の移転が正確に速やかに行なえているかどうかの基準である。主体的懸隔への架橋以外に、流通機能は時間・場所・情報・価値・数量などの懸隔に架橋することであるから、それらの架橋を適切に行なうことによって取引便宜性は向上することになる。取引の買手たる消費者の側からみれば、多様な店舗形態の中から、充分な情報提供をうけ、適切な時間に、適切な場所で、適切な価格で、必要な数量を、自由に、最少の購買費用で購入することが出来るような状態が、取引便宜性が最も充たされた状態である。
 一方、売手の生産者の側の場合は、競争の状態によって取引便宜性の持つ意味が変わってくる。純粋競争のように多数の生産者が存在している場合は産地・中継地・消費地をつなぐ流通経路のそれぞれの段階がどの程度整備されているかが問題となる。少数の大規模製造企業が差別化された商品生産を行っている独占的競争においては、各大規模製造業者が自らの販売経路を確立し、流通業者を管理下に置いており、流通業者の側の取引便宜性が狭められていることになる。
(3)配分平等性
 生産された商品は流通機能によって、消費者および最終使用者に渡り、(使用)価値を増加させる。配分平等性とは、価値の増加に参加した生産者・流通業者・消費者の間でそれぞれの貢献度に応じて配分する平等さである。たとえば、流通系列化が進むと、本来流通業者に配分されるべき部分を、大規模製造業者が取り込んでしまうようなことがおこり、配分が平等に行われないようになる。
(4)競争公正性
 この基準は流通固有の基準ではなく、経済システム全体の基準である。既に述べたように自由競争経済においては、企業の自由なマ-ケティング行動と消費者の自由な選択が競争というメカニズムを通しておこなわれることによって、資源が最適配分され、経済発展が実現されるとされる。しかし、ここでいう自由な行動とは、他の企業の行動に制約を加えたり、規模の大きさを背景に他の企業に圧迫を与えたりするような好き勝手な行動ではなく、一定の競争のル-ルに従って行われる公正なものでなくてはならない。百貨店が老舗としての信用を背景として、納入業者に対して取引関係を利用して商品の購入要請・売込みを行なうなどは競争公正性を
阻害していることになる。
(5)社会環境保全性
 社会システムの評価基準である社会環境保全性は、流通システムの評価基準としても用いられる。消費者の欲求充足をめざした製造業者の生産活動が公害問題を引き起こしたり、とくに最近は、多様化・高度化する消費者の欲求と行動が、自然破壊や環境破壊に繋がるケ-スが増えている。フロンガスを使ったスプレ-は使用上は大変便利であるが、オゾン層が破壊され、地上に多量の紫外線が到達し、皮膚がんが発生しやすくなるなどは一例であろう。上位システムである社会システムを維持していくためには、企業行動に制約を加えたり、消費者の欲求をおさえていく必要が生まれつつあるし、流通有効性の評価基準として今後重要性を増してくるであろう。
(6)都市機能性
 都市は政治・学術・産業・交通・観光・宗教などの多様な機能を持っており、流通もその1つである。とくに、小売流通は住民の日常生活に密接に関係しており、それを支えるものであり、地域にとって重要な1つのインフラストラクチャ-(地域基盤)を形成している。小売活動は地域の消費生活を反映したものである。消費生活はそれぞれの地域の歴史、風土および文化のうえに成り立っており、その意味で、小売業は地域文化の担い手でもある。近年、中央集権による画一的地域づくりとその一環としての商業地域づくりへの反省から、地域の自立と活性化がいわれ、地域個性が求められている時、小売流通活動にもその個性化と地域文化づくりの一翼を担うことが要請されている。流通機能が他の都市機能と矛盾なく遂行されながら、流通生産性が高められているか否かを判断する基準である都市機能性は今後ますます重要視されるであろう。
