カテゴリ:書籍
「困っているひと」 大野更紗著 ポプラ社
すごい本だ。 難病を患った若き女性の闘病記。 一気に読み通してしまったのは、闘病記という範疇には留まらないこの本の力。 未読の人は是非。絶対お勧めです。というかみんなが読むべきです。 著者は福島県いわき出身。ご当地作家なのでこの本の存在は知っていた。注目されているのも知ってた。しかし、購入には至らなかった。ところが、作家高野秀行のホームページを観ていたら、高野がこの本の発刊を後押ししたことがわかった。つながりが見えない2人だが、高野は好きな作家だ。これも縁かと本屋へ。 いざ、読み始めると止まらなかった。彼女は(著者はというより彼女と書きたい)上智大学外国語学部フランス語学科に進学し、在学中からビルマの難民と関わりを持ちNGOでも活動し、民主化運動や人権問題の研究を進める。エネルギッシュな人だ。辺境作家といわれる高野秀行の関わりもようやくうなずけた。 その彼女が自己免疫疾患の難病にかかってしまう。生きているのがつらいというほどの病状だ。相当珍しい病気らしく、病名が判明するまでも大変な道のり、もちろん確立された治療法もない。読んでいるだけでも目を背けたくなるような痛々しい叙述も多々ある。その闘病の様子を、軽いタッチでユーモアさえ交え書いている。 人間は、社会的な生き物だと改めて思わされる。ただ生きているだけでは生きてはいけないと。筆舌に耐え難い闘病をしながらも彼女は人間的に成長し前を向いて歩き出す。つまり、社会的に生きていこうと歩み出す。その姿勢には感動的だ。泣ける。 福島に避難を良しとしない人がたくさんいるのは、社会的生活への不安が、被曝による身体への悪影響の不安を凌駕してしまうからだ。人は時には、命を縮めてでも社会的に生きることを選ぶ。 しかし、彼女に行動するエネルギーを与えたキッカケは入院生活の中に芽生えた恋愛感情だったりする。人は社会的であると同時にやっぱり動物的なんだ。単純に死ぬのは怖い。だから福島の人は悩んでいるともいえる。この恋人との出会いの一連の挿話は、泣けて泣けて仕方がなかった。 生きるのだ。人は生きるのだ。 元気な人もそうじゃない人も、この本は、読むべきだとそう強く思う。読後は、生きるという行為がそれまでとはちょっと変わるのではないだろうか。 この本は、人間であるということの、生きるということの本質を教えてくれているのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[書籍] カテゴリの最新記事
|
|