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カテゴリ:韓国映画
3日留守にしました。これは9月2日から始まる映画のために、映画館の前でテントを張って待っていたから…というわけではありません。また、別に体調がどうとか、気持ちがどうとかっていうことではないんです。
たまたま忙しかったというのと、思うところがあってのことです。とりたててここで書くようなことでもない部分もあるし、このブログのあり方も見直さなくてはならないという部分もあることはあるんですけど、それは後日にします。 それよりも、きょう書かなくてはならないことがあります。当然、このブログを読まれている方ならお気づきでしょう。そう、きょうは「グムエル -漢江の怪物-」の公開日です。行ってきました、当然! 本国・韓国では、31日までの累計であと7万人くらいで「王の男」の1230万人に達するところまできているようです。推定で、おそらくきょうが記録更新の推定日だそうです。この数字ですけど、感想と重ね合わせていうと、このくらい入るインパクトは十分ある映画でした。 不思議な映画です。これまでの韓国映画にはまったくなかった映画。この映画しか持ち得なかった要素に充ちたオリジナリティー溢れる作品です。 それでありながら、韓国で作られた映画としての必然性をしっかりと持ち、韓国映画らしいななどと軽く口にできないくらい韓国映画の持つ良さを凝縮したような、凄み、重みも持った映画でもありました。 一言でいうと、ショックです。 グエムルは日本の怪獣映画に出てくる怪獣のように、大きくもなければカッコよくもありません。どちらかというと、害虫にいだくような不快感を覚える「異形の化け物」。ちょうど人間が手をもてあますくらい大きさからくるんでしょうね、身近に潜んでいる動物の感じが体感的に伝わってきてとてもリアルです。そのせいか、怪獣映画というより、パニック・ホラーと言っていいかもしれません。 ただ、パニック・ホラーっていうのは、一回ぽっきりの娯楽映画に終わってしまうのがほとんどです。でも、この映画は記憶に残るというか、後をひくところがあります。それは何故か。 これは、前評判と重なってしまって、こういう表現を避けたかったんですけれども、この映画は“怪獣映画”ではないんです。漢江の岸辺で、そこに行楽にやってくる人たちに食べ物や飲み物を売っている“売店”。それを営む、ちょっとだらしない家族の話なんです。 ここまでくると、当然、キャストの話になります。でも、個々のキャストの話は後回しにして、この“家族”の話です。この家族のキャスティングですが、このキャスティング以外考えられないというくらい、個々がどうこうという話以上に、この家族のキャスティングなんですね。このキャスティング構成でまったく別の種類の映画を何本でも撮れるというくらい“本物”です。これが、この映画の最大の魅力。 ソン・ガンホのカンドゥは、確かに彼の役名としても末永く残りそうな、名優ソン・ガンホをしてもこれに勝る名演はない。そう断言できるほどのずば抜けた素晴らしさがありましたけど、それ以前に、この家族が俳優だれそれを忘れさせるくらい、生身の“家族”として、生身の“人間”としてそこにいて、彼らが目の前の信じ得ないような現実に直面して、必死になっている姿に心が突き動かされます。 これ、これから観る方に言っておきたいんですけど、観ている最中はドーン、ドーンというショッキングなシーンに衝撃を受けると思うんですけど、観終わった後(=今の私)、余韻なんていうもんじゃなくて、突然わっと泣き出したくなるような心の揺れを持ち帰ってしまう…そんな感じの作用がこの映画にはあるような気がします。 映画自体のとっつきですけど、ストーリー・展開そのものには難しいところはほとんどありません。だれでもみられる娯楽作品に仕上がっています。でも、視点を少し俯瞰させると、かなり辛らつな皮肉が効いていたり、とてもユニークな(笑える?)布石が敷かれていたりで、さすがポン・ジュノ監督というところも随所にみられます。この映画のバックグラウンドには、さまざなのものが描き出されているんですけど、そんなの放ったらかしにしても十分みられるというこの映画の造りが、1200万人を突破した監督のうまさだと思います。 この映画と「JSA」は、韓国映画ならではの名作として、また娯楽性を持ち合わせた映画としても、観ないと損をする類の映画なのではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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