 以上の基準がすべて整合性をもって満たされることはない。たとえば、流通系列化によって流通生産性の向上は図られるが、競争公正性が阻害されるというように、基準間にトレ-ド・オフの関係がある。それゆえ、生産システム・消費システムの変化、時代や場所に応じて重点となる基準は変化するが、長期的には、すべての基準が満足させられるような基準ミックスが形成されなくてはならない。わが国の流通政策の展開をみても、重視される流通有効性の基準は経済変動や環境変化に対応して変化している。

2-3 流通有効性の阻害要因
 公的介入は、理想とする流通のあり方と現実の流通の間に乖離が存在し、生産者、流通機関や消費者の自主的な努力によっては、その乖離が修正・調整できず、その乖離を放置すれば社会的不平等や不公正が生じる時、もしくは、より理想的な流通システムを構築しようとする場合にのみ認められるものである。公的介入の対象は、場としての流通機構や、流通機能であり、統制・禁止・振興・調整という方法をもって行われる。
それでは、その乖離をうみだすものを流通有効性の阻害要因として捉え、整理してみると、
(1)需給の不一致
 需給を適合させるバロメ-タ-は価格である。多数の生産者が存在し、商品の差別化がなされていない純粋競争の商品の場合は、生産者側の供給量と需要者側の需要量の不一致や、それらの数量を背景とする販売価格と購入価格の不一致によって、需給の不一致が生じる。その不一致は農産物に代表されるように供給量が不安定であり、その結果、価格が乱高下する場合や、人為的な生産調整・買い占め・売り惜しみによって、供給量と需要量の均衡がやぶられることによって、価格が高騰する場合などに生じる。
 また、少数の生産者が差別化された商品生産を行っている独占的競争においては、生産者の販売価格を需要者側が受け入れない時に、需給の不一致が起こる。
 この不一致は、流通生産性、流通配分性を阻害することになる。
(2)情報の不一致(不正な取引の発生)
 現代社会においては、売手と買手の情報量格差によって不正取引が行われる危険性がある。技術の進歩は多数の商品を市場に供給しているが、商品の品質は多様化し、商品機能は複雑なものになり、売手自体が充分な商品知識を持ちえていないために、買手の選択を誤らせたり(過当競争に打ち勝つために作為的に行なう場合もある)、さらに買手を生活上の危険にさらす可能性がある。また、買手自身の商品知識不足のために、不利益を被ることもある。
 また、訪問販売、通信販売、割賦販売、信用販売などのさまざまな販売方法が普及してきているが、買手側にそれらの取引方法についての充分な知識と理解がなく、取引の結果、問題が生じる場合がある。情報の不一致は取引便宜性、取引公正性を阻害することとなる。
(3)発達速度の不一致
 流通システムは経済システムの下位システムであり、流通システムの機能からみて、生産システムおよび消費システムのあり様と発達に適合していかなくてはならない。一般には、最初に、生産システム内において、技術進歩を背景として、生産の大規模化・効率化をめざして製造業者が規模を拡大し、生産システムの効率を向上させていき、流通システム・消費システムとの間に発達速度の不均衡を生じさせる。長期的には、流通システム内における競争をつうじてシステムの高度化が図られたり、また、消費システム内の消費者の購買行動の変容を通して、均衡状態へと向かっていく。しかし、発達の不一致の是正には時間が必要であり、均衡状態への過程においては発達速度の不一致が経済発展の阻害要因となる。
 また、供給が少数の大規模製造業者によって占められている売手寡占市場になると、大規模製造業者は自らの安定的市場を獲得するために、流通システムに介入し、自ら流通機能を担当したり、中小商業者を排除したり、もしくは中小商業者を管理下におき、かれらの流通活動にさまざまな統制や規制を加え、公正な競争を阻害したり、成果の配分に不公平を生じさせたりする。
