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カテゴリ:韓国映画
不思議な映画でした。
美しい映像美で日本でも評判になったエロティック・ラブストーリー、「寵愛」を撮ったヨ・ギュンドン監督の監督デビュー作です。1994年の作品。 「寵愛」は、原題が「美人」。有名な“露出映画”ですけど、日本では“オ・ジホ人気”で、若い女性にウケてましたね。イ・ジヒョンの演技には、正直“?”と思ったところもありました。でも、あのバストの存在感はスゴイ。オ・ジホとイ・ジヒョンの裸体がとても美しかったです。映画自体もソフトで、淡いトーンで撮られていて、映像美がみごとでした。 この「寵愛」とはまったく違ったタイプの映画です。 ヨ・ギュンドン氏は監督としても有名ですが、俳優としても活躍している人です。 舞台は刑務所の中。囚人のヤン・マドン(ムン・ソングン)とチ・チャンシク(イ・ギョンヨン)は、ちょっと嫌味な所長(ミョン・ゲナム)から移監の申し渡しを受けます。2人は、他の囚人3人と他の刑務所へ移送されることになりました。 移監の途中、思わぬことが起きます。他の3人囚人が脱獄を試み、まんまと成功してしまうのです。その騒動に巻き込まれたマドンとチャンシクも、成り行きで護送車を降り、外の世界へ。 行き場を失った2人― マドンは、ひとりで歩き出そうとします。後からついてくるチャンシク。うっとうしげにチャンシクを追い払おうとするマドンですが、なれなれしく離れません。 チャンシクは、誇らしげにマドンへ拳銃を向けます。驚くマドン。拳銃は、脱走騒動のドサクサに紛れてチャンシクが手に入れたものでした。しかたなくチャンシクと一緒に歩き始めたマドンも、次第に「チビ助」と呼ぶチャンシクが憎めなくなってゆきます。 ムン・ソングン演じるマドンは強面ですが、本当は平穏な世界を求める中年男です。一方のイ・ギョンヨン演じるチャンシクは、どでかい銀行強盗をやって一攫千金を夢見る軽薄な若者。この2人が予期せぬことから自分の意志とは関係なく“脱獄”してしまい、チグハグで行き当たりばったりの逃亡生活をします。 途中からこの2人に、現実に不満を感じている女性、ヨ・ヘヨン(シム・ヘジン)が加わり、3人は食べるために強盗を繰り返しますが、“脱獄囚”の汚名もそれによって“凶悪犯”というレッテルに変わってゆきます。警察の厳しい追跡も(運良く?)するりとかわしてゆきますが、一方でチャンシクが夢見るような一攫千金はこれもまたするりと逃げてゆきます。 そんな一喜一憂の中で、意気投合した3人のかもし出す空間がとても魅力的。特に、ヘヨンは2人と出会ってから、明るさを取り戻します。 逃亡中の車中で、ヘヨンは(3人が)「明日に向って撃て!」のようだとうれしそうに話します。 ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード… その次が???。観てのおたのしみです。この映画自体「明日に向って撃て!」のパロディともオマージュともとれるようなところがあります。 そういえば、「明日に向って撃て!」について、最近こんな記事を目にしました。 【ニュース】「明日に向かって撃て!」に“異説”…米で舞台上演(ZAKZAK) コミカルで不条理劇の要素を持ったロードムービー…といっていいんでしょうか。 3人の繰り返すチグハグで行き当たりばったりな逃亡生活は、コミカル。それでいて、演劇「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を思わせるような不条理劇のムードも漂います。なんとも、不思議で魅惑的な映画でした。 お目当てのムン・ソングンがやっぱり良かったです。持ち前の“毒気”が、コミカルな要素の中で押さえ気味ともとれますが、それによって活きてる部分もありました。「グリーンフィッシュ」で彼の“毒気”に抵抗を持った人も、この映画のムン・ソングンには魅力を感じられるかもしれません。 イ・ギョンヨンはイム・グォンテク監督の「燕山日記」がデビュー作だったんですね。出演作も多いベテランであると同時に、「帰天図」などの映画監督でもあります。ムン・ソングンとのコンビが対照的で、いい感じでした。 シム・ヘジンは「グリーンフィッシュ」でもムン・ソングンとの共演がありました。2本の映画を比べると2人の間のムードにかなり違いがあるものの、相手役としては相性がいい気がします。大人の男と女を演じられる俳優さんたちですからね。でも、この映画のシム・ヘジンは外見とのギャップがあるところがとてもチャーミングです。 B級映画の雰囲気もあって、私としてはとても好きなタイプの映画でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 2, 2006 11:47:10 AM
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