 流通システム内部においても、その構成機関の発達速度に差が生まれことがある。大規模商業機関の市場行動が、圧倒的多数を占めている中小零細商業者の行動を制約し、特定の地域空間において公正な競争がおこなえない場合がある。たとえば、大規模小売商業機関の価格方策に周辺の中小零細小売商業者は追随しなくてはならず(他の差別的有利性の手段を持っている場合は別であるが)、仕入れ数量の格差による仕入れ価格の差が存在するかぎり、中小零細商業者の利益を圧迫することになる。このために、競争を公正かつ有効に維持するための調整が必要となる。
 発達速度の不一致は流通生産性、競争公正性、配分平等性の阻害要因となる。
(4)自由な企業行動および消費者欲求と社会利益の不一致
 自由競争経済は、企業の自由な競争行動と消費者の自由な選択行動を通じて、資源の最適配分を実現し、国民の経済生活の向上をめざしている。しかし、企業と消費者の自由な行動が、社会全体の利益を阻害することがある。
 企業の自由な競争行動を考えてみよう。大規模小売商業者がショッピング・センタ-を開店すると、その周辺の地価が高騰したり、自動車の通行量が道路の通行許容量を越えてしまい混乱が生じ、優先されるべき日常生活に不便をきたすことになる。また、都市周辺部に建設されるショッピング・センタ-は、都市中心部に存在する従来の自然発生的な中心商業地域の衰退をまねき、都市の空洞化現象を起こし、さまざまな社会問題を引き起こしている。
 一方、消費者の物的要求の充足を目的としている経済体制においては、消費者の欲求を充たすことは、社会利益と一致しているという前提に立っている。しかし、消費者欲求の充足が、社会の不利益を引き起こすことがある。たとえば、消費者が商品の過度の包装を要求したとすると、その要求に対応することは資源の浪費であり、包装材料は多量のごみをつくり出すことになり、社会的なごみ処理問題すなわち環境保全問題になる可能性がある。
 このような不一致は経済システムや社会システムの目的と適合せず、社会環境保全性、都市機能性を阻害する要因である。

3.流通政策形成過程とその問題点
 ここでは、政策とは、政府および地方公共団体が社会システム内において成起する公共的な問題を解決するための方策もしくは方針とそれの体系であり、施策とは、行政機関が政策を具現化するために策定する法制的措置を伴った計画およびその実行を意味するものとする。
 流通政策は流通内部の矛盾および流通と流通外部との間に生じる矛盾を処理するために形成される。図1に、上述した流通有効性の価値基準と阻害要因を組み込んだ流通政策形成プロセスの1つのモデルを示した。
 その過程を追ってみると(8) 、
(1)経済システム内に、流通有効性を阻害する要因が発生もしくは存在している。
(2)阻害要因の影響が大きくなり、流通問題が社会問題として認識される。この段階で利益集団の運動が展開される。一般的に、被害をうける側の主体的な要求運動が不十分であったり、政策実現の力量(利益集団としての)が不足していると効果はうすい(9) 。
(3)阻害要因が除去された望ましい状態が想定される。しかし、自由競争の原理に従うと問題が解決することができず、公的介入が必要であると判断される。
(4)公的介入の具体的内容つまり流通政策が立案される。立場のちがいによって、異なった政策が立案され、各利益集団がそれらの政策を支援して運動が展開する。
(5)議会における立法化過程を経て、政策が決定され、政策をもとに実行計画としての施策が決定される。
(6)政策、施策が実行され、必要があれば、政策の修正や補強が行われる。
である。
 しかし、この過程には望ましい流通政策の立案・実施から乖離させていく幾つかの問題点が内包されている。
 問題点の1つは、流通有効性阻害要因の認識に差が存在することである。1つの集団が阻害要因と認識しても、他の集団はそのように考えない場合に、阻害要因として認識する集団が、流通問題を社会問題化して解決していこうとする。たとえば、大規模小売商業者の出店問題をとりあげてみよう。大規模小売商業者は自由競争の原則に従って出店を計画する。また、消費者は購買・選択の機会が増えるので、出店を歓迎する。この両者は出店を流通阻害要因とは考えない。しかし、出店地域周辺の小零細小売商業者にとっては自らの事業活動に大きな影響が予想され、自らの生活権を奪うものとして阻害要因として社会問題化していこうとする。
 認識については特定の価値基準だけに基づく主観的認識ではなく、社会的コンセンサスを得るものでなくてはならない(10)。しかし、多くの場合、特定集団の認識によって、政治過程に問題が持ち込まれている。
 2番目の問題点は、政治過程に関与する集団がそれぞれをの思惑のなかで行動することによって、望ましい政策の立案が阻害されることにある。利益集団、官僚制、審議会の各集団について問題点を整理しておこう(11)。
 利益集団は政治過程を通して共通の利益を実現しようとする有権者や企業もしくはその他の団体からなる組織であり、政党に対して無視できないほどの確実な票と政治資金を提供するのと交換に、共通利益を促進する特定の政策を支援することを要求する。利益集団の影響力を規定する要因は①組織リソ-ス、②政策エリ-トへのアクセス、③政党との結びつき・支援という系列化、④頂上団体と行政機関の制度的関係(12)であると考えられており、影響力が強い程、政策内容に自己の利益を組み込むことができる。流通政策の立案に際しても、幾つもの利益集団が形成され、それぞれの価値基準に見合う政策を要求して行動する。
 官僚制は政府内での政策の立案・執行にあたって、補佐的役割が与えられているにすぎないが、実際には官僚制は専門的知識と技術、情報量などについて卓越した影響力を有し、政策の形成を主導しており、政策課題は官僚制によって認知され、政策は官僚制の内部作業として具現化されていく(13)。政党は顧客集団や選挙区の利益を官僚制にインプットし、利益集団は自らの利益を圧力活動を通じて官僚制に伝達するのである。ここで問題となるのは、各省庁が利益集団の圧力を受けながらも、官僚制内部の論理によって、独自の動機をもって行動し、政策に影響をおよぼすことである。流通問題においても幾つかの省庁にまたがって解決されなければならないものが多いが、その場合政策立案過程で、各省庁の行動動機と勢力関係において、本当に望ましい政策立案に支障をきたすことがある。
 審議会は各種意見や利害関係を調整し、行政庁の政策決定過程に衆知あるいは専門的知識を反映させるために設けられているのであるが、行政庁が審議会を利用するのは、①政策の方向づけに真に苦慮している場合、②行政庁の側に用意された政策が複数であり決定しがたい場合、③答申原案は出来上がっているが、客観性と説得性を持たせ、審議会の権威をかりて自己の政策を正当化する場合である。そのほかに、行政庁は審議会を利用して時間かせぎ、欲っせざる政策の遅延をはかったりする。また、審議会は諮問機関であり、最終決定権を持たないため、答申されたものが実行に移されないこともある。そのうえ、審議会の委員の選任にも問題がある(14)。
 3番目の問題点は、政策執行過程においておこる。政策は公示されるのが常であるが、政策目的は往々にして不明確で、官僚機構を通じての実施過程における裁量的判断にゆだねられる余地が大きいために予期せざる結果を生み出すことがある。とくに、政策の立案形成は中央省庁、その実施は地方自治体といった機能分担方式によって、広範な政策的判断が自治体に残されており、各自治体の対処の仕方によっては個別政策の具体的効果が大きく左右される。
「大規模小売店舗法」を1つの事例としてとりあげ、流通政策形成過程とその問題点について具体的に検討してみよう。
 まず、社会問題化する過程を追ってみよう。昭和30年代の中頃から、ス-パ-の急成長に対して、百貨店と同様にス-パ-に法的規制を加えるべきであるとの意見や、規制強化の運動が中小小売商業者を中心として展開されたが、昭和37に設置された産業合理化審議会の流通部会は「百貨店と同様あるいは類似の諸措置をとることは、まだ、時期尚早である」(昭和38年ス-パ-マ-ケットに関する報告)として、流通近代化のためにス-パ-の果たす役割と意義を高く評価したこともあって、ス-パ-はますます大規模化し、各地の中小小売商業者を圧迫していった。ス-パ-は「百貨店法(15)」における企業主義の定義に着目して、店舗ビルの各階ごとに別会社の売場面積を1,500m2 以下に抑えることによって、「百貨店法」の適用をまぬがれる方式を採用し、店舗規模の拡大をはかったのである。これが、「疑似百貨店問題」である。疑似百貨店問題に対して、百貨店側からは同規模の店舗規模を有する疑似百貨店を規制から除外しておくことは両者間の競争基盤を異にさせるものであるという主張がなされ、中小小売商業者側からはス-パ-が立地や品揃えの点で中小小売商業者と競合する面が多く、百貨店よりも大きい影響を与えているにもかかわらず、百貨店を規制する一方でス-パ-を自由にしておくのは不条理であるという主張がなされたが(16)、流通を近代化していくためとして、疑似百貨店は黙認されたかたちであった。
 しかし、昭和40年代中頃から、名目所得の大幅な増加にかかわらず、消費者物価の高騰から、実質所得の伸びは小幅なものになり、消費者の生活意識は大量消費、使い捨てから節約へと転換した。消費の低迷は、小売業者全体に大きな打撃をあたえ、小売段階での大規模小売商業者と中小小売商業者の対立は一層激しさを増していった。そうした中でも、法的規制の対象外におかれていたス-パ-の全国各地への出店が相次ぎ、ス-パ-チェ-ンと地元商業者との争いが頻発し、ス-パ-に規制を加えるべきだという運動が盛り上がった。たとえば、大手ス-パ-が愛媛県松山市に地下一階、地上八階、売り場面積約1万 m2 と、地元にある百貨店を上回る大型店舗建設計画を明らかにした。松山商工会議所には流通問題懇談会が設けられており、ス-パ-も新店舗を解説する場合には、百貨店と同様に地元と話し合いをするル-ルができていたにもかかわらず、ス-パ-はこれを無視して店舗建築を強行しようとしたため、地元が硬化し、市当局も中止命令を出してしまった。地元商店街の陳情もあって、通産省と中小企業庁も現地調査を行なったりしたが、ス-パ-が商工会議所を仲介として、地元商店街と売場面積の削減やその他の問題については話し合う、と言う協定書をかわした(17)。このような状況を踏まえて、通産省は45年10月に、行政指導でス-パ-の店舗の新・増設を届出制とし、地元商工会議所の斡旋で中小小売商業者との話し合いの場を設け、店舗規模だけではなく、営業時間・休日・営業形態の面をも検討することとした。この行政指導はス-パ-と地元中小小売商業者との対立を調整することによって、中小小売商業者を保護すると同時に、流通近代化の旗手であるス-パ-を育成しようとしたものであった。さらに、昭和47年の7月には産業構造審議会流通部会が「①流通近代化と消費者利益の見地から百貨店法自体を緩和し、②百貨店以外の新しい形態の大規模小売店舗を規制の対象に含める、③対象基準面積以上の大規模小売店舗の新・増設については許可制から事前届出制に改める、④営業時間,休日等の行為規制については新しい事態に配慮しつつ存続する」という答申を出し、これを受けたかたちで、通産省はまず行政指導によって「百貨店法」の運用緩和するとともに、「百貨店法」の改正にとりかかることになった。
 しかし、産業構造審議会の答申を中心とする百貨店法改正の方向は中小小売商業者の強い反対に直面することとなる。百貨店法の許可制は、店舗の新・増設においては地元商業者の同意が必要とされたため「原則禁止」の考えに近い仕組みであったが、届出制は原則的には出店自由の考え方に立つものであり、「原則自由・例外規制」へと180 度転換することになるからである(18)。このような考え方の転換に対して、民社党をのぞく各政党および中小小売商業者の各団体が規制緩和に反対して許可制強化の線を打ち出してきたため、通産省は「事前審査つき届出制」という妥協案で収拾した。「事前審査つき届出制」は、通産大臣が小売業者の届出内容について事前調査・審査し、必要があれば届出内容の変更勧告および変更命令ができるというものである。この「事前審査つき届出制」は「届出」によって営業が開始できるという側面を重視すると、営業自由の原則が貫かれているようにみえるが、「事前審査」によって、場合によっては最終的には通産大臣の命令によって調整されるという側面を重視すると、行政による権力的介入が可能であり、中小小売商業者保護の色彩をおびてくるという、運用次第の玉虫色の法律ができあがった。
 通商産業省が許可制に反対したのは法律の改正は国会を通すコストがかかるし、許可制による規制は届出制による調整と違って、「まちがった」許可処分に対する行政責任を問われる危険があるがためである。それゆえ、通商産業省は法的には事前審査つき届出制にしておき、実質的には許可制に近いが、責任を追求されにくい「行政指導」による利害調整を行なおうとしたのである。
 次に、施行後の運用面をみてみよう。「大規模小売店舗法」の運用手順は図2に示した通りである。大型店の新設あるいは増設を計画した場合、その建物の設置者、それに入居する小売業者は店舗面積、開店日、閉店時間、休業日数を届け出なければならない。この届出にともなって商業活動調整が開始されることになる。権限をもっているのは通産大臣であるが、図2に示したように次々に諮問が行われて、最終的には各市町村の商工会議所、商工会に設置される商業活動調整協議会(以下、商調協という:商調協は法律そのものにはうたわれておらず、通達によって認知された組織である)までいく。法的にいえば、商調協は諮問機関の1つにすぎないのであって、「大規模小売店舗法」による調整権限を持つ機関ではない。「大規模小売店舗法」は法文よりもその運用つまり行政のあり方に法律の成果の大半を委ねている点に問題があるといえる(19) 第1の問題点は、実際の調整においては地元の商調協が主役を果たす地元民主主義方式(20)がとられたことにある。「大規模小売店舗法」における調整活動は利害衝突を非操作的な調整基準にもとづいておこなわれる。その点に、この法律が社会的にどう機能するかは運用次第であるといわれるゆえんがある(21)。このような状況のなかで考えだされた調整組織が当事者である大規模小売商業者と地元小売商業者の代表によって構成された非公式の事前もしくは事々前商調協である。その結果、法律において定められた正式商調協においては実質的審議を行なうことが困難になり、正式商調協は事前もしくは事々前商調協での合意を追認するだけのものとなってしまい、形骸化したものとなり、正式商調協の構成メンバ-である消費者と学識経験者の意見が全く反映しなくなってしまった。大規模小売店舗法の目的の1つである「消費者利益の保護」は、利益集団としての地元小売商業者団体の圧力のまえに屈したことになる。
 もう1つの運用上の大きな問題点として、地方自治体による「横だし規制」がある。地方自治体では大規模小売店舗法においては大型店の規制対象にならない中型店に対しても大型店と同様の規制を加える必要性から、自治体独自の規制基準をおりこんだ条例を制定したり、要綱を作成することになった。地方自治体のこのような動きは、「大規模小売店舗法」制定直後のオイルショックによる消費市場の停滞ならびに大規模小売商業者の出店形態の多様化にともなう、規制対象面積 1500m2 以下の中型店の出店が相次いだためである。地元小売商業者にとっては中型店の進出も大型店と同様の影響を受けるとして、反対運動が激化し、出店紛争が常態化したことに起因している。
 また、判断基準として、法律には定められていない種々の基準が多様なかたちで持ちこまれた。すなわち、ある特定のテナント、業態、販売方法についての禁止要求や、さらには大型店出店による賃金水準の上昇、従業員の引きぬき、青少年犯罪、道路公害などへの影響度などが、出店の是非の判断基準として持ち込まれたのである(22)。
 このように、「大規模小売店舗法」それ自体が内包する問題や運用上のさまざまな問題の発生によって、わずか制定後5年にして、改正されることとなったのである。
 このような短期間の改正に対しては、通商産業省が流通有効性の阻害要因として何を認識し、どのような評価基準のもとで、どのようなビジョン設定をおこない、政策立案をおこなったのかという疑問が残る。一応、通商産業省は百貨店法の厳重な許可制を届出制に改正することによって、発達速度の不一致を是正し、流通近代化および消費者利益の確保を実現する政策目標を設定したが、政策形成過程およびその運用過程における、各利益集団の行動や通商産業省自体の行動が、法の立法趣旨をゆがめ、運用をゆがめたかたちにしてしまい、政策目標との乖離が生じたといえよう。その過程は明確なビジョン展望に裏づけられたものではなく、政策形成は政治のなかのパワ-関係によって左右され、試行錯誤を重ねながら運用されていたといっても過言ではなかろう。

4.流通政策の体系
流通政策は幾つかの基準によって類別できる。流通機能を対象とするものと流通機構を対象とするものに分類する対象別、通商産業省・農林水産省・公正取引委員会・地方公共団体等の主体別、規制・禁止・調整・振興等の方法別、および目的別などによって類別、体系化することができる。
 ここでは、最も一般的と考えられる政策の目的別の分類と政策の根拠となる代表的法律を示しておこう。目的は、取引秩序の維持、流通機能の効率化、流通機構の整備、流通機構の調整・需給の適正化、有効競争の維持・促進、消費者保護(流通政策の直接的目的ではないかもしれないし、また、取引秩序の維持の一部として扱われることもあるが、今後その重要度が大きくなると考えられるので別に取り上げた)等に分けられる(23)。
①取引秩序の維持を目的とするもの。
 〔不公正取引防止法(昭和9年,法14)〕
〔割賦販売法(昭和36年,法159)〕
 〔訪問販売等に関する法律(昭和51年,法57)〕
 ②流通機能の効率化を目的とするもの。
 〔中小企業基本法(昭和38年,法154)〕
 〔中小企業近代化促進法(昭和38年,法64)〕
 〔中小小売商業振興法(昭和48年,法101)〕
 ③流通機構の整備を目的とするもの。
 〔商品取引所法(昭和25年,法239)〕
 〔卸売市場法(昭和46年,法35)〕
 〔流通業務市街地の整備に関する法律(昭和41年,法110)〕
 〔民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(昭和61年,法77)〕
 〔特定商業集積整備の促進に関する特別措置法(平成3年,法82)〕
 ④流通機構の調整を目的とするもの。
 〔小売商業調整特別措置法(昭和34年,法155)〕
 〔大規模小売店舗における小売業の事業活動に関する法律(昭和48年,法109)〕
 〔中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律、分野  調整法(昭和52年法74)〕
 ⑤需給の適正化を目的とするもの。
 〔食糧管理法(昭和17年,法40)〕
 〔農産物価格安定法(昭和28年,法225)〕
 〔国民生活安定緊急措置法(昭和48年,法121)〕
 〔生活関連物資等の買い占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、投機防止法、昭  和48年法48)〕
 ⑥有効競争の維持・促進を目的とするもの。
 〔独占禁止法(昭和22年,法239)〕
 〔不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法134)〕
 ⑦消費者保護を目的とするもの。
 〔消費者保護基本法(昭和43年,法78)〕
 〔消費生活用製品安全法(昭和48年,法31)〕

5.本稿の結びにかえて
本稿は今後の流通政策を展望するための前作業として、経済政策のなかにおける流通政策の位置づけとその目的、流通有効性の評価基準と阻害要因を整理したうえで、流通政策形成過程における問題点を、大規模小売店舗法を1つの事例としながら明らかにした。流通政策は流通阻害要因を取りのぞくことだけを目的としているのではなく、望ましい流通をビジョンとして設定し、それを実現するためのものでなくてはならない。しかし、現実には経済システムのなかで解決されるべき流通問題が、利益集団の行動によって政治問題化され、政治の分野に関与するさまざまな集団のパワ-・ダイナミックスと官僚制の持つ独自の行動様式によって、ビジョン実現のための政策とは遊離した政策が立案されているのである。
 開題のところで述べたが、「大規模小売店舗法」が改正され、商業構造が大きく変化することが予想されるが、この改正自体が国際的圧力によるものとはいえ、従来の政策形成パラダイムに依拠しているかぎり、将来多くの問題が発生する可能性があるといえよう。現在のような流通政策形成のパラダイムを変えないかぎり望ましい流通システム形成は困難であろう。
  稿を改めて、本稿で提示した政策形成過程の枠組みを活用して、戦後の流通政策を検討し、問題点を整理したうえで、流通政策の転換に際しての基本的視点を明らかにし、今後の流通政策およびその形成過程のあり方を考えてみたい。

〔注記〕
(1)『エコノミスト』毎日新聞社、平成2年7月、73頁。
(2)荒川祐吉「流通近代化政策」久保村隆祐・原田俊夫編『商業学を学ぶ』有斐閣、
   昭和59年、279頁。
(3)東洋経済『統計月報』、平成4年、16-21頁。
(4)伊藤正則「経済政策の目的と課題」伊藤正則・山崎良也編『基本経済政策』有斐閣、
   昭和62年、4-5頁。
(5)田島義博「流通政策のニュ-パラダイム」久保村隆祐・流通問題研究協会編『21世紀の流通』日本経済新聞社、昭和62年、316頁。
(6)久保村隆祐「流通政策の概念と価値基準」久保村隆祐・吉村壽編『現代の流通政策』千倉書房、昭和58年、7-10頁。
(7)荒川祐吉「流通生産性と流通合理化」久保村隆祐・荒川祐吉編『商業学』有斐閣、
   昭和49年、490-493頁。
(8)鈴木安昭「商業に関する公共政策」鈴木安昭・田村正紀『商業論』 有斐閣新書、
   昭和55年、228-229頁を参照した。
(9)保田芳昭「流通政策の理論と現状」保田芳昭・加藤義忠編『現代流通論入門』有斐閣、昭和63年、165頁。
(10) 田島義博、前掲書、317頁。
(11)岸本哲也『公共経済学』有斐閣、昭和61年、163-204頁を参照した。
(12) 大山耕輔「官僚機構 大型店紛争における通産省・商工会議所の調整行動」中野実編著『日本型政策決定の変容』東洋経済、昭和61年、54頁。
(13) 阿部斉・新藤宗幸・川人貞史著『概説現代日本の政治』東京大学出版会、平成2年、99-106頁。
(14) 小谷正守「官僚制と流通政策」鈴木武編『現代の流通問題』東洋経済新報社、平成3年、51-52頁。
(15) 昭和31年に制定された「百貨店法」は中小小売商業者の存立基盤を確保するために、大規模小売店舗である百貨店の事業活動を調整することを目的としたものであり、1500m2 (政令指定都市では3000 m2 )以上の売場面積を有する加工業を含む物品販売業を百貨店として定義し、百貨店の開業や店舗の新・増設に際しては通産大臣の許可を必要とすることとした。また、百貨店法は企業主義を採用し、百貨店として指定された企業はその後の出店に制約を加えられることとなったが、この企業主義がその後の「疑似百貨店」問題の原因になったのである。
(16) 岩永忠康「大型店規制」阿部真也・白石善章他編著『現代流通の解明』ミネルヴァ書房、平成3年、251頁。
(17) 白髭武『現代日本の流通問題』白桃書房、昭和49年、172-173頁。
(18) 鶴田俊正・矢作敏行「大店法システムとその形骸化」三輪芳朗・西村清彦編『日本の流通』東京大学出版会、平成3年、289-290頁。
(19) 岩永忠康、前掲書、251頁。
(20) 田村正紀『日本型流通システム』千倉書房、昭和61年、78頁。
(21) 岩永忠康、前掲書、251頁。
(22) 田村正紀、前掲書、84頁。
(23)久保村隆祐「流通政策の目的・体系・研究」久保村隆祐・田島義博・森宏『流通政策』中央経済社、昭和57年、49-53頁を参照した。




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